特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『ビロード革命とバラモン左翼』と『バッサーノ村の白アスパラ』

 今週は穏やかな陽気で助かりました。梅雨前の束の間の穏やかさ、でしょうか。

 先週、今週と放送されたNHKの番組『映像の世紀 バタフライエフェクトヴェルヴェットの奇跡 革命家とロックシンガー」』は面白かったです。


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 1968年チェコの劇作家ハヴェルは自分の作品を上演するために訪れたNYで、デビューしたばかりのロックバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドを知り、熱心なファンになります。
 アンディ・ウォホールがプロデュースし、麻薬や同性愛を公然と歌うヴェルヴェット・アンダーグラウンドに、ハヴェルは自由を感じたそうです。ハヴェルはチェコへレコードを持ち帰り、その影響を受けた''The Plastic People of The Universe''(PPU)といったバンドも生まれます。
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビュー作。アンディ・ウォホールが描いたこのジャケット、発表された当時のLPレコードではバナナの皮が剥けるようになっていました(笑)。

 同年 ソ連軍が軍事侵攻し民主化を求めたチェコの人々を弾圧するという事件が起こります。プラハの春です。良く考えたら周辺国への軍事侵攻はロシア(ソ連)のお家芸だった(笑)。自由を求める人々を文字通り戦車で踏みつぶし、チェコでは共産党の強圧的な政権が続きます。

 76年 チェコ共産党政府はPPUを弾圧、メンバーを逮捕します。それを切っ掛けにハヴェルら知識人たちは、自由を求める宣言『憲章77』を発表、抗議を始めます。それでも共産党政権は弾圧を続けましたが、国民の間に広まった抵抗の動きはもう、消えなかった。

 89年、チェコにもビロード革命と呼ばれる無血革命が起こり共産党政権が倒れます。その際 初代大統領に選ばれたのが長年 不屈の抵抗を続けたハヴェルでした。
 番組の中でハヴェルは『ビロード革命(ヴェルヴェット・レヴォリューション)はヴェルベット・アンダーグラウンドからもたらされた』と言っていました。
 『憲章77』は中東の民主化運動でも参考にされているそうです。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドが蒔いた自由の種は世界に広がっている。

 大統領になったハヴェルはホワイトハウスに招かれた際、ヴェルヴェットアンダーグラウンドのヴォーカル、ルー・リードを招いて演奏を頼みます。その後 ハヴェルとルー・リードは約10年前 70過ぎで亡くなるまで生涯、交流を続けたそうです。
 
ルー・リードの名曲''ワイルド・サイドを歩け’’。カッコいい!

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 学生時代 ボクもバンドでヴェルヴェット・アンダーグラウンドのコピーをやってました。退廃的な雰囲気がカッコいいだけでなく、曲の構造が単純で下手でも様になるからです(笑)。でも、こんな話は全く知りませんでした。

 チェコとNYのアングラバンド、言葉が通じなくても、何十年かかっても、人々が自由を求めるのは止められなかった。人間にとって自由を求めるのは普遍的なことのように思えます。今の日本を見ていると、あまりそんな感じはしないんですけど(笑)、どうなんでしょうか。

 


 一方 ひでえーと思ったのがこれです。『憂慮する日本の歴史の会』と称するリベラルな立場の学者が出した声明です。内容は『ブチャの虐殺が露見して以来、西側はウクライナへの支援を強めているが、そんなことはやめて、双方に即時停戦することを呼びかけろ』(笑)というものです。つまりロシアの侵略やブチャの虐殺は置いておいて、まず停戦しろ、と。

 この前 TBS報道特集で『戦争が起きたのはNATOが拡大したから』というデマを垂れ流していた羽場久美子、安保法反対運動に加わっていた西谷修内田樹や和田春樹、上野千鶴子など重鎮の学者が署名しています。お花畑という言葉はあまり使いたくないけれど、あまりにも酷いので、さすがに若手研究者たちから反発がでているそうです。
mainichi.jp

 ハヴェルたちの『憲章77』と異なり、この宣言は根本から間違っています(笑)。

 まず、『停戦しろ』と言うべきなのは双方ではなく、ロシアに対して、です。ウクライナに問題がないとは言いませんが、ウクライナは侵略を受けた側です。
 他国へ攻め込んで民間人を虐殺したり、病院や学校・幼稚園を攻撃したり、国際法違反のテルミット弾やクラスター爆弾を使ったり、核で周辺各国を脅しているのはどこの国でしょうか。即時停戦してロシアが占領地を返すとでもいうのでしょうか。即時停戦できたとしてロシアがまたブチャのように民間人を殺したり、性犯罪や虐待をしないという根拠があるのでしょうか。

 次に、双方に即時停戦することをどうやって納得させるのでしょうか(笑)。和田春樹などバカ学者連中はロシアの言い分を聞け、と言っているようですが、ウクライナの言い分はどうするの(笑)。土地や家族を拉致されたウクライナの人をどう説得するのでしょうか。他人を舐めるにもほどがある。
 この2,3日TVでマリウポリで投降した兵士たちの顔を映したフィルムが流れていましたけど、捕虜の顔を映すこと自体国際法違反です。原発への攻撃もそうですが、ロシアは国際法なんか全く守っていない。そんな相手に言葉による説得が通じると思っているのでしょうか?

