特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『インサイド・ジョブ(日本版)』(笑)と『嘘ではないが本当でもないこと』、それに★1128 再稼働反対!首相官邸前抗議!

もう来週は12月だもんなあ。また一歩、定年が近づくのは嬉しいけれど(笑)、年末は嫌いです。大嫌いな宴会だの、わけのわからない用事だのって忙しいし、街に出ると一段と人が多いし、とにかく無駄に忙しい(笑)。老体になりつつある身体には堪えます(泣)。
                                           
さて、今日 発表になった家計調査によると、10月の家計消費支出は前年比-4%4月から7か月続けて消費の落ち込みが続いています。実質消費支出、10月は4.0%減 幅縮小も回復鈍く :日本経済新聞
今年の状況を消費水準指数(2010年=100)を使って過去の消費税導入時と比較するとこんな感じ。
●消費税を上げた89年、97年、2014年の消費水準指数推移(10月まで)

                                  
先月も同じことを書きましたが、今年は過去の消費税値上げ時よりも完全に下回った状態が続いている。97年は11月に拓銀山一證券が破たんして消費水準が更に急降下するが、現在はそれとほぼ同じくらい酷い状態が半年以上続いている、ということです。そもそも経済政策の目標が物価上昇ということ自体 間違っている。アベノミクスの物価上昇目標は2%、それに消費税が8%の影響を足したら、給料は4%上がらなければペイしないと言われています。2%のインフレ目標達成には4%の賃上げが必要だ:日経ビジネスオンライン
実態はどうでしょう。大企業主体の連合のデータを見ると今年の賃上げ率が2.2%だ。そもそも4%の賃上げなんてバブル崩壊前の92年以来、20年以上実現していません(笑)。
●85年からの連合加盟企業の賃上げ率。中小企業も含めたら、実態はもっと悲惨なことは言うまでもない。

連合|労働・賃金・雇用
                                        
言うまでもなくバブル期は人口が増え、輸出も好調で、工場は国内生産が主流、尚且つ資産価格も上がっていた頃です。そんなことをリバイバルさせようとしてもムリに決まってんだろ(笑)。アベノミクスは物価上昇目標が2%といった瞬間から間違ってるんだよ(笑)。世の中の殆どの人が損することは最初から判っています。
アカデミー長編ドキュメンタリー賞を受賞した『インサイド・ジョブ』という映画を度々引き合いに出します。リーマンショックは役人・政治家・金融業界・経済学者がみんなグル(インサイド・ジョブ)になって引き起こしたというものです。

選挙向けに安倍晋三が賃上げがどうのこうの言ってますが、最初から詭弁、グル(インサイド・ジョブ)なんです。最初からムリなのは判っているはずだからです。経済のことは何も知らない安倍晋三は判ってないかもしれないけど(笑)、少なくとも筋書きを描いている議員や官僚は判っています。あ、野党は判ってないかも(笑)。
政治家や官僚がグルになって(インサイド・ジョブ)、最初から負担を国民に押し付けるつもりであることくらい、いい加減 国民の方も気が付かないと。アメリカ経済を立て直したオバマの支持率低下は社会の格差拡大が大きな理由とも言われています。それで共和党に投票しても格差が改善されるわけないけどね(笑)。結局 自分の身は自分で守ろうとしなけりゃ仕方ないです。
                                                                                              
たいていの人は今回の解散は安倍晋三の私利私欲だってことは判っているし、与党にも野党にもうんざりしてるでしょう。だけど、それでも選挙に行かないような奴はアホどころか白痴としか言いようがないです(笑)。現実に外部環境がそういう構造↓になってるんだから、それに目をつぶって自分のファンタジーの中だけで安住しているのだったら殆ど廃人と変わらないよ。
小田嶋隆のツイート。これも一面の真実。棄権するようなアホには『お前は選挙に行くな』と言えば良いのかも(笑)


