特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

泣け!笑え!絶望するな!:映画『カリフォルニア・ドールズ』


選挙前に突然持ち上がった北朝鮮のミサイル騒ぎは将軍様が安倍あたりから金をもらってやっている『やらせ』じゃないか、というのは考えすぎかなあ(笑)。
マスゴミは万が一のときはパトリオットミサイルで打ち落とすとか言ってるが、湾岸戦争のときは飛んできたスカッドミサイルより、迎撃したパトリオットの破片のほうが被害が大きかったのを何で報じないんでしょうか。慌てて出動したイージス艦もミサイル部隊も自衛隊の広報活動にしか思えない。大体 実戦だったら落ちる場所が事前にわかっていることなんてあるはずがない(笑)。どうしても空騒ぎにしか思えないのですが、その費用は税金だからな。Bu〜!
                                                                                    
だいたい選挙の世論調査だってインチキ臭い。いまどき調査対象が固定電話、しかも昼間在宅しているなんて少数派です。政党名を自民か民主に絞っている調査もあるらしいですし、根拠を示さないマスコミの報道は疑ってかからなければ危なくてしょうがないでしょう。
全然知らなかったけど、自民党改憲案を作った連中(片山さつき西田昌司)が堂々と国民主権や天賦人権論を否定したんだって?こういうバカのことをどうして報じないんだよ。自民党の西田昌司と片山さつきが、国民主権と基本的人権を否定してしまいました - Togetter

とにかく、選挙に行きましょう!
                                                                                                       

12月2日に閉館してしまった渋谷のシアターNの閉館記念作品。映画『カリフォルニア・ドールズ』。権力、権威にたてつく一匹狼の映画を作り続けたロバート・アルドリッチ監督の遺作(1981年作品)。原題は『All The Marble』(一発勝負【婚活サイト大学】おすすめネット婚活を比較ランキング

会場でパンフを買ったら、同時上映の『合衆国最後の日』も合わせて、なんと160ページもあります(笑)。ページ数だけでなく作品への愛情も分厚いのに感心します。
                                                
お話は、女子プロレスのタッグチームとそのマネージャー(ピーター・フォーク)たちが、ドサ周りの旅を続けながら夢をつかんでいく涙と笑いのロードムーヴィー
                                                   
今年の6月に高倉健が忘れえぬ監督としてアルドリッチのことを日経新聞に書いていましたが、彼の遺作の『カリフォルニア・ドールズ』の知名度は日本では殆どないかもしれません。
ところが藝大教授の黒沢清は『カリフォルニア・ドールズ』を『映画史上 観客からもっとも大量に涙を搾り取った映画かもしれない』と評しています。
元東大総長の蓮實重彦も今は亡き雑誌『話の特集』の映画コラムでこの映画を絶賛していました。素人には全然判らない難解な内容で、しかも読点のないイヤミな文章を書く彼のことはあまり好きではなかったですが、それを読んで『案外いい奴じゃん』と思ったっけ(笑)。
眠気をこらえながら(笑)見たジャン・リュック・ゴダールの『映画史』でルノワールやらヒッチコックやら過去の名画が流れる中で突然 この映画の試合シーンが画面いっぱい、どアップで2回も引用されて、びっくりしたこともあります(『映画史』で2回も引用されたのは確かドールズだけ)。
                                             
本当は藝大も東大もゴダールもどうでもいいんです。なんで他人の権威を借りるようなことを書いたかと言うと、この作品はテーマがテーマだけに過小評価されていると思うからです。俳優の佐藤浩市が、この映画が30年前にロードショー公開された際 『上映後 劇場で満場の拍手が巻き起こったときほど、映画で感動した体験はない』と雑誌ブルータスのインタビューで語っていました。
そういう映画なんですよ。
                                                        

映画は主人公たちがオハイオ州でドサ周りをするシーンから始まる。会場は工業地帯にある場末のスポーツアリーナ、観客はブルーカラー層、それも年齢層は比較的高く、有色人種も多い。この前の大統領選挙でもオハイオは激戦州として大きく世界中の注目を集めました。かっては栄えていた工業地帯は衰退し、空家やホームレスが目立つようになりました。その象徴がこの映画で出てくる製鉄業の街『ヤングスタウン』。かってはUSスティールなどの製鉄所で栄えていたが70年代以降 どんどん工場が閉鎖されていきました。今や日本にもそういう町が一杯あります。この物語は他人事ではありません。
『どこでも同じ話が繰り返される。
かっては1日700トンの鉄をつくっていた。だが今 あんたは世界は変わったと言う。
俺はあんたを金持ちにしてやった。おれの名前やヤングスタウンを忘れてしまうほどの金持ちに。
ヤングスタウン、ヤングスタウン、俺はどんどん沈んでいく。
もうどうしたらよいかわからない。』

