特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『オバマ氏のさよならスピーチ』と読書『最後の資本主義』、それに『0113再稼働反対!首相官邸前抗議』

8日のゴールデングローブ賞でのメリル・ストリープのスピーチ【緊急全訳】メリル・ストリープのゴールデン・グローブスピーチ | クーリエ・ジャポンかっこよかったです!。トランプが選挙期間中 身体障碍がある記者をバカにしたことに抗議しながら、沈黙しているマスコミを叱咤し、更に我々の社会の多様性を擁護する見事なものでした。

「権力者が地位を利用していじめをすると、全員が負ける」ストリープさん、トランプ氏を批判【全訳】
が、10日のオバマ氏のさよなら演説はもっと感動しました。

CNN.co.jp : 「未来に希望を」 オバマ大統領、地元シカゴでお別れ演説 - (1/3)
●全文⇒【全文】オバマ大統領、任期最後の演説「あなたたちが私をよい大統領にしてくれた」 - ログミー[o_O]
                                             
彼が演説で言っていた通り、8年間の実績は目覚ましいものです。100年に1度と言われた経済危機であるリーマン・ショック10%にもなっていた失業率を5%にまで下げ2000万人に医療保険を導入し、イラクから撤兵し、50年ぶりにキューバと国交を再開し、全ての人に結婚の自由を認めた同性婚)。ぐちゃぐちゃ言ってる奴はいるけど、成し遂げた事実だけを見てみれば偉大としか言いようがありません。判らない奴はアホでしょ。そもそも彼が成し遂げたイランとの核合意がなければ、マジで核戦争になったかもしれないんですよ!イスラエルはイランとの戦争を狙ってたんですから。最悪の場合 第3次世界大戦になったかもしれない。こちらの方こそ、まさにノーベル平和賞に値すると思います。
                                                         

もちろんシリアやウクライナなどの外交問題はうまくいかなかったし、それに国内の格差の拡大を防ぐことはできなかったし、人種差別は未だに残っている。けれど人間には、一歩一歩よりマシな方向へ歩んでいくことしかできません。シリアは失敗だろうけど、じゃあ、アメリカ軍がシリアに攻め込めば良かったのか、というと、それは断言できないでしょ。金融規制も手ぬるかったけど、あんな経済危機の時ですから安全運転はしかたない。人間には出来ないことってありますよ。ああいう優秀な指導者が、しかもマイノリティから出てくるアメリカ社会の流動性は素晴らしいと思います。もちろん、その反面 信じられないくらい酷い奴も出てくるわけですが。


                                              
オバマ氏の演説で最も素晴らしかったのは民主主義は『変化は市井の人々がかかわり、参加し、一丸となってそれを望んだ時に初めて起きる。』と、我々1人1人が参加していくことが最も大事である、と強調していたところです。
アメリカ合衆国憲法は、驚嘆すべき、すばらしい贈り物です。しかし、一束の証書にすぎません。それ自体に力はないのです。力を与えるのは、我々市民であり、参加し、選択することによりそうなるのです。』
日本国憲法だってまさにそう。『九条守れ』とお経を唱えてるだけじゃ全然ダメでしょ(笑)。九条をどう使うかを考えなくちゃ。
                     
彼は『前へ2歩進むごとに1歩下がっているように感じることもある』と言ってました。現実にはスーパーマンなんかいません。どこかに欠点がある一人の人間しか世の中にはいないわけです。だからこそ自由とか平等といった理想を掲げることが大事なんでしょう。できないからこそ掲げる必要があるんです。彼のやってきたことを振り返って、理想というものはやはりこの世に存在する、と思いました。あとは、彼のように、理想を掲げて少しずつでも世の中を変えようとする人が何人出るか、と言うことなんでしょう。日本も一緒ですよね。

