特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『マッチポンプ』の時代

さて15日はウォール街占拠(OCCUPY WALL STREET)に連帯する世界一斉行動デーだったそうだ。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111015-00000079-mai-soci
今回はデモに行く代わりにこんなことを考えていた。前に書いたロバート・ライシュの話何かが始まったのかも:ロバート・ライシュの『余震(アフター・ショック)』と映画『ザ・カンパニーメン』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)を日本に置き換えてみたのだ。すると、あら不思議(笑)?。

●日本の最高税率ジニ係数の推移
このグラフは日本の所得税最高税率ジニ係数の、この30年の推移。財務省内閣府のホームページから数字を拾っただけだから、誰でも検証できる。
皆知っているだろうけど、所得税最高税率とは世の中のお金持ちにかかる税率だ(黒い直線)。ジニ係数は社会の貧富の差を示す指標で、高いほど格差は大きい、とされる。ここでは社会保障などで所得を再配分する前の数字(青い点)と後の数字(ピンクの点)、両方を示した。


2007年に若干ゆり戻しがあったものの、最高税率はこの30年間、下がり続けている。かっては75%、現在は所得1800万以上の人の税率は40%だ。
さらに言えば消費税3%の導入は89年、5%に上げたのは97年、そのたびに最高税率を下げている要は日本は消費税を導入する度にお金持ちを減税している、ということだ。もちろん株式の譲渡所得の減税などを考えれば、お金持ち優遇は更に大きくなる。


一方 ジニ係数、特に再配分前の数値はこの30年間上がり続けている。ジニ係数は高齢化も関係しているかもしれないが、このグラフを見ればもっと明確なことがわかる。消費税をあげて最高税率を下げるたびに世の中の格差は拡大しているのだ。
だって当たり前だよね。消費税で貧乏人からもお金をとって、最高税率を下げてお金持ちを減税しているんだから

だが、再配分後のジニ係数の数値は上昇してはいるが、再配分前ほど酷くはない。


ここから何がわかるか。
つまり日本は高額所得者を減税して、それで広がった格差を緩和するために社会保障でお金を配っているのだ。
所得税を下げるたびに再配分前のジニ係数(ピンクの点)は上がり、それを緩和する(青い点に下げる)コストはどんどん増えていく
日本の財政危機の最大の原因は社会保障費の増大といわれているが、自分で格差を広げてそれを緩和するために大金を使っているのだから、財政だってパンクする。こういうのを『マッチポンプ』と言う(笑)。


じゃあ、どうしたらいいか。


ハイ、簡単です。元に戻せばいいんです。最高税率を上げてお金持ちがもっと税金を払えば良い(笑)。その分 消費税も下げてもいい。
そうすれば民需が増えて景気も良くなるし、税収だって増え、社会保障コストも歯止めがかかるから日本の財政だって改善の方向に向かう。もちろん、長期的にはお金持ちにも利益が還元される。これぞ、トリクル・ダウンならぬトリクル・アップだ〜(笑)。


今 アメリカで、オバマが年収2000万円以上の高額所得者に増税しようと言うのはこれと同じロジックだ。ちなみに90年代、クリントン(エッチな親父のほう)(笑)は金持ちに増税して(31%⇒39.6%)、景気回復と財政再建の両立に成功した。

だけど日本では、こういう意見はあまり世の中に出てこない。
もちろん、マスコミがこういうことをあまり報じないで、消費増税一辺倒なのは理解できる。マスコミの多く、特に放送局は東京電力同様、参入規制に守られて高額所得者で占められているからだ(笑)。政治家だってそうだろう(笑)。


ボクは高額所得者も格差も一概に悪いとは思わない。だけど格差があまり広がるのは治安悪化や社会の流動性が削がれて沈滞化するし、一部の人間にだけ有利なようにルールが捻じ曲げられるのはやはりおかしいと思う。日本で高額所得者がずっと減税されてきたのもそうだし、多くの人たちが失業であえぐ中、自分たちは税金で救済されて高額ボーナスを受け取るウォール街の連中はその極端な例だろう。地域独占と総括原価制でふんぞり返っている日本の電力会社もそうだよな。

だけど、ね。
世の中、一人勝ちなんて長く続かないもんだ
だって子どもの時から、そうだったじゃないか(笑)。