ゴースト オブ トム・ジョード』(怒りの葡萄だ!)というアルバムでスプリングスティーンはこの町の鉄鋼労働者のことをこう、歌っています。


                                                
そのヤングスタウンの製鉄所を横目にみながら、主人公たちはおんぼろ車で明日をも知れぬ旅を続けます。リングに上がっている瞬間だけはスポットライトを浴びるけれど、どっちを見ても明るい兆しは見えない。徒に時間だけが過ぎていく。ジャンクフード、ゴキブリが闊歩する安モーテル、タバコ、ドラッグ。
不景気なのは主人公たちだけではない。ギャラをピンはねする悪徳プロモーター(ロッキーに出ていたバート・ヤング)まで、こうぼやいています。『近頃は不景気なんだ
                                                                                                 
そう、この映画は負け組の映画なんです。職業も業界も地域も負け組、落ち目一方。アルドリッチ監督は多くの友人や先輩をハリウッドの赤狩りで失っています。レーガンの大統領当選直後に作られたこの映画が不況の工業地帯や負け組の面々の暮らしを執拗に描いているのは、俳優時代に赤狩りの先棒を担いだレーガンが今度は大統領になって弱者を切り捨てていくことへの抗議が込められているんでしょう。
ピーター・フォークが演じるのは、オペラファンのひと癖もふた癖もあるマネージャー


主人公たちはそこから這い上がるために、あらゆる手を使います。知恵とガッツ、それにユーモア。衣装の費用はマネージャーがイカサマ賭博で稼いだ金。最初はピーター・フォーク演じるベテランマネージャーについていくだけだった彼女たちが、最後には自分で自分たちの運命を決めるようになるのは感動的です。現実を生き抜くためには、きれいごとだけでは済まない。だけど この映画ではそれらがいつもユーモアに彩られています。
クライマックスの試合の前 ピーター・フォークが子供たちに小銭を渡してやらせの応援団を組織するところで(笑)、ボクは涙と笑いが混じってわけがわからなってしまいました。だって、やらせで始まった応援が最後には満場の熱狂的な応援に変わっていくんだから。
●主人公たちと悪徳プロモーター。鏡を利用した見事な構図です。


MGMが自社スタジオで映画を製作していた末期に作られた『カリフォルニア・ドールズ』にはMGMの昔のミュージカルの音楽がたくさん使われています。そのノスタルジックな雰囲気は厳しい世の中で夢を見るためのBGMとしてうってつけです。だが その権利の関係で日本ではこの映画のDVD化が難しいそうです。ちなみにボクはアメリカのアマゾンで買いました(笑)。

All the Marbles [DVD] [Import]

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この映画には敵役だけでなく、悪人も大勢でてきます。だが結果的にはほとんど誰も傷つかない。そういう価値観の映画です。毎日辛いことばかりだけど、主人公たちはユーモアを忘れず、望みを捨てず、なんとか生き残っていく。 『負け組がずっと負け組のままでいるような世の中でいいのか?』 遺作となったこの映画でアルドリッチ監督はそう言っているようにボクには思えます。
これは現実にはありえないファンタジーかもしれません。でもファンタジーがいつも絵空事とは限らない。時にはおとぎ話が正しいこともあります。現実のほうが間違っているんだよ!(笑)。
映画の舞台となった30年以上不況が続いていた街 オハイオ州ヤングスタウンは今、シュールガスで空前の好景気に沸いているそうです。
死んだと思っていた犬が起き上がって、また走り出す。
カリフォルニア・ドールズ』は泣いて笑って勇気をくれる、すばらしい映画です。

*blogbluesさんBLOG BLUESに『選挙の結果なんかに怯えていたら、アルドリッチファンなんて名乗れない』というコメントを頂きました。そのとおり!
とにかく選挙に行こう!