                                              
さて堤未果というルポライター?がいます。最近この人の『沈みゆく大国アメリカ』という本が売れているらしい。この人の新書デビュー作『ルポ 貧困大国アメリカ』はなかなか面白かったんですが、2作目の『ルポ 貧困大国アメリカⅡ』を読んでみたら、読み終えた後 怒りのあまり、ゴミ箱へ放り投げた記憶があります(笑)。
今回は、オバマケアの問題点とそれに絡む保険業界をはじめとした大企業のことを書いて日本に警鐘を与えよう(笑)という内容らしいです。インチキ臭いアマゾンの書評が絶賛ばかり(笑)だったからでもあるんですが、とてもお金を出して読む気にはならなかった。全部読んでもいないのに悪口を書くのもなんですが(笑)、この本もなぜそう思ったのか、その本の終章近くから一節を引用して、考えてみることにしました。引用部の*と太字色つけはボクが入れました。

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2013年12月に会期末、無理矢理通した「特定秘密保護法」の裏に、もう一つ重要法案が隠されていた。「国家戦略特区法」だ。実はこの法律は、八十年代以降凄まじい勢いで国家解体中のアメリカと同じ道を辿る内容にも関わらず、法律が成立した事もその内容も、未だに多くの国民に知らされていない*1。国家戦略特区法は、一言で言うと、「特区の地区で、通常できないダイナミックな規制緩和を行い、企業が商売をしやすい環境を作る事で国内外の投資家を呼び込む」という内容だ。例えば新潟では「大規模農業」、福岡では「雇用の自由化」*2、東京・大阪では「学校や病院の株式会社経営や、医療の自由化、混合診療解禁など総合的な規制撤廃地区」を実現してゆく。まさに「企業天国」が 誕生する*3。この制度は導入してから成果が検証され、上手く行けば全国にも広げてゆく計画だという。成果は「収益」で測られる*4ため、これはかなりの確率で日本中に拡大するだろう。(本書、PP.193-194)

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アマゾンの書評で絶賛している人が本文を引用していたのでコピペさせてもらったんだけど(その引用が正しいことは立ち読みして自分の目で確認した)、実にイヤ〜な気持になった(笑)。たったこれだけの中にも不正確な記述、大げさな記述がいくつもあるからだ。まったくの『嘘ではないが本当でもないこと』とでも言ったら良いでしょうか。4つほど例を挙げてみます。
                                                               
*1 『法律が成立した事もその内容も、未だに多くの国民に知らされていない』
⇒知らされてないどころか、国家戦略特区法が成立したのはネットや新聞に大きく出ていましたけど(笑)。確かに関心のない人、大多数の人は『知らない』だろうが、『知らされていない』ということではありません。堤の記述だと、政府がまるでこの法律を隠しているかのような印象を与えますさすがにそれは事実に反している。
                                                             
*2『福岡では「雇用の自由化」』
⇒確かに福岡ではグローバル創業・雇用創出特区という構想が始まっている。
福岡市 FUKUOKA 特区通信|国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」
●特区案のパワポ 福岡市 FUKUOKA 特区通信|国家戦略特区「グローバル創業・雇用創出特区」
その中で福岡市は、開業率を高めるための一つの手段として、『創立直後のベンチャー企業』に限って『雇用条件の明確化』を行う、と言っています。そんなことで開業率が上がるとはボクは思わないけど、堤の言っていることは事実と全然違う『雇用の自由化』という堤の言ってることを真に受けると、まるで全ての労働者が解雇フリーになるような印象さえ受けます。創業数年内など『ごく限られた』ベンチャー企業において『雇用条件の明確化』を行うというのが正確な内容です。そもそも『条件の明確化』と『自由化』の意味は全然違うし、日本語としてはむしろ正反対(笑)。役所が言っている『雇用条件の明確化』は確かに怪しいけど(笑)、怪しいだけで証拠があるわけでもないし、堤だって証拠は挙げていません。もちろん『解雇フリー』の証拠も今のところない。そもそも創業直後のベンチャー企業は勿論、たいていの中小企業も、現実は今だって実質 解雇フリーだよ(笑)ルポライターのくせに労働現場のそんな基本的なことすら知らないのか。
この前の都知事選挙宇都宮支持者の一部が(確か共産党も)、特区を容認する舛添や細川が当選すると東京が『解雇フリー特区』になるというデマを飛ばしていました結果はご存じの通り(笑)、堤の言ってることは殆どそれに近い。
                                                      