Yes We did.Yes We Can』と演説を終えた後、社会の多様性をテーマにしたブルース・スプリングスティーンの名曲『Land of Hope and Dreams』が会場に流れる中、オバマ氏が家族と抱き合う姿にはボクも涙が出ました。
●スピーチ

●Land of Hope and Dreams

                                           
さてオバマ氏と同じように『変化は市井の人々が政治に関わり、参加したときに始めて起きる』と述べているのが、昨年12月に出たロバート・ライシュ先生の新刊『最後の資本主義』(Saving Capitalism)。

最後の資本主義

最後の資本主義

よりふさわしい邦題は原題通り『資本主義を救うには!』ですね。トランプ当選以前、2015年に発売された本です。ですが、内容は今にピッタリの本でした。
いつも書いている通り、筆者はUCLAバークレーの教授、クリントン政権の元労働長官です。昨年10月に3回にわたって放送されたのNHKスペシャル『マネー・ワールド 資本主義の未来』にも出演してコメントをしていました。TV『マネー・ワールド 資本主義の未来』と読書『抗うニュースキャスター』、不覚にも胸が熱くなる(笑)映画『SCOOP!』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
昨年の大統領選で、クリントンの同窓生で元閣僚の彼が、泡沫候補と思われていたサンダース議員の支援に回ったことは民主党の中でも衝撃を与えたようで、それ以降のサンダース氏の躍進の一因にもなりました。そういう人です。

                      
まず、ライシュ先生は自分は資本主義を支持していると言います。欠陥だらけとは言え、我々の社会を運営するやり方としては今のところ資本主義しかない。しかし 今はその資本主義が危機に瀕している、とライシュ先生は指摘しています。それは市場を構成するメカニズム自体が富裕層に有利なように出来ているからです。
具体的には『所有権』(著作権や特許の過度な延長など)、『独占』(マイクロソフトやグーグル、モンサント、ウォ―ル街など)、『契約』(株の超高速取引やインサイダー取引など)、『倒産(法制)』(トランプは破産しても逃げられるが、住宅ローンを抱えている人は破産できない)、『 (法の)執行』(GEやモンサントなどの大企業やウォ―ル街に規制当局が骨抜きにされていることなど)、5つの要素を挙げています。
                                              
例えば、先生はこんなことを挙げています。
アメリカでも日本でも、銀行や大企業が経営危機に陥れば、なんだかんだ言って税金で救済されます。しかし奨学金ローンで苦しむ学生は税金で救済されることなんかありませんそれってルール自体が間違っているんじゃないでしょうか? 
福島で使われていたMK1型原子炉は80年代には米原子力規制委員会には危険なことが判っていました。しかしGEの影響力の前には規制委員会は改善要求ができなかった。法律があっても執行が出来ないわけです。これは社会の仕組みがどこかおかしいんじゃないでしょうか??


では、なぜ、そのようなことが起きたのでしょうか。
1つは『技術革新』による富の上位集中・中産階級の没落です。ITやネットに代表される技術の高度化は多くの職を自動化したり、海外生産を可能にしました。今や海外の工場の状況を日本の本部でモニターできる時代です。頭が悪い左派の多くは技術革新を無視しがちですが、この影響は大きいですよ。これから、ますます大きくなるでしょう。ある職場が海外移転するのではなく、職業自体がAIやロボットにどんどん置き換えられていくわけですから。このこと一つとってもトランプが言ってることなんか全くあほらしいのがわかります。今朝もアマゾンがアメリカで10万人雇用っていってたけどアマゾンも米で雇用アピール、「矛」収めたベゾス氏 :日本経済新聞、全部 超低賃金の職種、コンピュータの指示に従って人間が倉庫で作業する仕事、人間がコンピューターの下請けをするって仕事でしょ。マスコミは指摘しないけど、そんな雇用でいいわけないじゃん。

