特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

日本解散と「50歳の恋愛白書」

 鳩山政権も支持率が30%台に落ち込んだそうで、それ自体は驚くには値しない。民主党だって二世議員ばかりの第2自民党だ。それでも所得税の累進性強化や夫婦別姓など尤もなことが議論のとば口にたつようになっただけでも良かったと思うし、そもそも景気対策も外交も自民党のほうがマシだった、というわけではない。ましてや、いつも物欲しげな舛添だの、何が言いたいのかさっぱりわからない渡辺喜美だの、何がやりたいのかこれまたさっぱりわからない河野太郎だのは論外だろう。
だいたい政治家のクビを挿げ替えて問題解決、という他力本願の発想自体が間違い。政治家なんて、ある程度は国民のレベルに比例しているのだから。
 ただし小泉以来 政治がまったく機能しないどころか、国民の足を引張りまくっている、この現実ががっくりくることだけは確かだ。それだったらアメリカにでも入れてもらったほうがマシだって。日本人が小銭持っているうちに、日本なんて国は、さっさと解散してアメリカの51番目の州に入れてもらえばいいじゃないか。オリンピック招致と売国党宣言 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)
 そのアメリカのアカデミー賞ハート・ロッカー」が受賞だそうで、アカデミー側も意地を見せたというか、良かったというか。日本でのロードショー上映はあっさり終わってしまいそうな雰囲気だったが、これで延命されるだろう。

 そして同じくロードショーがあっさり終わってしまいそうな、『50歳の恋愛白書』@有楽町。原題は「The Private Lives of Pippa Lee」
この邦題酷い。おまけに劇場では1日たった二回の上映という可哀想な扱いだ。確かにインディの作品だが、超豪華な配役と人間の心の動きを丹念に描く良質な脚本に裏打ちされた映画なのに。
 監督は作家のアーサー・ミラーの娘というレベッカ・ミラー。主人公役はロビン・ライト・ペンショーン・ペンの元奥さん)で、その他の出演もキアヌ・リーブスウィノナ・ライダージュリアン・ムーアモニカ・ベルッチと目も眩むばかりだ。
 簡単に言うと約20年近く年上の男性と結婚していた50歳の女性が、伴侶の死をきっかけに新たな人生の一歩を歩みだすという、そんな話だ。
ロビン・ライト・ペンという女優さんは美人だがいまいち個性が薄い、という印象がある。超個性的な旦那と比較されるというのもあるだろう。しかし 今回ははまり役だ。
シニアの女性が若い男性と恋に落ちるという設定は『恋愛適齢期』に似ている。しかも相手役も同じキアヌ・リーブス。ただ こちらの方が主人公の造形は複雑で内省的だ。
 年が離れた彼女の夫は出版業界で成功し、今は二人で優雅な隠居生活を始めようとしている。彼女自身も知的で家事もバッチリ、絵に描いたような良妻だ。おまけにニットのセーターを羽織った姿は輝くばかりに美しい。だが彼女には裏の面があった。自分でも意識できない、夢遊病にかかっており無意識に台所で食べ物をむさぼったりしている。かってヤク中の母親に育てられるのを拒否して家出するが、自分もヤク中になった。そんな過去を持つ彼女は結婚して子供にも恵まれた今でも、自分を受け入れることができない。
戯画的ではあるけれど、僕には共感が持てる人物像だった。それをロビン・ライト・ペンは表情の動きまでゆっくりと、丁寧に演じている。彼女の優等生的なイメージは役柄と重なっていて、演技に説得力が増している。ただベッドシーンまで思慮深げ?に見えたのは、これは『恋愛適齢期』でダイアン・キートンが同じキアヌ相手に演じた、目が覚めるように鮮やかな60代女性のベッドシーンに負けたかな(笑)。
 新しい出発を選んだ主人公は、今度こそ自分を受け入れることができるのだろうか。そんなことを考えていると、いつの間にか画面には荒野に続く一本道が広がっている。そしてルシンダ・ウィリアムズ姉御の『I Lost It.』が流れてきて映画は終わる。
これがまた、見事なほど映画にがっちり嵌っている。ギターを抱えてシャウトしている姿が目に浮かぶような、パンチが効きまくって痛快なヴォーカルはこの映画のために取り直したのか、オリジナルが入っていた名盤「Car Wheels on a Gravel Road」とはテイクが違うようだ。

Car Wheels on a Gravel Road

Car Wheels on a Gravel Road

決まりすぎ。かっこ良すぎる。

「The Private Lives of Pippa Lee」はシリアスさと娯楽性のバランスが絶妙で、このまま埋もれてしまうのが勿体無い佳作だった。