特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『岸田ショック?』と読書『会社がなくなる!』

 昨晩の地震はビビりました(笑)。
 今日 お昼ご飯の時、いつも通っている中華料理屋のお母さん(福建省出身)が『日本の地震、怖かったよ〜』と言ってました。
●今日の定食。鷄とカシューナッツ炒め800円。鷄肉がプリプリでした😸

 タイミング的には寝ているところを文字通りたたき起こされた感じでした。ブログを読んでくださっている皆さんはお変わりなかったでしょうか。
 ボクは徒歩通勤ですが、電車で通っている勤務先の人に聞いたら今朝のJR関係は運転開始が遅れ、密どころじゃない、地獄のような混み方だったそうです。
●今朝7時の首都圏某駅😇

 以前 イタリアではマグネチュード3とか4くらいで建物が崩れて大騒ぎになってましたが、M6、震度5強の地震でもほとんどの建物がビクともしないのは日本ならではなのでしょう。
 日本の国土は世界の0.25%なのに対して地震は世界の20%を占めているそうです。


図1−1−1 世界の災害に比較する日本の災害 : 防災情報のページ - 内閣府

 今のところ日本は平和な国ではあるけれど、地震はあるわ、活火山はあるわ、世界屈指の災害大国ではある訳です。こんな国に原発とか、どう考えてもムリ。もちろん戦争もムリ。子供でも判る理屈だと思います。


 さて、岸田が就任記者会見で、中産階級を復活させるとして金融所得への増税を検討する旨を言及しました。具体的には株の儲けや配当金にかかる税率20%のアップを検討するようです。


www.nikkei.com

 なんでかというと、日本では年収1億円を超えると所得に占める税負担率が下がる、という構造になっているからです。下のグラフにあるようにお金持ちほど収入に占める株の儲けや配当金の割合が高い。しかし、これら金融所得の税率は所得税の累進税率より低い20%だから、負担率は下がってくる。


所得1億円超の金持ちほど税優遇される現実 | 政策 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース

 その記者会見以降、皆さんご存知のように、株が下がりまくっています。先週末の約30000円から、昨日は約一割下がった。

www.nikkan-gendai.com

 その原因を日本のニュースはアメリカの利上げとか色々誤魔化してますが、これを超有名専門誌フィナンシャル・タイムズは『岸田ショック』と名付けています。


 ボク自身は社会的再配分を強化して富を平準化したほうが、消費も増えるし少子化も緩和されると思っています。金融所得なんて不労所得なんだから、ガンガン課税すべきです。消費税減税のような金持ち優遇策より1億倍は優れた政策です。この件は岸田の言ってることは正しい。

 しかし金融所得を上げるなんて、不用意に言うと、こういうことになる。
 お金持ちや証券会社が困るのはともかく、株には我々の年金だって運用されている。国の年金積立金を管理するGPIFだけでなく、企業だって年金資金を株で運用しています。損失が出れば企業はそれを補填しなくてはなりませんから、その分だけ給料が減る可能性もある。
 今の世の中、結構な部分が一蓮托生です。資本家と労働者は対立もしているけれど、利害を共にしている部分もある。そこがポイントです。


 
 それでも ボクは金融所得への課税強化はやった方が良いと思いますが、やるにしても10年かけてやるとか、ゆっくりやらなくてはいけません。社会の混乱を招き、弱者に皺寄せが行く有権者は判りやすい答えを欲しがるものですが、単純な勧善懲悪じゃ世の中回らないってことはこんなことからも判ります。

 金融所得の課税強化は野党の政策でもありますが、政権交代しても今の野党では絶対出来ないと思います。自民党だけでなく、マスコミや財界からの非難の大合唱で国民も引きずられるでしょうから、腰が定まらない野党には実行することはできないでしょう。
 岸田が困難を乗り越えて、金融所得への課税を強化することが出来るかどうか、彼の試金石になるでしょう。


 ちなみに消費税の逆進性について騒いでいるバカが居ます。このグラフを見ると、消費税の逆進性なんて些少な話かがよく判ります。


消費税率10%で最富裕層(年所得100億円超)は最貧困層(70万円以下)の税・社会保険料負担より低くなる=消費税増税で最富裕層の公的負担が最も軽くなる最富裕層天国が完成する | editor

 所得別の税負担率を詳しく見てみると、収入が少ない世帯では社会保険料の負担率の方が消費税より遥かに大きいことがわかります。社会保険料は定額だからです。かっては民主党共産党が、そして今回の総裁選で河野太郎が言ってた社会保険料の税負担化は、収入が少ない世帯にとって最大の負担を軽減させる効果がある


 立憲民主の経済政策を作っているのは元官僚の江田憲司、と枝野がBS-TBSの報道1930で言っていました。その江田は毎日新聞で野党の共通政策に入っている消費税の減税についてこう言っています。


mainichi.jp

 さすが、元官僚だけあって江田は消費税なんか下げても意味がないことは理解しているようです。だから時限減税にする、と。
 でも、効果が見込めないことが判っている消費減税を共通政策に入れたのはポピュリズムに引きずられた、とも言える。

