特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ボクらは『標的』じゃない:映画『フェア・ゲーム』

昨日床屋へ行ったら店の主人が『店の周りを線量計で測ったら0.2ミリマイクロシーベルトあるところもあったんですよ』と言っていました。その床屋がある渋谷区=あまり放射性物質が流れてこなかった地域ですら こうなのだから、おそらく東京中 そうなんだしょう。


相変わらず新聞記事は酷いものばかりで反原発に回った?朝日新聞も例外ではないのだが、ちょっと前から連載されている『プロメテウスの罠』だけはとても面白いです。
原発事故のTV報道で唯一まともだったのはNHK ETVの『ネットワークでつくる放射能汚染地図』だった。それに登場した、現地にいち早く駆けつけて放射線量を測り続けた研究者(木村真三氏)が厚労省の研究所を辞めざるを得なかった経緯避難区域への立ち入りを禁じたNHK内部の自主規制原子力安全保安院の役人の多くが現地の対策本部から逃げてしまったこと文部科学省のSPEEDIの情報が国民から隠蔽された経緯、などが記事になっています。
それまで現地への立ち入りや事故報道を自主規制していたNHKが『ネットワークでつくる放射能汚染地図』の放映が好評を博したら、ころっと姿勢が変わった話など非常に興味深かったです。

役人の証言拒否などで内容は突込みが甘いところもあるが、どれもボクが知りたかったことばかり。こういうことを検証しなくては、また同じことが起きるに決まっているからです。今後 単行本が出たら、是非買おうと思っています。
今日からは気象庁情報隠蔽の経緯が始まった。事故当時 気象庁と気象学会が風向などのデータを隠したのは、文字通り恥知らずな犯罪行為じゃないですか。事故当時 ボクらはドイツの気象庁の拡散予測を見なくてはいけなかったんです。なんでこんなバカな気象学者や役人を税金で養わなくてはいけないんでしょうか。
日本でこういうことが起きたということは忘れてはいけない、と思います。



六本木で映画『フェア・ゲーム
http://fairgame.jp/
世界中で大きく報道された、イラク戦争の際の『ブッシュ政権のCIAの工作員の身許漏洩事件』を描いた作品。
ナオミ・ワッツショーン・ペンという2大スターの主演作の割には日本で地味な扱いなのはどういうわけでしょう。ショーン・ペンという人は俳優としての素晴らしさもそうだが、スプリングスティーンの歌(ハイウェイ・パトロールマン)をそのまま映画にした初監督作『インディアン・ランナー』を見て以来、ボクは『支持』することに決めています(笑)。


イラク核兵器疑惑は有名無実であることを新聞で公表した元ガボン大使ジョー・ウィルソン(ショーン・ペン、本人そっくりだ)への腹いせにブッシュ政権は、その妻であるCIAの美人工作員ヴァレリー・プレイム(ナオミ・ワッツ)の身許をマスコミにリークし、夫妻は社会生活ばかりか生命の危機に陥るという実話です。
●原作となったヴァレリーの手記(美人だ〜)

Fair Game: How a Top CIA Agent Was Betrayed by Her Own Government

Fair Game: How a Top CIA Agent Was Betrayed by Her Own Government

  • 作者: Valerie Plame Wilson,Laura Rozen
  • 出版社/メーカー: Simon & Schuster
  • 発売日: 2008/06/10
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CIAの工作員が実名を明かされることは自身が関わっている工作活動だけでなく、工作員本人の生命の危機にすら、直結します。もちろん犯罪です。
フェア・ゲームとは攻撃目標、狩猟などの『標的』のこと。副大統領チェイニーの首席補佐官リビーが、ヴァレリーのことをそう呼んだことに基づいています。

●演じたナオミ・ワッツ(向かって左)とヴァレリー・プレイム本人(二人とも美人だ〜)

映画の前半、ブッシュ政権核兵器疑惑をでっちあげていく様は、まるでサスペンスのようで手に汗を握ります。
今更ながらブッシュ政権のあまりの酷さに驚きます。証拠を捏造して戦争を始めるだけでなく、それに反対する自国民まで汚い手を使って潰そうとするのですから。(小泉のせいで)こんなバカを日本は支持したんです。更にヴァレリーの身許が漏洩されたことで、ヴァレリーイラクから逃がそうとしていたイラク人科学者たちも何人も殺されてしまう。だが大官僚組織のCIAは組織防衛を優先です。非合法な手段でブッシュ政権ヴァレリーを攻撃しても彼女を守ろうとしないばかりか、上司やトップまで乗り出して口封じをしようとする。


夫妻が苦境に追い込まれていく後半の描写はやや平板な感じはしたけれど、ショーン・ペンがドアップで泣き笑いの表情をたっぷり堪能させる大芝居を見せて大逆転(笑)。そこは、お見事。


エンドロールでは、とうとう政権と戦う覚悟を決めたヴァレリーが実際に議会で証言するフィルムが流れます。巨大な権力を相手にした孤独な二人の戦いがかろうじて勝利を収める感動的な情景です。その結果 身許を漏洩させたリビー補佐官は有罪、実刑判決を受けます。だがブッシュは特赦で執行猶予をつけてしまうのですが。


この映画ではところどころに挿入される当時のニュースフィルムがとても、とても効果的です。ブッシュが、チェイニーが、ライスが、当時の政治家がどんなに酷いウソを言ってたか、また それを忘れかけていたことを自分でも実感しました。 映画の中でウィルソン元大使がこう言っていました。『多くの人は派手なスキャンダルは覚えているが、政治家が何を言ったか、何をやったかは往々にして忘れてしまう』 と。



今回の原発事故でもそうでしょう。
あの時 枝野が何を言ったか、菅直人はどうだったのか。東京電力はどんな企業なのか。天皇ですら避難所の被災者の前でひざを折ったのに、東京電力の藤本孝副社長はどうだったのか(笑)。保安院のスポークスマン西山英彦審議官は事故の最中 何をやっていたのか(笑)。東大を始めとした御用学者たちが何を言い、何を言わなかったのか。マスコミが何を伝えなかったのか。

そういうことを、ボクは金輪際忘れないようにしようと思っています。
ボクは奴らの『標的』ではないですから。