特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

【2010年を振り返って(2)】コトバの価値:凛として時雨@お台場クライシス

先日 仕事で某新聞(5大紙)の記者に取材を受けた際、こんな話を聴いた。
『(今年は明るい風潮にしたいから)紙面は明るい記事7割、暗い記事3割くらいの配分で行け、という指示が、年初に編集長から出ていた』
ちょっと驚きは、する。これを、マスコミの世論操作とか(笑)、陰謀だ、とか、言い切るのは簡単だが、よく考えれば誰が編集長でも、やっぱりそれくらいのディレクション/方向付けは当然、するだろう。
だから まともな大人なら、その程度のことは考えながらマスコミの言っていることを受止めるのは当然。真に受けるほうが悪い。
ま、こうやって年末を迎えてみると、その編集長の年初の指示は効果があったのか疑問だが(笑)。
そういうことも含めて、コトバって、きっとそういうもんなんだ。



新木場で『お台場クライシス』
凛として時雨』、『ミドリ』、『9mm Parabellum Bullet』の3つのバンドが対バンするギグ。
寒空の中、会場外の入場待ちの行列は半袖Tシャツに大判のタオル、という服装が主流。若いなあ(笑)。カップルの声が何となく聞こえてきて、こういうイベントにデートで来ている子たちもいることに改めて気がついた。ボクなんかデートなんて言葉は最早 死語だもんなあ。すごく新鮮だった(笑)。


2番目に登場した『ミドリ』は一度見てみたかったバンド。
阪神タイガースの歌?(六甲おろし?)に乗ってメンバーが舞台に登場。
ドラムス、ウッドベース、ピアノのジャズトリオに、セーラー服に轟音ギターの女性ヴォーカル、後藤まりこが格闘を挑む。
一曲目から、モニターを踏みつける太股を露にして、いきなり『デストロ〜イ』の絶叫。
笑ってしまう。この臆面のなさは素敵(笑)。
演奏はとてもうまいが音楽は単調なんで、多少飽きる。大阪のおばちゃんみたいな歌詞は、狙いすぎていてあんまり面白くない。
でも、いいバンドだと思ったし、特にラテンまで取り入れたインプロヴィゼーション部分は結構好き。フリージャズっぽい部分はちょっとキャプテン・ビーフハートみたいだった(彼の逝去をVergil2010さんのブログを読んで始めて知った。教えてくれてありがとう)。ダイブした彼女は流血していたのかな。
●解散しちゃったの?

あらためまして、はじめまして、ミドリです。

あらためまして、はじめまして、ミドリです。


凛として時雨はトップバッター。

<セットリスト>
1.JPOP Xfile
2.Telecastic fake show
3.I was music
4.DISCO FLIGHT
5.想像のSecurity
6.illusion is mine
7.nakano kill you
8.感覚UFO

先月のギグでも感じたが、ヴォーカルの二人、特に345は声が良く出るようになった。ツアーの成果だとおもうが、時雨が歌バンドであることが強調されるのは大歓迎。轟音+ポップなメロディ+ツインボーカル、というバンドのユニークさがより一層引きたつからだ。

だが。
その日 時雨を聞いて思ったのは、コトバなんか意味がない、ってこと。

いつも書いているように『凛として時雨』の歌詞はネガティブなフレーズのオンパレードだ。『死にたい』、『壊れる』、『刺す』、『消えたい』、『判らなくなった』- - -
ボクはその歌詞に共感する。今の気分にぴったりだから。

だが誰のコトバであろうと、それだけでは説得力は感じない。ましてTKのファルセットのヴォーカルは、時には他人の感情移入を避けるようにヒステリックすら聞こえるから、尚更、だ。
そこに耳が痛くなるような轟音が絡まってくる。だからコトバに込められた痛みにリアル感が、ある。


ニューウェイヴ以降のバンドらしく時雨の音楽は間奏はとても短い。
だが殆どの時間 TKは客席と視線も合わせず、俯いてテレキャスターを弾きまくっている。コミュニケーション不全というのではない。きっと本当に大事なことはコトバでは伝わらない、ということなのだ。



ここ数年、他人に向かってあんまりツベコベ言っても仕方がない、と感じることが良くある。
それは、ボンクラの自分が他人に話すことなど特にない、と思うからだ。何か他人に話すような価値があるようなことなど、ない。
それに、どうせコトバでは他人に意志は通じない。良くも悪くも、他人には他人のことはわからない。
そんなことより、今 ここにあるという自分の感覚、実存感がボクにとっては大事だ。将来にぼんやりとした不安がある、混沌とした昨今、そういうことをますます強く感じるようになった。

時折、ステージでTKの甲高い絶叫がテレキャスターのフィードバックとシンクロする。それが『凛として時雨』の音楽のもっとも美しい刹那の瞬間。



今回のステージはミドリも時雨も、ショーケースという感じのそれぞれ40分のステージ。最後の9mmも見てみたかったけど、疲れたので帰る。平日は10時くらいには寝たいのだ。
特に冬場は早く寝るに限る(笑)。