特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ボクは田原総一郎は嫌いだ(笑):映画『天皇ごっこ』

TPPが大きく話題になっているが、あまり熱心に情報収集していないボクには内容が良くわからない。全国紙は複数読んでるが、それでも根本的なこと、『なぜ韓国や中国のように二国間貿易協定(FTAでなく)、多国間で広範囲なTPPなのか』、『貿易の自由化対象は正確にはどの範囲なのか』がさっぱりわからない。


これと良く似たのが小泉時代の『郵政民営化』だった。新聞を読んでもニュースを見ても、その必要性や狙いがさっぱりわからない。『改革の本丸だ』という小泉の話や、したり顔の学者やマスコミが『行政改革だ』とか『コンビニのように便利になる』とか言っていたのも理解できなかった(郵便局長を世襲制でやっているという特定郵便局制度は流石に酷いとは思ったが)。


だが、なぜ郵政民営化なのか、という疑問は数年後 簡単にわかった。
在日米国商工会議所(ACCJ)の(当時)会頭チャールズ・レイクというおっさんの講演を聴きに行ったら、郵政民営化は私たち(ACCJ)が日本政府にお願いしました』と皆の前であっさり言っていた(笑)。
200兆近い郵貯の資金運用をしたいそうだ。『高度な運用ノウハウを持つ我々が参入すれば、日本の皆さんも利益を得られると思います。』と、大変 流暢な日本語(笑)。超優秀なビジネスマンだと思った。
ちなみにレイクというおっさんはアフラックの当時の社長、今は会長。
思い切り、わかりやすい(笑)。ちなみにアメリカの陪審員制度を模した裁判員制度もこの人たちの要求だそうですから(確かに年次改革要望書に入ってた)。
その後も郵貯の運用は相変わらず日本国債中心だが、リーマンショックのとき、つくづく良かった、と思ったものだ。あいつらに運用させてたら リーマンショック郵貯は一巻の終わりだったはず。

基本的にはTPPも郵政民営化と同じ文脈、とボクは理解している。それでも長所も短所もあるわけで、そこは情報がなければどうにもならない。日本のマスコミというのは政府や大企業の発表を垂れ流すことしかできないのだろうか。


新宿で映画天皇ごっこhttp://www.tenno-gokko.com/
早稲田高校在学中から新左翼成田闘争に参加、その後 右翼の活動家になって、仲間へのリンチ殺人で12年服役。釈放後『天皇ごっこ』と言う小説で新日本文学賞を受賞した作家、見沢知廉を描いた作品。1959年生まれの見沢は2005年に自宅マンションから転落して自殺している。

見沢の小説を演じたことがある舞台女優が生前の三沢と交流があった新右翼鈴木邦男針谷大輔、作家の雨宮処凛、それに北海道大の中島岳夫らにインタビューして、見沢の姿を浮かび上がらせるという内容。
見沢のことは全然知らないが、『天皇ごっこ』というタイトルが単純に格好よかったのだ(笑)


客席に入ると鈴木邦男氏がいる。柔和で温顔な姿はとても右翼の活動家という強面には全く見えない。右翼関係者が多い映画の中のインタビューはわけのわからないものも多かったが、鈴木氏の『理由はどうあれ、仲間へのリンチなんておかしい』と針谷氏の『元来 成田空港の反対闘争は右翼がやるべきだった』という発言はうなずけるものだった。
成田空港って確か、羽田空港を拡張する方法がない、と国が言い張って、農民を押しのけて無理やり作ったのだと思う。ところがいまやどうだ。羽田はバンバン拡張されて、いまやメインになりつつある勢いだ。死人まで出たのだから、あの時 羽田を拡張する方法がないと言った政治家や役人は責任を取るべきだ。結局 成田も原発も太平洋戦争もまったく構造は同じだ。日本という国は理不尽な政策を推し進めて国民を犠牲にし、結果 失敗しても誰も責任は取らないのだ。


ボクは主人公の見沢という人物にはあまり興味をもてなかった。見沢がかなりハンサムな人物だったのも相まって、尾崎豊とかを連想した。有名大学の付属校によくいる、大学受験がないから暇な甘ったれが自滅しただけ、じゃないかと思った。見沢の場合は母親に原稿の清書までしてもらうマザコンそのものだったし。

ただ見沢もまた、世の中の生き辛さを身を持って体現したユニークな人物ではある、とは思った。
映画の中で作家の雨宮処凛がこう、言っていた。『見沢に最初は左翼の集会に連れて行ってもらったが言っていることが難しくてよくわからなかった。次に右翼の集会に連れて行ってもらったら、何を言っているかよくわかったので右翼に入った。』
そういうことなんだと思う。見沢も右翼でも左翼でも、結局は何でも良かった、政治活動も小説も自分の欠落を乗り越えるための一つの方法だったのだ。見沢知廉という人物にボクはシンパシーを感じないが、辛さを抱えた一人のラディカルな人間として存在は理解できる。

このユニークな映画を通じて、右翼とかそういう業界(笑)のことを具間見たのは面白い体験だった。


映画終了後 田原総一郎が出てきて、映画を作った大浦監督とトークショー。田原の『朝まで生TV』にかって見沢が出演したことがあるらしい。
他人の発言を途中でさえぎるから、ボクは田原総一郎というキャスターが大嫌いだ。この日も田原は映画と関係ないことを一人で喋り捲る。挙句の果てには『私は番組で海部と宮沢、橋本、3人の総理を飛ばした』とまで言っていた。そのあと反省したとか言ってたが、その言い分に傲慢さを感じて、この人のことがますます嫌いになった。 独善と不合理と権威主義、日本のマスコミの悪いところを集約したような奴だと思った(笑)。