特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『教育と愛国』

 また、1週間が始まってしまいました。楽しい週末が過ぎるのはあっという間です。
これ、面白い法律だなーと思いました。

 凄く良い法律だと思う。ローカルのコンテンツを取り入れることになってネットフリックスのためにもなるでしょう。ネットフリックスだけでなく、アマゾンでもマイクロソフトでもフェイスブックでも、進出先の国に投資することを義務付けるような法制度を作っても良いのではないでしょうか。
 国内産業の衰退やタックス・ヘイブンなどグローバリゼーションの弊害は企業だけが悪いのではなく、既存の法制度の不備も問題なのですから。


 沖縄復帰50年だそうですね。もう何年も現地には行ってないので最近の沖縄のことは良く判りませんが、現状はこれ↓に尽きる、のではないでしょうか。

 占領後も米軍基地の大部分を押し付けられた現状は、週末のTBS報道特集が『沖縄は本土の植民地』であると同時に『アメリカの軍事植民地』と表現していたのはまさに的確でしょう。


 
 単に迷惑施設である米軍基地を本土から離れた沖縄に押し付けているというだけでなく、憲法9条と安保という戦後体制の矛盾が沖縄に集中しているわけです。安保があるから米軍基地があり、同時に憲法9条があるから安保を結ばざるを得ない。更に9条があるから日米地位協定も改定することができない。

 フィンランドスウェーデンが示している通り、今の世の中 安保を止めて自国だけで安全保障が成り立つとは思いません。

 また、憲法9条を変えても日米地位協定を改定できるわけじゃありませんが、琉球大の山本准教授が石橋湛山賞を取った著書『日米地位協定』で言っているように、有事の際アメリカと一緒に戦う姿勢を持つこと(集団的自衛権)と日本の野蛮な司法制度の近代化は、地位協定を改定するために米議会を説得する最低条件でしょう。これは良い悪いじゃなくて、現実的な話です。

www.u-ryukyu.ac.jp

 天皇制など戦前の残滓を残しつつ民主主義国家になった戦後は最初から矛盾をはらんだ存在でした。三島由紀夫のような右派も政党や市民運動等のリベラルも矛盾に向き合ってこなかった。どちらも反米ということだけで思考停止してきた。ベトナム戦争をやってるような時代はそれでよかったかもしれないが、環境が変わったらブラッシュアップするのは当然でしょう。
 もちろん安倍晋三のようなバカウヨが妄想する『従米+戦前回帰』(笑)も答えではありません。いずれにしても簡単に解決するような解決策はない。
 まず日本人が今の現実を直視すること、そして議論をすること、それが沖縄の基地問題を改善する第一歩だと思います。


 と、いうことで、吉祥寺で『教育と愛国

www.mbs.jp

第1次安倍政権下の2006年、教育基本法が改正される。それ以降 教科書検定の強化や大手教科書出版社の倒産などが起きる。また太平洋戦争における従軍慰安婦沖縄戦の記述のある教科書を採択した学校への抗議が増え、歴史教育に携わる関係者への抗議や中傷など、教育と政治の問題をインタビューでつづったドキュメンタリー

 
 大阪毎日放送で17年に放送され、ギャラクシー賞テレビ部門大賞を受賞した「映像’17 教育と愛国~教科書でいま何が起きているのか」に追加取材した映像を加え、再構成したドキュメンタリー。

www.youtube.com

 監督を務めるのは毎日放送でドキュメンタリー番組に携わってきた斉加尚代。語りは俳優の井浦新。公開されたら是非見たいと思っていたドキュメンタリーです。

 斉加監督は『2012年5月、当時、風雲児として人気絶頂の橋下徹大阪市長の「君が代斉唱問題」の囲み記者会見で、市長に質問を繰り返し、市長から「勉強不足!」「ふざけた取材すんなよ!」と30分近く延々 面罵された人だそうです。その時 周囲の記者は誰も止めなかった。大阪のマスコミの維新への迎合は当時からでした。

news.yahoo.co.jp

 昨日は朝刊に千葉工大のこんな全面広告(クリックすると広告が全て見られます)が載っていました。教師の過剰労働が問題になっていますが、教育の分野もきな臭くなってきている。


 映画は18年に正式教科にされた道徳の教科書に載っている問題から始まります。朝 挨拶をするとき『おはようございますというのとお辞儀をするのとどっちが先か』というのです。目を疑いました。そんなくだらないことに正答があるのでしょうか?(笑)

 さらに道徳の教科書に出てくる『パン屋』が文科省の検定意見で『和菓子屋』に変えられたという事件が紹介されます。『伝統と文化の尊重、国と郷土を愛する態度に照らして不適切』とされたそうです。ニュースでも広く報じられてたと思いますが、文科省の担当者は正気なのでしょうか。

 映画の冒頭の時点で『この国の教育はもうダメだ』とボクは思いました(笑)。アホすぎるでしょう。

 近年の教科書への圧力が紹介されます。シェアが断トツだった大手教科書会社、日本書籍の歴史教科書に従軍慰安婦の記述があったことで右翼団体の抗議が相次ぎ、自治体の採用が激減、倒産したそうです。日本書籍の教科書はボクも子供の時使っていましたが、そんなことになってるとは知らなかった。
●その教科書を執筆した一橋大の吉田教授

