特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『フタバから遠く離れて 第二部』と『日々ロック』

いつもと同じ感想だけど、やっぱり3連休は楽しかった。会社に行かなくて良いというだけで、どうしてこんなにウキウキするのだろう。早く定年にならないかなあ(笑)。今週末は一泊旅行へ行くため映画を見られないので、この3日間、映画館のはしごで忙しかった。感想が一杯溜まっているんだけど、忘れがたい映画を二本。
                  
東中野で『フタバから遠く離れて 第二部

フクイチの事故により避難生活を続ける福島県双葉町の人々を描いたドキュメンタリー。前作『フタバから遠く離れて』では埼玉県の高校に全町避難した後の2011年末までを描いていたが、今作では2012年初めから2014年春のはそれ以降の住民たちの苦難を避難所閉鎖までが描かれている。井戸川克隆前町長の辞任劇や、中間貯蓄施設の建設計画、家に戻るあてもなく耐え忍ぶ高齢者たちや、住民同士の対立、進まない補償と復興、分断された家族の姿などが描かれる。
                                                                                       
前作『フタバから遠く離れてヴェトナムからも、沖縄からも、遠く離れて:映画『フタバから遠く離れて』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)は心に深く残る作品だった。住むところを追われた双葉町の町民の1年間の暮らしを舩橋監督が避難所に延々通って人間関係を作ってからドキュメンタリーにしたものだ。今作はその後日談、2012年以降を描いている。
井戸川前町長は『こんな放射線量ではフクシマには住めない』として役場を埼玉県の騎西高校の避難所に移した。また国が提示した中間貯蔵施設の建設の交渉にも一切応じない。周辺の市町村は協議に応じ復興作業も始まっている。避難所以外の住民からは不満が湧き上がる。双葉町の住民は約6000人、そのうち3600人が福島のいわき市仮設住宅などにおり、避難所には600人程度に残っているという状況だ。
仮設住宅にいる住民からは『埼玉の避難所は弁当が支給され、手当ても月2万多い。不当に優遇されている』という声が挙がる。部屋も狭く壁も薄い仮説住宅の環境が過酷であればあるほど、彼らには避難所が優遇されているように映るのだ。かといって、埼玉の避難所の生活が楽かというと、勿論そうではない。教室に畳を敷いてダンボールで区切って雑魚寝をする生活を見れば『優遇されている』なんてとても言えるはずがない。過酷な生活でどんどん人も亡くなっていく。もちろん生活を自立させて出ていく人も居るから、最終的に避難所に残った町民は100人程度にまで減る。その多くが80代、90代で自宅を失い行き場所をなくしてしまった人たちだ。しかも介護が必要な人も居る。これこそが『分断』だ。
●染物屋の80過ぎのお婆さんが避難所にかって作った染物を飾った。この人たちは約3年間 廃校の教室の床にアルミシートを敷き、その上に畳を敷いて寝ていた。

                                       
町議会から度々町長不信任の決議が可決されて、2013年3月に井戸川町長はとうとう辞任する。映画は議場での一部始終、それに不信任案を出した議員に議場外で食って掛かる町民の姿をとらえている。新町長は避難所の将来的な廃止と町役場の福島県内移転を決める。
●辞任して役場を退庁する井戸川前町長とそれを見送る町民

新町長も国との交渉や町民の生活の再建に苦闘を続ける。国は相変わらず冷淡で官僚主義だ。東京電力からは充分な補償を得られない。廃墟になった双葉町の商店街を歩きながら、ここに住んでいた人は今何をしている、どこにいる、と答える町長の姿には胸が詰まるものがあった。全国の原発立地の自治体の会合で『原発が悪者にならないように、もっと国のカネで広報をしてほしい』と相変わらず恥ずかしげもなく他人のカネにたかり続ける敦賀市長や玄海町長の姿にボクは怒りを感じたが、それを黙って聞いている新町長の苦渋に溢れる姿は何と表現したらよいかわからない。
●新町長のもと、役場は福島県に戻った。

                            
映画は閉鎖が決まった避難所を町民たちが総出で掃除するところで終わる。埼玉県に返還する前に井戸川前町長も新町長も一緒になってモップや雑巾を使う。それは今年の春のことだ。未だ東京電力は月12万の精神的苦痛への賠償と避難費用の実費以外の賠償を払っていない。
                                                                                              
前作では双葉町を追われて埼玉の高校に避難した町民たちの姿に『こんな酷いことがあってもいいのか』という怒りを抱いた。その続編の今作ではもっと深いアンビヴァレントな感情が湧き上がってくる。
面白い、と表現していいのかどうかわからない。これを見てもボクはどうして良いかわからなかった。問題の本質はそこにあるのだろう。前作より深く心を打たれる、はっきり言って傑作。