 こういうところが今の野党をいまいち、信用できないところです。完璧な政党なんかないし、政治には妥協も必要です。しかし、無意味と判っていてもポピュリズムに引き摺られる。かって日本が太平洋戦争を始めたのと同じです。この体質はおっかないです。

 自民、公明、維新の議席を減らさなければ日本の国会は機能しませんが野党に政権交代したら、それはそれで大変なことになるのではないか。ボクはその危惧を拭い去ることが出来ません。ま、今回の選挙では政権交代はないでしょうけど。


 定年が待ち遠しいから 読んだ訳じゃありませんが(笑)、読書『会社がなくなる!』。

 元伊藤忠の社長・会長で民主党政権時代に中国大使を務めた丹羽宇一郎氏の新著です。高齢でビジネス界を退いた現在も日中友好協会の会長を務めている人。

 大企業の社長なんて全く興味はないんですが(笑)、この人は単に博識なだけでなく、民主党政権で大使を務めたことからでも判るようにリベラルで常識的な人です。
 ボクは熱心な読者じゃありませんが、この人の実務家として大組織を動かした経験からの発言は一理あることが多いです。机の上で屁理屈こいているだけのバカ学者より、よほどためになることを言っています。

 主な内容はこんな感じ。
 ・先進国と発展途上国、先進国内の貧富の差や人種などワクチン接種一つとっても格差が出てきている。今までも貧富の差で健康格差が生じていたが、その傾向はコロナ危機で加速されている。金儲け優先の資本主義を見直す時ではないか。

 ・元来 企業は社会に貢献することで利益を得て存続するものだったのが、石油ショック以降 成長が難しくなり、金融資本主義、つまり株価の上昇と株主への利益還元に偏重した金儲け至上主義に変わってしまった。昔の『三方良し』(売り手、買い手、社会の3者が満足することが真の商い)がアダム・スミスが『経済道徳論』で描いた資本主義の元来の姿である。

 ・最近のベストセラー、『人新世の資本論』は『(人間が成長したいという自己抑制をすることで)資本主義を脱成長経済に脱皮させ、労働時間を短縮し、環境保護と労働者の人生を充実させる』とあるが、人間には虚栄心もあるし、競争心もある。それをどうやって抑えるのか。『人新世の資本論』が唱える脱成長コミュニズムは人間の存在を無視した単なる空想ではないか。

 ・最近はやっているESGやSDG’S、それに『人新世の資本論』など『美しい言葉』にどれだけ実行が伴っているだろうか?空想の美辞麗句より、日々実行を積み重ねていくしか世の中を変える方法はないのではないか。

 ・これから大企業は解体されて中小企業化していく時代になっていく。世の中のスピードに追い付くためには縦割りの大組織では対応できない。情報技術を使って、中小企業のようなグループが幾つも連携していくのではないか。

 ・資源もなく、少子高齢化も進む日本の将来はなかなか大変である。ただ、今ならまだ、教育を受けた中間層という強みがある。それを生かしていくしか日本の活路はないだろう。

 ・今のオヤジ連中は既得権益を吸ってきたという面もあり、中々変わることが出来ない。Z世代に代表される若い世代に期待していくしか世の中を変える方法はないと思う。戦争や原発事故の責任があいまいになるのも、権限と責任が明確化されていない縦社会に生きてきた連中が権力を握っているからである。若い人たちの頑張りと年配者が若い人が思うように活躍できる場を作ることで、初めて日本は変わることが出来るのではないか。

 丹羽氏の『人新世の資本論』の感想がボクと同じというのは感激しました(笑)。ああいう革命幻想を振りまく本は空想論としてなら良いけど、真に受けたらエライことになる。形だけかもしれないが少しは実践が伴っているSDG’Sより、あちらの方が遥かに害は大きい。

 大企業が中小企業化していくというのはボクには判りません。日本の強みを敢えて探したら、教育を受けた中間層の分厚さ、というのはなるほどと思いました。ただし、その強みはあと10年は保たないでしょう。

 他にも中国に対する見方『現在の強権政治を続けると、いずれ分裂するのではないか』アメリカに対する見方『現在激しくなっている人種差別や格差はアメリカ社会を破壊する。』『それでも米中は共依存していくしかない』も興味深かったです。

 日本はその間に立って『絶対に戦争を回避するという精神で、日本はウソはつかないという信頼を築いていくことで米中の間を取り持つしかない』と丹羽氏は言っています。教育を受けた分厚い中間層を持っている日本は資源や金はなくても、ウソはつかないという信頼を築くことなら出来るのではないか、というのです。

 著者は82歳の高齢ですから、恐らくインタビュアーが聞き書きしたのでしょう。軽い本ではあります。しかし当たり前だが、なかなか実践できない、正しいことを言っていると思います。さっと読める本ですし、なかなか面白かったです。