 安倍晋三をはじめとした日本会議のウヨ連中は教育への介入に熱心です。第一次安倍政権で教育基本法を変えたのが典型で、やたらと教育に手を突っ込みたがります。
安倍晋三や維新の連中は育鵬社のウヨ教科書を広めるためにセールスマンのように活動しています。

  
 ただ、ボク自身は教科書自体はあまり気にならなかった。普通 子供は教科書なんか真に受けないだろう、と思うからです。ボク自身は小学校から高校まで、教科書なんか全く気にしたことがありません。興味があることは教科書なんか相手にしないで自分で本を読むし、興味ないことは教科書に書いてあろうがなかろうが全然頭に入らない(笑)。
 だから教科書への圧力ってあまり問題意識になかったんです。 

 映画でも触れられていますが、元々日本の教育は歯車として働く国民を大量生産することが目的でした。教科書に拘っていること自体、上位下達の体質の表れに見えます。その点はウヨもリベラルもあまり変わらないように見える。

 子供に考えさせることを主眼にしたリベラルな歴史教科書を採用したら、採用した学校に自民の国会議員が圧力をかけてきたり、学校に大量に匿名の抗議の手紙が送られてきた事件も取り上げられます。全て同じ文面です。数少ない記名の抗議には森友学園の籠池や山口県防府市長(教育再生首長会議の会長)がいました。インタビューに答えた籠池が、日本会議から指示がでたことを証言します。

 映画では高校の名前は出ませんでしたが、この教科書を採用したのは灘高や慶應高校などです。教科書は所詮教科書に過ぎませんが、そういうものを採用する学校とそうでない学校とでは生徒の質がますます開いていくだろう、とは思いました。
 全体では日本の教育はますます劣化していく。

 他にも自民党のバカウヨ議員、杉田水脈従軍慰安婦を取り上げた阪大の教授の研究に文科省補助金が使われたことにイチャモンをつけたり、

●阪大の牟田教授は杉田水脈を名誉棄損で告訴、裁判中

 従軍慰安婦の存在を授業で取り上げた高校教師にバカウヨやそれに乗せられた市民から抗議が殺到、市教委から戒告を受けた事件なども取り上げられる。
●授業内容ではなく、新聞社の取材を受けたことに対して戒告を受けたそうです。


 ドキュメンタリーとしては驚くような感じではありません。『主戦場』のように相手の本音を引き出すようなところは少ない。しかし、近年 政治家やバカウヨからの日本の教育への圧力はますます酷くなっているのはよく判ります。

 以前は『反日』なんて言葉を使うのは街宣右翼だけで、まともな人は使わなかった。しかし近年はマスコミなどですら使われるようになってきている。そういう雰囲気が出来てきてしまったのは、日本会議のゴミウヨ連中が粘り強く教育にターゲットを絞ってきた影響かもしれません。連中はバカなりに賢かったのかも。日本としては衰退の道まっしぐらの自滅行為なのですが(笑)。
●作る会のウヨ教科書(育鵬社)の主任執筆者、東大名誉教授の伊藤(取材当時89歳)。加藤陽子先生の指導教授ですが『歴史に学ぶことはない』、『育鵬社の教科書の目的は、左翼ではない「ちゃんとした日本人」を作ること』と断言していました(笑)。

 と、同時に学校や教育委員会は事なかれ主義、一般の国民もバカウヨの発言に乗せられたり、無関心だったりで、学問や言論の自由を大切にしようという雰囲気は薄い。
 例の学術会議の任命拒否の件も政府から拒否された早稲田の岡田教授の元に抗議が殺到、ゼミのTwitterが使えなくなったそうです。バカウヨもしくはDAPPIのように政府の金で広告会社がやっているのかもしれませんが国民のレベル低下も酷い。

 現在は『従軍慰安婦』、『強制連行』という言葉は教科書には使えないそうです。『慰安婦』、『徴用』と言い換えなくてはいけない。沖縄の集団自決を取り上げるのにも圧力がかかる。アホかと思いますが、そのような教科書への圧力から学術会議の問題までが一本の糸でつながっていることは映画を見て再認識できました


 終わってから斉加監督と澤田プロデューサーの挨拶がありました。
●斉加監督(右)と澤田プロデューサー

 監督は、’’プーチンがこの10年、愛国教育をやってきて、その結果が今のウクライナ侵攻にもつながっている’’と話していました。確かに、その通りですね。
 澤田プロデューサーは’’最近の民放、特にゴールデンタイムは酷い。自分はNHKとBSしか見ない’’と言ってた。ボクもそうです。会場には映画に感謝のクレジットが出ていた『なぜ君は総理大臣になれないのか』の大島新監督も来ていました。
 監督は『教育の現場は酷くなっているが、まだ希望はある』と仰っていました。こういう映画が作られること自体は希望だと思いますが、僕自身は非常に心もとなく思ったのが率直な感想です。問題は日本人の民度なのかなって。
 それでも、ボク自身は全く黙る気はありませんけどね。


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