*3『まさに「企業天国」が誕生する』
⇒大規模農業や混合診療、学校や病院の株式会社経営、医療の自由化(はぁ?)は議論が分かれる問題です。だけど、それくらいで『企業天国』が誕生するのだろうか?(笑)。一部の企業は儲かるだろうけど、損する企業もあるでしょう。得をする人もいるだろうし、困る人もいる。市民全体でメリットもあるしデメリットもあるはずです。そういう問題をすべて切り捨てて、十把一絡げで『企業天国』と単純に決めつけてしまって良いのでしょうか。だいたい、企業天国って定義はなんなんだよ(笑)。
                                                          
*4『成果は「収益」で測られる』
⇒例えば福岡市の特区案では成果指標は『開業率を現在の6.2%から4年後に13%へ、雇用者を15万人から20万人に増やす』としています。『収益で測られる』という堤の言っていることは事実に反します。堤の書き方には、企業の利益優先というイメージを与えようとする意図的な悪意すらボクは感じますね。
     

                                                                                                          
たった数行でも、これだけおかしな点がある。堤がやっていることは露骨なでっち上げの類ですよ。ボクの知る限り、堤の言ってることは他でもだいたい、こんな感じです。もちろん時折 彼女も本当のこと、良いことも言うことはあります。今回はオバマケアのことはある程度事実関係を平易に書いているようなので、そこに価値を感じる人はいるかもしれない。だが彼女が書くアメリカ事情は色々な人が既に数年前に書いたようなことばかりだし、上に示した通り、彼女の話は曲解ばかりなので真に受けると危ない(笑)。一部の事実やインタビューから拡大解釈して、『嘘ではないが本当でもないこと』=『殆ど嘘』を煽り立てるのがこのヒトの常套手段なのだ。いわゆる『トンデモ本』に近い、白髪三千丈、針小棒大ってやつだ。確かiireiさんは話半分と仰っていたが、ボクは堤のまともな話は3割くらいという認識を持っています。
つまり堤の言ってることは東スポより酷い(笑)。ご存じない方に説明すると東スポ東京スポーツ)は古くは『アミン大統領VS猪木の異種格闘技戦』とか『UFO出現(か)』のような斬新な見出し(笑)で有名です。でも東スポは笑えるからいい。堤の著作は『嘘ではないが本当でもないこと』を煽り立てて現実の複雑さに向き合うことを放棄している、のが問題なんです。
                                                       
もちろん、そういうことをやっているのは堤だけじゃないです。嫌韓とか嫌中国とかの連中だっている(笑)。だが現実に正面から向き合おうとしない、物事を正確に見ようとしないという点ではあまり違いはないように思えます。堤という人は自分のカネもうけのために『嘘ではないが本当でもないこと』を煽っているとしか思えない。金儲けを否定する気はないけれど、『嘘ではないが本当でもないこと』=『殆ど嘘』を煽り立てて金儲けをするのは酷いと思います。お前こそ、大企業と同じだろって(笑)。
                                                         
                                                                   
だが、より大きな問題は堤より読者の方にあります嫌中国や堤のトンデモ本が売れるのは、『単純な、判りやすい正義』を欲しい人が多いからでしょう。そういうわかりやすい結論があれば受け入れる方だって楽だもん(笑)。だけど普通の世間常識がある人なら『日本の問題は全部 中国や左翼や朝日新聞のせいだ(笑)』とか『アメリカの超大企業に日本は全面的に操られている(笑)』と言われたら、疑うはずだ。
それらは100%嘘ではない、とは思う。中国や左翼の問題点はいっぱいあるし、アメリカの大企業の政治的圧力はある。だけど問題点をそれだけに矮小化してしまって良いのかってことです。日本にもアメリカの政府や大企業の言うことと同じことを考えたり納得した人が少なからずいるのだ。だから安保や基地も受け入れられたんです(今の沖縄は別だけどね)。その理由を良く考えてみなければならない。原発だって、本気で止めようと思ったら原発を受け入れたがっている人の理由も理解しなければ原発をなくすことはできないと思います。
                                                                                      
