特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

地中海とアフガン、2種類の青色:『ソシアリズム』と『ビン・ラディンを探せ』

2011年になった。寒いなあ(笑)。
いつも思うのだが、正月三が日くらい原則的に商店は休みにしたらどうか。新聞のチラシやTVのCMはデパートだの、商業施設だのの、宣伝で騒がしいばかりだ。要するにマスコミや大資本の商業主義がよってたかって、我々一般大衆(笑)からカネをむしりとろうとしているように見える。勿論そんな見え透いた宣伝に騙される方も悪いのだが、そうやって騙すほうも騙されるほうも疲弊していくんだよ。ま、正月は(も)、原則 家から一歩もでない、ボクには関係ないが。


日比谷でジャン・リュック・ゴダール『ソシアリズム』。
三部構成の最初は豪華客船でのアジアからヨーロッパへの地中海の船旅。ヨーロッパの発見なんだろうな。次にヨーロッパ、フランスでの片田舎での出来事。子供たちが被選挙権を主張する。子供たちが飼っていた犬をサルコジの替わりに、だったら最高なのに。最後はそれらの景色をまとめた総集編?
ゴダールたちの世代ならではなのか、ソヴィエトに対する幻滅が根深いことに改めて気がつく。エリック・ロメールの『三重スパイ』でも同じ事を感じたけど、ロメールはさすが年の功でゴダールより表現が大人かな(笑)。
客船の乗客でパティ・スミスとレニー・ケイが出演してるけど意味ないじゃん。不意に挿入される音響の効果と地中海の青色のコラボレーション。心地よいけれど、耽美的過ぎるようにも思える。画面は美しいので もう一回見てもいいかも。特にわざと粒子を荒くしたデジタル撮影で捉えられた地中海の青は忘れ難い。


渋谷のアップリンクで行われている日本未公開ドキュメンタリーを集めた『リアル!未公開映画祭』。webDICE - 『リアル!未公開映画祭』公式サイト | 2010年12月25日(土)より、渋谷アップリンクほか全国順次開催
その中からビン・ラディンを探せ!〜スパーロックがテロ最前線に突撃!〜』。
毎日マクドナルドだけを食い続けるとどうなるかを自分で人体実験した傑作ドキュメンタリー、『スーパーサイズ・ミー』のモーガン・スパーロック監督の新作。
今回はスパーロックが911の首謀者と言われるオサマ・ビン・ラディンを探して、エジプト、モロッコレバノンイスラエルサウジアラビアアフガニスタンパキスタンを数ヶ月掛けて巡る、というもの。

文字や情報で知っているつもりではいても、画面で見る各国の人々も街の様子も、とても新鮮だった。
エジプトやモロッコでインタビューを受ける人たちは日本のニュース番組でコメントしている(まともな)人と変わりはないし、ナチ国家イスラエルにも多少はまともな人間が居るのもわかった。彼は言う。『イスラエルパレスチナと和解するしか問題を解決する方法はない、しかし そのために時間がどれだけかかるのかが誰にもわからない』。
それでもイスラエルが今度は加害者として、ユダヤ強制収容所を現代に再現させた、鉄条網やバリケードで封鎖されたガザの様子は衝撃だし、『(先住のパレスチナの人を暴力で追い出す)入植は先祖伝来の土地を取り戻す正義の行動だ』と強弁するユダヤ入植者(若いねーちゃん)やユダヤ教原理主義者を見ると、やはり こいつらだけは一度 頭の上に原爆を落とさなければ物の道理がわからないのではないか、とも思う。
サウジアラビアの一部の金満振り、特に同国のコンツェルンビン・ラディングループの本社ビルの豪華さにはビックり。勿論 オサマはその一族で、要するにオサマ・ビン・ラディンも金持ちのドラ息子だってこと(笑)。

以前 海兵隊の精鋭部隊シールズの隊員が書いた『アフガン、たった一人の生還』でのアフガンの過酷さは驚きだったが、実際のアフガンの景色やビンラディンのアジト跡などは、フィルムで見てみないと絶対に判らなかった。険しく乾燥した、荒涼とした大地。何にもない土地の上に広がる、何もない青空。白々しいほど空虚だ。
更にスパーロックらが防弾チョッキをつけて米軍に同行取材したパキスタン国境の紛争地域の緊迫感は本当に凄い。
●凄いドキュメンタリーだが、ブッシュから勲章もらって喜んでる著者の発想は全く理解できない。

アフガン、たった一人の生還 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

アフガン、たった一人の生還 (亜紀書房翻訳ノンフィクション・シリーズ)

徒手空拳のスパーロックがここまでやれるのに、日本の大マスコミの記者連中はあまりにも酷いよな。日本のTVなんか、イラク戦争当時、現地でチェイニーの警備会社にびっちり周りを護衛された自衛隊(笑)に検閲を受けたフィルムしか流さなかったもんな。もちろん自衛隊を護衛する(笑)チェイニーの会社の警備員も写らなかったし。
スパーロックですら危険すぎて潜入を断念したペシャワールで、今も日本の医師 中村哲氏が頑張っているのだから、そのことだけでも、もっと報道すればよいのだ。北朝鮮で何かあるたんびに、●●家○会のイカれたコメントなんか流してる場合じゃないだろ(笑)。
ついでに、あっちへ派遣された自衛隊員で国会議員になった奴もいるみたいだが、お前らは独禁法違反の『暴力装置』(笑)の癖に、税金でアメリカの会社に護衛されていただけでなく、現地では某商社に上半身から下半身まで何から何まで『お世話』されてたんだから、『偉そうにするな』と言いたい。


話が、だいぶ横道にそれてしまった(笑)。
この映画の、最初はユーモラスに柔らかく、段々とシリアスになっていく展開は最初から最後まで目が離せない。この正月にもナイジェリアやエジプトの自爆テロのニュースが流れていたが、相手を一方的に悪と決め付けていては問題は絶対に解決しないだろう。この映画でエジプトの人が言っていたように、どちらも『憎しみの種をまいているだけ』なのだから。
エンドロールで不意にエルヴィス・コステロ&アトラクションズの『(What's So Funny 'Bout)Peace,Love And Understanding』が流れて、思わず涙がこぼれる。何でこんな面白い映画が未公開なの?