特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

日米地位協定と映画『千年の愉楽』

昨日はとりあえず都議会選挙に行ってきた。ボクの選挙区には今まで敢然と石原と戦ってきた、もちろんオリンピック招致も原発も絶対反対の無所属の候補がいるので、いつも通り彼に投票した(残念 落選)。
投票所の出口で東京新聞出口調査があったので『安倍も猪瀬も不支持、無所属に投票!』とキレ気味に回答した(笑)。今回の選挙で議席を増やしたのは主に自民、公明、共産だが、どれも得票が増えたのではなく、得票が減らなかったから、だという。要するに組織票が強い政党が議席を増やしただけ、なのだ。投票率は前回より10ポイント以上も下がった。行きたくない気持ちはわからないでもないが、選挙に行かないようなアホは罰金でも取ればいいのだ!棄権するような低能は北朝鮮でもミャンマーでも行け!


はあ、はあ(笑)。落ち着いた〜

この週末は、この本、『日米地位協定入門』を読んでみた。著者は前琉球新報論説委員長、現沖縄国際大学大学院教授の前泊博盛という人。

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (戦後再発見」双書2)

本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」 (戦後再発見」双書2)

素人のボクはまず、問題を一から解説してほしいとおもっているので、少し感情が先走っているように思えたこの本は論理性という点ではいまいちだった。それでも沖縄のマスコミは本土のマスコミより遥かに深く考えていることは良くわかる。知らないことが一杯あった。たとえば、本土でも50年代は米軍はやりたい放題だったこと(58年に西武線に向けて米兵が発砲して音大生が死亡した!)88年には何と伊方原発の裏山に米軍ヘリが墜落して文字通り危機一髪!だったこと04年の沖縄国際大学のヘリ墜落時にストロンチウム90が市街地に飛び散ったこと。なによりも米軍の問題にしろ、原発にしろ、憲法をはじめとした日本の法体系の上に官僚、政治家の恣意的な権力がある構造に支えられていることが良くわかった。日本は法治国家でも民主主義国家でもない、ってことだ。
韓国やドイツはアメリカとの地位協定改定に成功したし、フィリピンは奇しくも日本と同じ、アーミテージ相手に米軍基地を撤去させた。やればできるんだよ。
この本は日本が依然アメリカの占領地、属国状態にあること、基地問題原発も同じ構造であることを指摘する。それには異論がないが、そこから脱却するためにはボクはむしろ、日本はアメリカの51番目の州になるほうが早道ではないかと改めて思った。この本で述べられている多くのことはアメリカの情報公開制度やウィキリークスであらわになった情報に基づいている(それでもこの本に取り上げられている琉球新報地位協定マニュアルのスクープは感動した)。正直ボクは、日本人が本気で独立国家としてやっていきたいと思っているのかどうか、疑問なのだ。自分で問題を知ろうとし、自分で問題を考えることをやろうと思っているのか、自主独立を考える人も数多くいるのはわかっているけれど、大多数の人はどうなんだろうか?素朴な疑問が心の底からぬぐえないでいる。
そんなことを考えるのはボクが、国民国家なんてものはある種の共同幻想、オワコン(笑)でしかない、と思っているからでもあるけれど。
 
                                                                                                                                                            
                                    
新宿で若松孝二の遺作『千年の愉楽
和歌山県新宮の『路地』に生まれ育ったある血族の男たちの生死を、彼らを拾い上げた産婆(寺島しのぶ)の目から語ったもの。べネツィア映画祭招待作品、原作は中上健次(ボクは未読)。

事前にはおどろおどろしたものを想像していたが、案外エンターテイメントに徹した作品と言う印象を受けた。
男たちにイケメンの若手俳優3人(高良健吾高岡蒼佑染谷将太)を起用し、陰惨なシーンは極力 映さないことで、誰にでも見やすい作品なのだ。単純に若手俳優のファンの女性が見ても、すごく楽しめるのではないか。『路地』に関する描写は少ないし、おどろおどろしたところが少なくて物足りないという見方もあるかもしれないが、ボクはこれで良いのだと思う。寺島しのぶと並んでも、若手俳優の演技がまあまあ見られたのは、定評がある若松監督の俳優に対する演出の成果だろう。特に高良健吾は美形の無頼役はぴったりだった。良くも悪くも美形の若手俳優の線の細さが、儚さ、脆さをよく表現していたと思う。

●男前の男優の面々(笑):高良健吾高岡蒼佑染谷将太


ただ過去の話なのに家々のアルミサッシやテレビアンテナが写ってしまうところが何度かあって、そこは気になってしまった。三島由紀夫を取り上げた前作純粋と幼稚:映画『11・25自決の日 三島由紀夫と若者たち』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)でも、ところどころで近代的なビルの影が映っていて興ざめしたが、低予算映画とは言え、こういうところは若松監督はどうでも良いとおもっているのかなあ。
もう一つ良かったのが音楽。全編にわたって流れている三味線の流れが重くなりがちな話を軽やかにしている。これは非常に効果的だったと思う。また『天皇万歳と叫んだら警官に叱られた』という歌詞の、エンドロールで流れた歌(解放運動で唄われた歌?)も新鮮で大変良かった。昔の日本の軟弱・インチキ・フォークとは違った、本当の意味でのフォーク・ソングが日本にもあったんだと感心した。

                                                                                         
                                   
エンターテイメントと事実の直視、バランスがうまい具合に取れた作品で、多くの人に受けいれられる作品だと思う。傑作ではないけど肩は凝らないし、見て損はない。何よりも雨が多い和歌山の先端部、新宮市や熊野市の雨の匂いが漂ってくるようだ、。社会派の重苦しい作品ばかりとっていたイギリスのケン・ローチ監督が最近 コメディを撮り始めた(『エンジェル・シェア』や『エリックを探して』)にも似て、こういうのも若松監督の成熟の一つのかたちだろうか。次は原発映画だと言っていた若松監督が昨年 自動車事故で亡くなってしまったのは残念でならない。