特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

偉人とクマちゃんに学ぶ(笑):『信念に生きる』、『イノベーション・オブ・ライフ』と映画『TED』

この3連休は映画を2本見て、本を2冊読むことができた。仕事以外だと忙しいんだよなあ(笑)。本のほうは『信念に生きる ネルソン・マンデラの行動哲学 』、『イノベーション・オブ・ライフ』。

前者はネルソン・マンデラの自伝を編纂したタイム誌の編集長がマンデラの決断や行動から彼の行動哲学を書いたもの。後者はイノベーションに関する理論で有名なハーバード・ビジネススクールの看板教授クリステンセンが経営理論をもとに人生の諸問題について語ったもの。
どちらもある意味共通していることを書いていた。それは『目的の重要さ』、『寛容さ』だ。

信念に生きる――ネルソン・マンデラの行動哲学

信念に生きる――ネルソン・マンデラの行動哲学

マンデラ氏は現存する人物の中では掛け値なしの『偉人』だろう。南アフリカで人種差別に反対し続け、30年近く投獄されても志を変えず、人種差別からの解放と社会の和解をもたらした南アの元大統領。
ということは知ってたけど(笑)、本を読んでみるとあらためて凄い人だ。特に凄いのは文字通り極悪非道の南ア政府に対して武装闘争路線を始めたマンデラ本人が、組織を平和路線に転換させただけでなく、白人との平和的和解へ動いたこと。
黒人側も白人側も強硬派が人種的な内戦を始めようとしていた状況で、よくそれだけのことが決断できたなあと。一歩間違えれば味方から自分が殺されるような話だ。昨日まで暴力を振るっていた相手を許し、人種間融和を推進したのは、彼にとっては『一人一票の民主主義』という大目的を達成するための現実的な判断に基づいたものだという。環境が違えば、彼は武装闘争を選択したはずだ。そのリアリズムには恐れ入る。こうやって書くのは簡単だが、こんな判断は普通は出来ない(笑)。元来マンデラ氏もそういう柔軟な人物ではなかったが、27年の刑務所生活で思索を深めたことで柔軟さ、寛容さが培われたという。映画『インビクタス』でマンデラ氏が自分が大嫌いなラグビーを国民融和の象徴にしようとしたエピソードが描かれていたが、元来はマンデラ氏が投獄されていた頃、頑迷な白人の看守と対話をするために勉強したものだそうだ。あと、大統領就任後に見るこの人がいつもお洒落なのか不思議だったのだが(イタリア製のトレンディな、肩パッドなしの高級スーツだった)、その理由も現実的なものだったということが良くわかった(笑)。
レベルが違いすぎて真似できるような人ではないけど、示唆に富む話が数々描かれていて、もっと、この人のことを知りたいと思った。ほんと、凄い。

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

イノベーション・オブ・ライフ ハーバード・ビジネススクールを巣立つ君たちへ

                   
クリステンセン教授のほうは冒頭で自分の教え子だったというエンロンの経営者のことに触れている。エンロンはブッシュと癒着して悪事を尽くしたアメリカの東電です。ボクはビジネス書はあまり好きではないのだけど、(自殺したり牢屋に居る)エンロンの連中みたいにならないためにこの本を書いた、ということで引きこまれてしまった(笑)。最終章の表題なんか『罪人にならない』だもん(笑)。
企業の実例と子育てや結婚など人生の問題を経営理論によって解説しているのは、とてもユニークで面白い。勿論 理論の抽象度は高くて、よくある下品なハウツーものとは対極の本になっている。結局 自分の人生の目的、人生をどう評価するかの尺度を時間をかけて自分なりに考えることが、最も重要であると言う。そこさえハッキリしていればあとは行き当たりばったりでもいいとも(笑)。敬虔なモルモン教徒であるクリステンセン教授は数年に渡って、必ず毎晩1時間、自分の真実について神と対話して、自分の人生を考える尺度を得たとのこと。
この本は近年 心臓発作、ガン、脳梗塞に連続して見舞われたクリステンセン教授が、これだけは伝えたいと言うことで書いたものだそうだ。