                                      

                                                         
                                                                                                   
渋谷で映画『日々ロック
サイタマノラッパーシリーズの入江悠監督、それに二階堂ふみちゃんの新作。良く知らないがヤングジャンプに連載している漫画が原作らしい。

カネなし、ふろなし、彼女なしのヘタレ・ロッカー日々沼(野村周作)が高校時代の友人と結成したバンド、『ロックンロール・ブラザーズ』。場末のライブハウスでライブをしている彼らの前に一人の女が現われた。カリスマ的な人気を誇ろトップアイドル宇田川咲(二階堂ふみ)だ。本当は自分の好きなロックをやりたい宇田川はある日、日々沼に『曲を書いて欲しい』と頼むが。
                                                          
きっと原作が悪いんだろうけど、お話は実にクダラナイ。まず、ボクは日本のこういうバンド大嫌いだ。常識的で日常を疑うことも知らない、要するに知性のかけらもない歌詞に、下手くそでセンスのない演奏。ボクは日本のフォークも演歌も女々しくて大嫌いだが、頭の悪い日本のロックバンドも大嫌いなんだよ。一昔前に流行ったブルーハーツみたいな、ロックとか言ってるくせに現状維持で思考停止してる連中だ。しかもステージで男が脱ぐのも大嫌い!(笑)。そんなものポーズだけだろ、この保守反動が!どうせ服を脱ぐなら、イギ―・ポップみたいにステージで裸になってガラス片のかけらの中に飛び込んでみろって。
●左側のビジュアルはゴミ!

                               
だが映画はそういう音楽をうまく再現している。同じクダラナイ曲の演奏でも場面によって、ものすごく良く聞かせるところなんか音楽映画として抜群だ。まず制作側が音楽のノリを理解しているってことだし、センスも良い、それに演者、特にドラマー役の人(実際にミュージシャンらしい)はすごく上手くて感心した。だけど、こういう音楽はボクはやっぱり大嫌いだ(笑)。だから中盤まで主人公たちに思い入れは一切持てなかった。ただバンドのベーシスト役の前野朋哉と言う人(『桐島部活辞めるってよ』の相棒役)が蛭子能収に顔がそっくりでそこは笑わせてもらった。年齢不詳のロッカー役で出ている蛭子さんの息子か、と思ったもん(笑)。


                 
だが映画としては面白い。何と言っても二階堂ふみちゃん。前半、主人公たちを文字通り張り倒し踏みにじる凶暴ぶり堂にいったロックンローラーぶり(この娘は実際にパンクが大好きらしい)中盤の完璧なデジタル・アイドルぶり後半の重めの演技、と、見ていて楽しかった。この人のことはもう完全にファンになっているから冷静じゃないかもしれないけど(笑)、最初から最後までサイコーでした。
●凶暴なアイドルが頭の悪いバカ・ロッカーを張り倒す。

●パフューム+初音ミクのようなアイドル姿。これでアルバム出してくれたら、ボクは絶対買う!ついていきます!



                                    
それに脇を固める蛭子能収とか竹中直人が良い味だしてる。大河ドラマ淀君と秀吉をやってる二人が、アイドルとドレッドヘアーのライブハウス経営者というのも奇妙な気がしたが、この方があってるよ。蛭子さんも渋かった。要するにそのまんまなんだけど、このとぼけた脱力ぶりが、この映画の雰囲気にものすごくあってた。サイタマノラッパーでは強面のラッパー役をやってた人たちが、今度はライブハウスでロッカー役をやってたり、そういう細かなギャグも笑わせてもらった。
●ちなみに『如何に人付き合いが嫌いか』を延々述べる(笑)蛭子さんのこの本も良い本だった。共感した!

                                                                                  
入江監督お得意のダメ人間の苦渋溢れる大逆襲はこの映画でも鮮やかだった。今回はちょっと判り易過ぎる感もないではないが、クライマックスではボクはもう大号泣してしまって、だけど、その中に散りばめられたくだらないギャグの連発で大笑いしながら、どうしたらよいか判らなかった。はっきり言って、今年一番 笑った。もう真・善・美というか人生の道徳的な勝利の域にまで達している?のではないか。ギャグで大泣きさせる、このシーンは一生忘れない。

                     
                                                
思い切り泣いて笑って楽しめる寅さんのような映画!そう言えば劇中、ふみちゃんの携帯の着メロが寅さんのテーマと言うギャグもあった(笑)。あ、ボクは寅さん、見たことないです(笑)。
もう一回見たい!何度も見たい!ギター、練習しよ(笑)。