特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

可愛ければそれでいいんです:映画『アーティスト』

楽しかったゴールデン・ウィークも終わり。靴を磨いたり、ハーブを植えたり、家でぼーっとしているうちに過ぎてしまった。家の掃除機が壊れたのでダイソンのコードレスを買ってみたら驚いた。こんなにゴミがたまってたのかと思うくらい良く取れる。今まで使っていた国産の製品とは段違いだ。かっては家電王国と言われていたニッポンだが、ウォークマンもテレビもそうだし、そういう光景はだんだん変わっていくんだろうなあ。過去の延長線で物事を考えていくことがどんなに馬鹿げたことなのか改めて思う。


昨日から日本で稼動している原発がゼロになったということで、とりあえずめでたい。(原発に寄生している人を除いて)誰も困ってないよな(笑)。電力不足という関電の話が全く説得力がないにも関わらず、再稼動の動きは全く止んでないのを見ると、自分が出来ることは本当に何にもなくて、情けなかったり焦燥感ばっかりなんだけど、そこであきらめちゃうと『奴ら』の思う壺なんだろうし。どんなことでも色んな意見があっていいと思うけれど、少なくとも、あんなおバカちゃんたち(電力会社、経産省、政治家、御用学者)には原発みたいなやばいものは触らせちゃいけない、というのは世界中の誰もがどー考えても否定できないとおもうんだけどなあ。結局 原発の問題と言うのは『利権』の問題なんだと思う。総括原価制度と地域独占に虱のようにたかっている連中がこんなに多いとは。それにしても利権とか権力って人間をアホにしてしまう。恐ろしいわ。



六本木で映画『アーティスト』。映画会社の力なのか、アカデミー賞であそこまで賞(5部門)を独占しちゃうと、ちょっといやらしいなあと思ったので、あまり期待しないで見に行った。そしたら大当たり。楽しかった。
http://artist.gaga.ne.jp/

トーキー映画の到来で落ち目になったサイレント映画時代の大スター俳優とトーキーで新たにスターになった女優との淡い恋、そんなお話。

最初にサイレント映画時代の上映風景が描かれる。スクリーンの前にはオーケストラと指揮者、客席には盛装で着飾った男女。いい風景だなあと思う。たまに行くサントリーホールだって、こんな優雅な世界とは程遠い。見ていて、思わず引き込まれてしまう。

サイレント映画にオマージュを捧げた作品らしく全編に渡って画面は白黒、音楽以外の音声はなし。お洒落〜。全然単調じゃないし、退屈しない。新時代にスターになっていく女優と落ち込んでいく俳優の姿がうまく描かれているだけでなく、人間の喜怒哀楽を役者さんの表情と音楽だけで表現していて、それだけでも凄いとは思った。特に音楽には非常に感心した。登場人物が落ち込んだとき、ハッピーなとき、その時々に応じた流麗なメロディーが奏でられる。サイレント映画のころは当たり前だったのかもしれないが、全編にわたって流れる音楽と人間の感情をシンクロさせるというのは並大抵の構成力ではできないだろう。また、大恐慌などの時代背景をちゃんと描いているのは、物語に深みが出ていたと思う。
●主役のお二人
 
だが、この映画の最大のポイントは他にある。
それは『アーティスト』は究極の『犬映画だ』ってことなのだ。可愛い犬がメインで、犬が活躍する映画なのだ。この映画の実質的な主演は俳優の愛犬役、ジャックラッセル・テリアのUGGIEくん。台詞がないってことは表情やしぐさだけで感情を表現しなければならない。つまり、犬と人間が対等ってことだ。UGGIEくんはその環境の中で、全編に渡って大活躍を見せる。走り、甘え、悲しげな表情をし、喜びを身体全体で表現している。アカデミーの授賞式でもUGGIEくんは絶賛されていたけど当然だと思う。


洋の東西を問わず勘違い映画が多いと思うのだが、犬がかわいそうな目に会ったりしちゃダメなんだ。犬にしろ、子どもにしろ、可愛いものはハッピーエンドじゃなきゃ台無しなんだ。現実は必ずしもそうじゃない。だからファンタジーの中くらい、そういう光景を見させてほしいんだよ。

その点『アーティスト』は合格。お話が若干ユルいとかは途中でどうでも良くなった。可愛ければ、それでいいじゃないか(笑)。少なくとも犬は食べ物には惑わされるかもしれないが、利権みたいなものには惑わされないからな。