どちらの本も原発、政治、自分の生き方、いろんなことに当てはまるような話で、なかなか面白かった。ぐうたら、いい加減な自分の生き方を少し反省しました(笑)。


                            
これらの本と、ある意味 対照的なのが、この前見たR15指定(笑)の映画『ted』 。


舞台は1985年のボストン。いじめられっ子にも相手にされない孤独な8歳の少年、ジョンはクリスマスプレゼントのテディ・ベアが自分の友達になってくれたらいいのに、と祈りをささげる。彼の祈りは通じて、テディ・ベアは言葉を喋り、彼の友達となる。それから27年 一時はマスコミにもてはやされたテッドは、下ネタとマリファナ大好きのエロ中年テディ・ベアになっていた。そんな中 相変わらずテディと一緒のジョン(マーク・ウォールバーグ)は4年間付き合っている彼女(ミラ・クニス)からテディと別れて、大人になるよう迫られる。

●これじゃあ、そう言われる

日本ではアメリカのコメディものは当たらないそうだが、TEDはなんと興収第1位だそうだ。祝。これを機会にボクの大好きなアメリカのおばかコメディがもっと日本で公開されるようになって欲しい。平日昼間の渋谷の映画館は満員。高校生ばっかりだ。ヌイグルミのくまちゃんは可愛いけど、そういう映画じゃないんだよ(笑)。カップルで見に来て大丈夫?とおじさんは余計な心配をしてしまう(笑)。

●ただのクマちゃん映画じゃありません(笑)

案の定、冒頭のナレーション『ジョンは孤独な少年だった。近所の子供たちがユダヤ人の子供をボコボコにするのも仲間に加えてもらえなかった』で場内はシーンと静まり返る(笑)。 上映後一分で引いちゃうのは早いんじゃない?
でも、この時点で、『ああ、いい映画だなあ』と思った(笑)。こういう辛らつなギャグって大好き(はーと)。
前半はジョンとテッド、ダメ中年のダメ生活のオンパレード。スターウォーズに、フラッシュゴードン、80年代のDVDを見ながら昼間からマリファナ、ビールをかっ食らう毎日。 特に80年代のネタが細かい。テッドを誘拐する中年男の大好きなのがティファニー(80年台に流行ったティーンエージャーのアイドル歌手)なんて、誰もわかんないよ!
こういうマニアックなシーンでゲタゲタ笑いながら、高校生には高級すぎるな(笑)、とマヌケな優越感に浸ってたんだけど、それは文字通りボクも中年オヤジってことなんだよなあ(泣)。
●ダメ中年二人組

傑作『俺たちアザーガイ』のマーク・ウォールバーグ、相変わらずいい、です。顔だけ見ると真面目腐っている彼が真面目に縫いぐるみのクマちゃんと殴り合いのケンカをするところなんか、この映画の白眉だろう。要するに一人で縫いぐるみ相手にじゃれているだけなんだけど(笑)。
一つだけ違和感があったのは、マーク・ウォールバーグの彼女役がミラ・クニスブラック・スワン)ってこと。超美人で仕事も出来るキャリアOLがダメ中年の彼女っていうのはいくらなんでも無理じゃないの?と思ったんだけど、彼女はこの映画の監督の友達らしい。
●綺麗すぎる彼女(笑)
                                
主題歌も歌っているノラ・ジョーンズも本人役で出演。セレブ時代のクマちゃんとベリンダ・カーライル(Gogo's)のパーティで付き合ったという死ぬほどバカな設定(笑)だけど、大スターの彼女がよくこんな役で出演OKしたと思う。偉い!それが驚くほど可愛かった。ゴキブリみたいな顔をした親父(シタール奏者のラヴィ・シャンカール)の娘とは思えない。改めて好きになりました(笑)。
●めちゃくちゃ可愛い、才色兼備のノラ・ジョーンズ

                                                              
主人公たちの人生の真実は『オレたちは大人にならんぞ!』。是非 敬虔なクリステンセン教授にも見て欲しい(笑)。可愛いクマちゃん、明確に悪意が籠もった辛らつなギャグ、マニアックで何の役にも立たないトリビアこの映画は下品だけど、品性は下品でない。自分たちが好きなことを描いて、それをちゃんと普遍的なものにしている。純粋に楽しかった。これだけ楽しかった映画は久しぶりだった。DVD出たら、また何度も見よ〜っと。

                                         
ダメ中年になったジョンとテッドがマリファナ吸いながら、会社サボってDVDを見ているところ↓でゲラゲラ笑いながら、ふと我に返った。良く考えたらボクもサボってTEDを見にきてたんだ。ボクもクマちゃんたちと同類だよ! (泣)