                               
もう1つはライシュ先生言うところの『拮抗勢力』の衰退です。かっては多くの人が何らかの集団、具体的には労組や地域のコミュニティや在郷軍人会などに属しており、一般人もそれなりに政治的な影響力を持っていました。ところが今は労組や地域のコミュニティーは衰退して、個人がばらばらになっている。衰退の理由は80年代以降 経済的不安定さが増して多くの人がそのような集団に参加している余裕がなくなってしまったから。加えて、政治への無関心さも広がっています。これらのことは日本とも共通しています。

大企業や大富豪は政治献金やマスコミを使って政治家や役人に影響力を及ぼすことができますが、個人の側は政治的影響力は減る一方、それが社会のルールが大企業や大富豪に有利なように出来てしまっている原因、とライシュ先生は指摘しています。


                              
どうしたらいいのでしょうか。ライシュ先生は『もはや右とか左とかの対立は問題ではない』と言います。問題なのは『相対的に貧困となり経済的に不安定な立場に立たされている多くの人のための政府』『少数の富裕層を更に豊かにするための政府』かだ、というのです。

そう考えれば一般に右派と言われる人々、中小企業経営者、個人投資家、農民、労働者階級働く女性、マイノリティ、都市に住む専門職など一般に左派と言われる人たちと実は利益は一致します。ルーズヴェルト大統領の支持母体となったニューディール連合のような新たな政治勢力を作れるかもしれません。ライシュ先生はランド・ポールのようなリバタリアンジョン・マケインのようなタカ派ウォール街規制に賛成していることを挙げながら、今後 米国政治の対立軸が『民主党共和党か』ではなく、『ゲームがいかさまであると信じる中間層/労働者層/貧困層と、いかさまを行っている大企業幹部/ウォール街/億万長者』になるだろうと述べています。

                                  
この本での結論は、『民主主義と経済を取り戻すための唯一の方法は大多数が再び政治に対して積極的になり、新たな拮抗力を打ち立てること』、そして『自分たちの声と活力と投票権を活かして経済と政治に対する支配権を奪い返すこと』です。なによりも重要な指摘は、金持ちが悪意を持っているかどうかではなく、社会の仕組みの問題である、というところだと思います。
その上で、政治とカネとの癒着を断ち切る(政治資金を透明化する)、企業を株主万能主義から、社会の利益をも考慮するベネフィット・コーポレーションなど、従業員、株主、社会などステイクホルダーの利害を考慮する資本主義に変革する、人々が技術革新についていけるよう教育を強化する、ベーシックインカム導入、などの改革を提唱しています。


                                
内容紹介が長くなりました。ライシュ氏が言ってることに基本的にはやっぱりボクも賛成です。今の世の中は金持ち(資本)が有利なように出来ていること右とか左の対立なんてもはや意味がなくて真の問題は1%と99%の対立であること技術革新への対応をしていかなければならないこと、全くその通りだと思います。

だけど、そのためには今の世の中のルールを勉強しなくちゃならない(笑)。今の世の中は複雑になり過ぎていて、思考停止したバカには改革できない。その良い例が、苦しむ労働者が大富豪ばかりのトランプ政権に投票して自分の首を絞める、という今回の悲喜劇です。小泉改革のB層や橋下に投票した連中も同じ(笑)。

                            

残念ながらこの本は最後の『じゃあ、どうする』という点は若干 薄いと思います。政治に興味ない人をどうやって立ち上がらせるか、なんて誰にも判るわけありません。でも、この本に価値があると思うのは、述べられている分析も結論も納得できる、というところです。世の中を変えるためにはまず、世の中の構造を理解しなくてはなりません。今やライシュ先生もピケティもクルーグマンジャック・アタリも世の中の構造に関する問題意識はほぼ一緒、と言っても良い。
                                                   
