特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ミニシアターの落日、落日の人生:人生万歳(Whatever Works)

恵比寿でウディ・アレンの新作、『人生万歳』Account Suspended
恵比寿ガーデンシネマが今月で閉館だそうで、そうなったらガーデンプレイスに来ることもなくなるなあ、との感慨が多少ある。ま、ガーデンプレイスみたいな再開発商業ビルなんか興味ないんで、別にいいんだけど。
ついでに渋谷のシネセゾンも閉館だそうだ。まさに落日のミニシアター業界。
大資本のシネコンやTVもどきのアホ映画に押されて、東京ですら、マトモな映画館が存在できないということなんだろうか?そうなったらボクはどこに住んだらいいのだろう。



この映画、原題は『何でもアリ』ということを意味する『Whatever Works』
近作はヨーロッパで映画を撮っていたW・アレンが久々にNYを舞台にした作品。
かってはノーベル賞候補になったが、人嫌いで今は半隠遁生活を送っている老物理学者のところに、テキサスから家出してきた若い女の子が転がり込んでくる、そんな話だ。

昔みたいなW・アレン節が、今回は全開だ。老物理学者は全編に渡って徹底的に悪口雑言を並びたてる。相手が老人だろうと子供であろうとお構いなし。
親近感があるなあ(笑)。
W・アレンは、ブッシュもレーガンビリー・グラハム(TV伝道師、プロレスラーに非ず。IQは同じくらいかもしれないが)も、キリスト教原理主義者のことも、大嫌いなのは今更ながら良くわかった(笑)。勿論 ボクも大嫌いだ。

そういう連中が跋扈する、今のアメリカに嫌気が差して、アレンは活動の拠点をヨーロッパに移していたのだろうが、今の日本だって似たようなものだ。中国がどうのとか威勢のいい連中は、いまだに進化論を否定しているアメリカ南部の田舎者とあんまり脳味噌は変わらないのではないか。ま、脳味噌に問題あるのは我が国でも元市民運動家、改め、今やタダの権力亡者の菅直人みたいなのも居るわけだが。それにしてもこの1年での保守反動への鮮やかな転向ぶりはさすが、団塊世代だ。せめて四の五の言わず、さっさと失せろ。お願い(泣)


アレンはそういう連中も、そして自分も、マシンガン・トークで嘲り倒す。
主人公を演じるラリー・デヴィッドはコメディアンだそうだが、厭世観とユーモア、人情味がほどよくミックスされていてバランスがとてもよい。
若い女の子は一度は主人公と結婚するがハンサムな若い男の子と出来てしまい、テキサスから娘を追いかけてきた彼女の母親はNYでアートに目覚めた挙句に男二人と同棲を始め、彼女を追ってきたマッチョなテキサス親父は自分の深層心理に目覚め、男と出来てしまう。そして女の子に振られ絶望して飛び降り自殺を図った主人公は落下場所でぶつかった占い師と出来てしまってハッピーエンド、という結末は皮肉でヤケクソだけど、吹っ切れている。何よりも自分自身を笑い飛ばす過剰なシニカルさは見ている側をもハッピーにさせる。

傲慢にも、見る客を選ぶアレンの楽しげな悪口雑言は決して世の中に広く届くことはないだろう。でも少なくともボクは、見ていて楽しい。そういう人種はミニシアターの落日をみても既に少数派ってことだし、きっと ますます少数派になっていくだろう。


ま、いいっか(笑)。


落日でも、人生は笑い飛ばせる。
だって、『何でもアリ』なんだから(笑)。