前にも書いたが、以前聞きに行った講演会で、郵政民営化を日本に押し付けたアフラックの会長(『郵政民営化は私たちが日本政府にお願いした』と公の席で自分で言ってた)が流暢な日本語でこう言ってました。『郵政民営化で私たちも得をしますが、より良い製品やサービスを買う機会ができる皆さんも得をするはずです。
自分がそう問われたら、どう答えるか。
『嘘ではないが本当でもないこと』、つまり『殆ど嘘』(笑)を煽り立てるデマゴーグトンデモ本に構っている暇はない。面倒くさいけれど、ボクらはもっと世の中の複雑さに向き合わなければいけない、と思うんです。


トンデモ本と言えば、この本、『税金を払わない巨大企業』も酷かった。著者は税務会計をやってた中央大の名誉教授だそうだが、繰越欠損金の仕組みを知らないだけでなく、ソフトバンクの単体のPLだけ見て、この大企業は税金を払ってないと言い募ってる(笑)。この本は、偏った見方が多いアマゾンの書評欄ですら、多くの無知と間違いを指摘されて笑われている。もちろんタックス・ヘヴンなど一部はまともなことも書かれているし(内容は低レベルだったけど)、立ち読みした限りでは堤のような確信犯ではなく、高齢の著者が単にこの20年くらいの会計の仕組みの変化を知らないだけ(笑)かもしれないが、お前 学者だろって(笑)。原子力委員会斑目春樹もそうだったが、いわゆる専門家、大学教授のボケってやばいわ〜。

税金を払わない巨大企業 (文春新書)

税金を払わない巨大企業 (文春新書)

●この本へのネット上の指摘・感想まとめ
結構なトンデモ本なのに売れてます、富岡幸雄中央大学名誉教授の「税金を払わない巨大企業」 : 市況かぶ全力2階建
●ちなみに宇都宮けんじ氏はこの本を推薦(笑)。選挙が終わってボケちゃったのか(笑)。そんなに脳味噌が劣化しているなら落選して良かったかも。この人には失望した。



        
                                                                    
ということで今週も官邸前
今週の東京は震えるような雨が降ったり、インフルエンザが流行りだしたり、まるで秋が駆け足で過ぎ去ろうとしているかのようでした。官邸前・国会前の舗道にも銀杏の葉が積もって滑りやすいほどでした。
今日の参加者は官邸前800人くらい、国会前500人くらい、併せて1200〜1300人くらいか(主催者発表1600人)。

この書き出しがパターン化してしまっているのは判っているんだけど、毎週のことなんでネタ切れです(笑)。お許しください。
●抗議風景


 

播磨屋のトラック。抗議の列のところへ来たら、軽くクラクションを鳴らして通り過ぎた。嬉しい(笑)。


まあ、選挙の事はねえ(嘆息)。とにかく完全な候補、政党なんかないよそれは野党再編があろうが、日本が潰れようが、ありっこない(笑)。だったら各自が少しでもマシな方向を考えるしかない間違ってもいいからさ!
●ご参考まで:『落とそう!原発大好きイレブン』。このポスターを作った『緑茶会』という人たちはhttp://ryokuchakai.com/2014/11/18/11/ネーミングからして、ボクはまだ良くわからないが、少なくともこの内容は言えてるかも。ただ大島理森だけはどうだろうか?

                           
●抗議風景2





                                      
今週 川内の事や差し止め却下の判決を見ていて、ちょっと思考がクリアになってきたことがあります。必ずしも原発は絶対反対って言わなくても良いと思うんです。現行の原子力規制委員会の審査をクリアするだけでなく、1.再稼働には原発周辺30キロの自治体・住民の意見を聞け、2.周辺30キロの住民に対して実効性ある避難計画を作れ、これだけを主張すれば良い原発の賛否は判断つかない人はいるだろうが、この主張だったら誰だって賛成するのではないでしょうか。でも、これをやろうと思ったって出来るわけない(笑)。膨大な人間が避難する道路は?避難先は?身体が不自由な人や老人はどうするんでしょ?
要するに、そこに日本に原発を置く矛盾があるのだけれど、それは言わなくてもいい(笑)。ヒステリックに強硬論を叫ばなくても、誰にでも受け入れられることを話せばいい。だって、原発を止めることは世の中のほとんどの人・動物のためになりますからね。

●国会前

●晩秋の銀杏と警備車両。