特に今の世の中は1%の側に有利なように出来ている、このことは日本でもあまり理解されていないと思います。消費税を導入してお金持ちの所得税率を下げたのが良い例で、80年代以降、ずっとお金持ち優先の方向へ社会のルールが捻じ曲げられてきた。でも、それを指摘するマスコミなんかいませんよね。規制に守られた彼らも高額所得者だから(笑)。逆に大きな政府とか小さな政府とか、役人や外国人、それに生活保護受給者への敵愾心を煽って論点を誤魔化している。その結果、バカな貧乏人ほど『自己責任』とか『構造改革』、『国益』とか言いだす悲喜劇が日本でも生まれている(笑)。小泉郵政改革が良い例で、構造改革』は既得権益を引きはがすかもしれないが、それを懐に入れるのは別の既得権者です。それに指導者層の『国益』にはお前らの利益は入ってねーよって(笑)。沖縄や福島の事を見れば一目瞭然でしょ。だけど、日本は経営者の所得1つとっても英米、下手すれば新興国より低いです。英米に比べれば、日本は遥かにステイクホルダー資本主義の色彩は濃いですから、救いは無いわけではない。思考停止したバカ左翼やネトウヨには判らないでしょうけど(笑)。


それを何とかするためには、一人一人が政治参加していかなくちゃならない。お金持ちの側はお金でマスコミを使えるわけですから。マスコミだって企業なんだから、それは仕方がない。だったらライシュ先生が言うように、『我々は自分たちが得意なこと=声と活力と投票権、を活かすしかない』わけです。勿論、そこにあるポピュリズムというアホの罠には注意しなければいけないんですが。
この本は、複雑だが不平等な今の世の中の仕組みを解きほぐすために非常に有益だ、とボクは思います。それにしても、昔はアメリカのこういう本を読むと『まだ日本の方がマシ』と思ったのですが、この1,2年は『日本と同じじゃん』と思うことばっかりです! もっと得られることがないか、この本はもう2、3回読んでみようと思っています。




と、いうことで、今週も官邸前抗議へ。
今日の午後6時の気温は8度。やはり寒いです。参加者は主催者発表で800人。

●抗議風景




島根原発2号機の配管に腐食による穴が多数見つかったというニュースも驚きましたがhttp://www.asahi.com/articles/ASK1C41MQK1CULBJ004.html
今週11日 台湾では2025年の脱原発を定めた法律が国会を通りました

台湾、脱原発へ前進 再生エネ自由化法案が可決 :日本経済新聞

この法律は、再生可能エネルギーによる電力の売買を自由化し、原発の代替を図るものだそうです。25年に脱原発をすることが明記されています。台湾も日本も島国で地震が多い国、原発を置くには無理があることは共通しています。どちらも資源がない国ですが、それでも原発を止めたほうが良いと台湾が判断したのは当然だと思います。6兆円も自然エネルギーに投資するそうですから技術開発も進むし、その分野でも雇用も生まれるでしょう。台湾は賢い(笑)。
●金曜日の月

だけど、違う面からも学ぶべき点があると思います。本当に今すぐ原発を止められるのか、という問題です。日本で原発に反対している人の多くは『即時廃止』と唱えています。電力需要の面では大丈夫でしょう。でも簿価で5兆円もの原発や核燃料をどうするのか、補助金乞食の原発立地をどうするのか、そういうことまで議論した上での話は聴いたことがありません普通に考えたら、原発を止めるにしても台湾のように10年かける、というのがまともな発想だと思います。

                                 
ボクは原発は反対ですけど、思考力を欠いた一部の反対派の人たちも困ったものだと思っています(笑)。原発に反対する側こそ、レベルアップが必要です。安倍晋三も電力会社もふざけているとは思うけど、反対する側の脳味噌がこれじゃ、まともな人はついていけないでしょ(笑)。他人は変えられないから仕方ないけど、日本の脱原発の道はそういう面からもまだまだ遠いかもしれません(笑)。でもオバマ氏が示してくれたように 世の中は一歩ずつしか変わらないのだと思います。
●それでも安倍晋三には福祉や奨学金に使う金は無いわけです。