 また、今停戦できたとしても、次にロシアはモルドバで何かやらかすに決まっています。今だって事件を起こしています。モルドバの次はバルト3国かポーランドか。クリミア以来プーチンは武力による勢力拡大を続けている。それをどうやって止めるのでしょうか。

 認知症学者どもの言い分は、日中戦争で『日本と中国双方に停戦しろ』と主張するようなものです。当時の日本が占領した土地をそのままにしろというのか。南京大虐殺731部隊の人体実験などの戦争犯罪はなかったことにしろとでも言うのでしょうか?(笑)。

 こんな幼稚な話は20年以上前に終わった、と思ってました。かってNATOコソボ空爆に、かってヴェトナム戦争に強固に反対したことで有名な評論家、スーザン・ソンタグが賛成しました。議論が沸き起こりましたが、結局 性犯罪も含めた虐殺を止めるには軍事的な方策しか手段はありませんでした。説得が通じない相手には武力を使うしか手がない。

 トマ・ピケティは、自分たちの旧来のイデオロギーに凝り固まって、労働者層など社会の現実を無視する高学歴の左翼をバラモン左翼』と名付けました。本を読んだときはピンと来なかったけど、西谷修とか内田樹とか和田春樹みたいな老害連中こそがまさにバラモン左翼です。安全地帯から空理空論を並べるだけで、現実への対処能力を全く欠いている。

 ドイツの緑の党ウクライナへ重火器を積極支援することを主張して、先日の地方選で議席を伸ばしました。フィンランドスウェーデンの与党、社会民主党は中立政策を放棄して集団的自衛権へ舵を切った。同じリベラルでも政権を担当して現実に対処しなければならない政党は、日本の憲法9条ボケバラモン左翼とは全く違う(笑)。

 今はまず、各国がウクライナに援助したり制裁を加えてプーチンの侵略を失敗させ、武力による侵略は失敗する、という実績を作ることです。それが今後の平和を守ることに繋がります。武力だけでは安全を守れない日本にとっては猶更です。
 少し前 西谷修が『世界』の5月号に書いた論文がロシアの言い分ばかりで酷い、と一部で話題になっていました。全く影響力が有りませんから(笑)、目を通す気もありませんでしたが、こう言う話だったのか(笑)。

 ただでさえ、この国はこういう恐ろしいこと↓を言い出します。憲法9条があっても安保条約と言う日本政府を縛る実質的な歯止めがなくなったら、日本はいつ戦争を始めるかわからない。

 平和ボケのくせに直ぐカッとなる日本人に外交や安全保障の面での判断能力はない、と思います。安保があるとアメリカの戦争に巻き込まれる、というのはリベラル派の常套句ですが、安保がなければアホな日本政府や国民が勝手に暴発する可能性も大きい(笑)。下手に『普通の国』を目指すより、アメリカの属国の方がマシってなもんです(笑)。

 リベラルと言われるインテリ層だって、このざまです。重鎮と言われるような学者でさえ、こんなボケたことを言っているから国民の間に反知性主義が広まる。所謂 知的権威である学者の言うことに全然説得力がないからです。
 バラモン左翼はフランスだけかと思っていたら、日本には掃いて捨てるほどいた(笑)。フランス同様、日本のリベラル政党が衰退するわけです。
 右左を問わず、時代遅れの化石のような老害はさっさと退場してもらいたいものです。70過ぎても現役のロックンローラーだったルー・リードはえらい違いです。
 


 また、近所のイタリアンへ行ってきました。盛り場はあまり好きではないし、なんと言っても徒歩圏の店は気楽でいいです。お腹いっぱいになっても直ぐ家でゴロゴロできるし(笑)。

 この日 最初に出てきたのはクエ、半生です。葉玉ねぎと組み合わせて、上には削った黒トリュフがかけてあります。やっぱりクエは美味しい。昔は和歌山や九州など現地へ行かないと食べられなかった憧れの魚です。この数年、東京でも食べられるようになったのは嬉しい。コロナのおかげ?

 白アスパラとハマグリ。上に木の芽が載ってます。白アスパラは名産地で知られる北イタリアのバッサーノ村のもの。コロナで飛行機が飛ばず、この2年くらい食べることが出来ませんでした。太くて立派なのもさることながら、土の風味があるんです。好き💛。

 この日 一番おいしかったかもしれない、子持ちヤリイカイカ墨のパスタ。パスタにしみ込んだイカの味がサイコーです。

 これは季節の桜エビと手打ちパスタ。桜エビは乱獲による資源減に加えて、賃金が安すぎて漁師が集まらず漁獲が激減しています。桜エビ漁は権益を持つ漁船の持ち主が漁師を集めて収穫するという特殊な形態だからですが、『このままでは良い桜エビが料理に使えなくなるのではないか』と多くのシェフたちが言っています。

 良くTPP反対論者が’’農業や漁業を守れ’’と悲憤慷慨していますけど(笑)、それ以前にまず、農業や漁業の産業形態を近代化しなけりゃダメに決まってます。食料自給とか言うのなら、まず独占企業の農協をなんとかしろって。既に農家の平均年齢は60代後半です。食料自給ならまず、企業の参入自由化にきまってるじゃん。
 現代の奴隷制度、技能実習生がいなければ成り立たない非人道的な産業なんて、さっさと滅びた方がいい。それで弱い者面をするんだから、独占企業よりタチ悪い。

 メインは和牛(イチボ)のサラダ仕立て。焼いた筍って美味しいですよねー。ただモモ肉だから大丈夫と思ったのですが、脂がのり過ぎていて×。この店は変な霜降りは出さないと思って油断しました。今度一言言っておこう。

 最後は山羊のフロマージュ・ブラン。春は山羊のチーズ、美味しいですからね。

 と、いうことで、相変わらず日頃の憂さは食べ物で晴らしています。我ながら動物、犬みたいなものです(笑)。