特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

何かが始まったのかも:ロバート・ライシュの『余震(アフター・ショック)』と映画『ザ・カンパニーメン』

ウォール街を初めとしてアメリカ各地で起きている占拠活動は3週間以上が過ぎたが、収まる兆しはないようです。我々は『アラブの春』に感化された、と臆面もなくアメリカ人が言えるのはあの国の健康的なところを象徴していると思います。
税金で救われた金融機関の経営者が数十億のボーナスを手にし、多くの一般人が失業や貧困にあえいでいる、それはおかしいと考えるのは当然でしょう。
Occupy Wall Street | NYC Protest for World Revolution
●抗議に参加した麗しのスーザン・サランドンさま

●相変わらずデブのマイケル・ムーア 『何かが始まった』


アメリカの元労働長官ロバート・ライシュは近著『余震(アフター・ショック))の中で『アメリカの不況の原因は富裕層にあまりにも富が偏在化したことで需要が減りデフレになったためである。それを本質的に解消するためには富の再分配をおこなうしかない。』としています。
今やアメリカの富の40%を全体の1%しかいない富裕層が所有しているそうです。そうやって、富が偏在化することで金融と実体経済の乖離が一段と拡大し、バブルとその崩壊が引き起こされる。一方所得が低下した中流階級以下の人間は購買力が低下して、国全体の需要が減るそしてデフレ不況が続いていく、というのがライシュの見立てです。


日本で言えば閣僚にあたる元労働長官がこんなラディカルなことを言っているのには驚きますが、日本にとっても大いに参考になる、とボクは思っています。日本でもアメリカでも富裕層の所得税だけはこの20年間ずっと下げ続けています。一方 中間層の暮らしが不況と増税でどうなってきているかは言うまでもありません。そりゃあ、需要不足=デフレ不況になるのは当然です。

余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる

余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる




今日、アップルストアの前を通ったら、亡くなったスティーヴ・ジョブスへの花束が一杯置かれていました。経営者なんて人種は興味ないけれど、個人がシステムに優越した稀有な例として、この人は記憶されるんでしょう。



有楽町で映画『カンパニー・メン』(社畜)(笑)
http://companymen-movie.com/http://sankei.jp.msn.com/entertainments/news/110930/ent11093007470009-n1.htm
リーマンショック後のアメリカ。不況でリストラに見舞われた会社に勤める3人の男を描いた群像劇。この映画のポスター、綱渡りする男を下から見上げる登場人物たちの姿は他人事じゃない。ちょっと前に就職事情のことを書きましたが、就職したあとも大変なんだよ(泣) 。会社勤めなんて無意味な綱渡りみたいなもんです(自分で事業をやってもそうかもしれないが)。

リストラがテーマでも映画の配役は豪華。ベン・アフレックケビン・コスナートミー・リー・ジョーンズ、クリス・クーパーのアカデミー賞男優の揃い踏みです。
舞台はリーマンショックで不況&株価急落に見舞われた巨大企業(GMみたいな感じ)。赤字の造船部門でリストラが始まる。まずベン・アフレック扮する営業部長がリストラにあいます。MBAホルダーでエリート街道を歩んでいた彼は再就職もなかなか決まらず、家も車も売り、今まで仲が悪かった妻の兄、ケビン・コスナー扮する大工の親方の手伝いで糊口を凌がざるを得なくなります。
一方 企業のほうは最初のリストラでは株価の低下が止まらず、他社からの買収を防ぐため、さらにリストラを行おうとする。
トミー・リー・ジョーンズ扮する造船部門担当の副社長は理不尽なリストラを阻止しようとしますが、かえって親友でもある社長に裏切られ、自分の愛人である人事部長にクビを宣告されてしまいます
プロットとしては良くできていて、まるでシェイクスピアみたいです(笑)。あ、もちろん企業のロジックの常として、その人事部長も最後はクビになります。そして会社も他社に買収されてしまう



今まで大会社で高給を食んでいた彼らは失業すると一転、周りの人間から何度も裏切られ、徹底的にプライドを傷つけられます。特にベン・アフレックが転落していくところは目を覆うようです。
当初は自分のキャリアなら直ぐ再就職できると踏んでいたが、現実は甘くない。やがて自分用のポルシェを売り、家族用のボルボを売り、ゴルフ場の会員権を売り、豪邸を売って、子供用のXボックスまで売らざるを得ないところまで追い詰められる姿はとてもリアルに感じられました。
また そういうベン・アフレックの姿が描かれたこそ、今まで折り合いが悪かった大工の義兄ケビン・コスナーが彼に約束より多く給料を渡して、『計算違いだろ』とボソッと嘯くシーンにしびれちゃう(笑)。
この映画は救いの道を製造業の復権と家族の絆に求めます。昔に戻るっていうことなのか。それはどうなんだろうかとも思うが、判りやすい結論ではあります。




リストラをすることで企業の株価が上がり、ストックオプションを持っている経営陣はさらに儲かる、というのはどう考えてもおかしい。 そして政治家、官僚、ウォール街、学者がグルになって利益を配分し、そのツケは一般国民にはらわせているのもおかしい。これ、事実でしょう?



スケールこそ違えど東京電力もやっていることはウォール街の連中と同じです奴らはカネをばら撒いて政治家とマスコミと官僚を押さえ、そのツケは総括原価方式に基づく電気代という形で一般消費者に払わせますあ、カネだけじゃなく放射能もばら撒いてるか(笑)。だいたい、除染ってお前ら加害者の仕事だろ〜が。


多くの人がそういうインチキに気がつき始めた、というのは世の中が少しはマシになっていく兆しなのかもしれません。
何かが始まったのかも。
だったら、いいな(笑)。