特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

凛として時雨αβ+1ツアーファイナル@恵比寿リキッドルーム

厚生労働省の調査で、10月1日現在 来年卒業する大学生の内定率が約60%だったことが連日報じられている。平成23年度「大学等卒業予定者の就職内定状況調査」 |報道発表資料|厚生労働省
今日のNHK7時のニュースでも就職情報を提供する業者のサイトに学生のアクセスが殺到してダウンしたのをトップで取り上げていた。ところが同じ調査で内定率が昨年に比べて2ポイント改善していることや昨年も10月には58%だった内定率が4月には91%に上がっていることは報じない。大変厳しい状況であることは間違いないけれど、そうやってセンセーショナルに煽るマスコミが若い人の不安を過度に増大させていることも、そして就職にたかる業者がそれを利用して派手に商売していることも間違いない。
前にも引用したアメリカの前労働長官ロバート・ライシュの近著『余震(アフターショック)』で『アメリカや日本のような富裕国では、これからは僅か2種類の職種しか成り立たない。一つは小売、レストランなどの個人的サービス、もう一つは金融、経営、先端技術など複雑な高度サービスの2つだけだ。』とあったのは衝撃的だった。原発があろうとなかろうとグローバリゼーションで企業は海外へ出て行くし、確かに現実はそうなりつつある。
内定率がどう、とか就職人気ランキングがどう、とかくだらないことを言っている場合ではないのは間違いない。今も現実に人気ランキング上位の大企業が密かにファンドに身売りしようとしていたりする、のだ。

余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる

余震(アフターショック) そして中間層がいなくなる



恵比寿で凛として時雨 αβ+1ツアーファイナル』
ツアーのファイナルということでライブハウスの入り口には生花が飾られている。中へ入ると時雨Tシャツを着た男女が前のほうでひしめいている。ああ、客層が若い(泣)。平日の6時過ぎにスーツ着て並んでいると、なんとなく自分が世の中の落ちこぼれになったような気もするが、まあいい(笑)。50歳になっても60歳になっても並んでやるぜ。そのために会社では体力を温存しているのだ(笑)。

凛として時雨』という奇妙な名前のロックバンドはギター、ベース、ドラムの男女ツインヴォーカルという構成。音楽としては轟音+プログレ+音響系+親しみやすいメロディ、と表現すればいいのだろうか。 7時きっかりに演奏が始まる

<セットリスト>
1.nakano kill you
2.想像のSecurity
3.COOL J
4.DISCO FLIGHT
5.I was music
6.knife vacation
7.a synmmetry
8.テレキャスターの真実
9.ハカイヨノユメ
10.新曲
11.Illusion is mine

ピエール中野の弾き語り(嵐、湘南の風)、MC、ドラムソロ

12.夕景
13.JPOP XFILE
14.TELECASTIC FAKE SHOW
15.感覚UFO

345の物販コーナー

16.傍観

演奏を一聴して思ったのは『あ、今日は音が聞こえる』(笑)。 7月の東京国際フォーラム、9月の水道橋JTBホール、どちらも音がつぶれて酷かったので、意外な感じ。この日は各楽器の音がちゃんと分離して聞こえたし、特にヴォーカルが強めだったのもGOOD。

演奏は2曲目くらいまではドラムが不安定だったが、次第にエンジンがかかりだす。 前半の山は『KNIFE VACATION』から『a symmetry』あたりだったろうか。 照明も曲に合わせてスポットやフラッシュがびしびし決まり、大変効果的。
最近あまり演奏されていない『KNIFE VACATION』は個人的には時雨で一番好きな曲なので、やっと聞くことができて嬉しかった。この曲の終盤、内省的な歌詞にたくましい女声と男声ファルセット、それにギャングオブフォーみたいな、つんのめるような激しいベースが絡んでいくところは、まるでまっさかさまに谷底へ転落していくようなスリルに溢れていた。

激しいギターカッティングから始まる新曲は構成は複雑だけど、ポップで中々良い。 後半の『TELECASTIC FAKE SHOW』から『感覚UFO』へとつながる流れも聞き物だった。
最後は『傍観』。ベースを弾く女性、345が絶叫して楽器を置くと、それを引き継ぐようにフィードバックの轟音の中でギターのTKが『(ボクは)死にたい、汚い、消えたい』の絶叫15連発。数は推定(笑)。今の時代に他に言うべきことなんかあるのか、と思わせるような説得力がある。しかし 若い諸君はこれをどういう気持ちで聞いているのだろうか(笑)。

全国ツアーのファイナルだけあって、演奏も安定して完成度の高いギグだったし、なんだかんだ言ってボクには今まででベストの時雨の演奏だった。スローな曲を挟んで構成にメリハリをつけたり、東京国際フォーラムでやったアコギの弾き語りみたいな新しい試みもやってくれればもっと良かったかな。

この日の感想はこう。『時雨はやっぱりできる子じゃん(笑)』。これから、もっとできるよ。