特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

真夏のノヴェンバー・ステップス

なんか、色々とわずらわしくなってしまって、四国出張の途中で山の中の宿へエスケープ。
その宿は『自然以外何もない』ことを売り物にしていて、娯楽設備はCDプレイヤー以外、テレビも時計も何もない。夏休みシーズンだからか、一人で来ているのはボク一人(笑)。誰とも、何も、口を利かない時間。フロントで武満徹の『ノヴェンバーステップス』のCDを借りて、それをかけながら読書三昧。
●部屋の窓からの光景
西洋音楽和楽器を織り交ぜた『ノヴェンバー・ステップス』は今聞くと、昔の音楽だなあ、と言うのが率直な感想なのだが、開け放った窓から聞こえてくる流れる川や鳥や虫の声と案外相性が良いのには驚いた。琵琶にしろ、尺八にしろ、和楽器というのは自然の中で聞くといい感じなのだ。演奏が周りの環境にいい感じで埋もれて、都会で聞くのと全然違う。ソロ・パートでも過度な自意識・自己主張がないように聞こえるというか。
そんなことを考えていたら高校生のとき(武満氏と友人の)林光氏にお会いして(押しかけて)話を聞いたことを思い出した。アホな高校生相手に対等に、穏やかに、話をする林氏を見ながら、本当に教養がある人ってこういう人なんだなあ、と感じたのだ。昔を思い出すというのは歳をとったのかな(笑)。

武満徹:ノヴェンバー・ステップス

武満徹:ノヴェンバー・ステップス

ノヴェンバー・ステップスを聞きながら読んだのは広井良典の新作『創造的福祉社会』。
『もう右肩上がりの経済成長はありえないから、平等と持続可能性と効率性を再定義しよう』というのには異論は無い。ギデンズの『第3の道』にコミュニティとかローカル性をプラスした方向性を目指そうという感じか。人類史の中で、突如 精密な壁画が描かれ始めたアルタミラ洞窟の時代、キリスト教儒教老子などが同時発生した紀元0年前後、に続いて、現代は経済成長が止まる『人類3度目の定常期』と言う、長い歴史の中で現在を捉えようとする視点は刺激的で面白い。
だけど、この人はコミュニティに対して無反省というか、期待しすぎと言うか、そこのところがボクとは相容れない。読んでいる側は世俗が嫌になって山篭り(1泊だけど)(笑)してるんだから、なおさらだ。総じて前作『コミュニティを問い直す』(この本は新鮮だった)の焼き直しのような感じがした。
でも、日頃と視点が異なる、そういう本をまとまって読むことができた時間はとても、とても楽しかった。

それにしても三菱重工と日立の合併っていうのは驚いた。
原発企業が『もう、やばい』(笑)という危機感を持ってるって事の現われだろう。同じ『原発村』でも市場競争に晒されている企業のほうがカネのことを真剣に考えているだけ、現状を認識する力は役人や政治家、そして独占企業よりまだマシってことだろう。
あ、もうひとつ思い出した。
何年か前の夏に行ったビジネススクール三菱重工の奴と飲んだ時、そいつの話はやたらに自衛艦原発で、さすがに話は全く合わなかったんだよなあ(笑)。世俗では全て受け流して生きているんだけど。物には限度がある。って真理を悟った瞬間だった(笑)。