特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

地獄よりも残酷な地獄:ハート・ロッカー

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相変わらず、この六本木のシネコンがある再開発ビルは金儲け市場主義でトコトン、下品だ。おまけに入場すればポップコーン臭いは、おしゃべりはうるさいはで、要するに六本木ヒルズとその客層の知能指数の低さにつくづく辟易する。行く度に不愉快になるが、ついつい,家からの近さに負けてしまう。
 この映画はイラク戦争に派遣された米軍の、爆弾処理兵の話、だ。
冒頭に「War Is A Drag.」という台詞がでてくる。この映画で描かれている殆どのことが、この台詞で表現されているといっても良い。
 爆弾処理と言っても土に埋めたものもあれば、車に仕掛けたもの、死体に仕掛けたもの、人間にくくりつけたもの、まで様々だ。イラクの人々の反感に囲まれながら、爆弾処理班は毎日、それを処理しなければならない。ミスったり、運が悪かったら、あの世行き。今のアメリカ軍、特に将校ではなく一般兵士は、金銭的に困っている人でその多くが構成されているという。だが、いくら兵士とはいえ、これが人間が携わる「仕事」だろうか?しかも彼らが任務をうまく果たしても、イラク人からもアメリカ人からも殆ど評価されない。彼らは何のために命をかけているのだろうか。そして、どんな理由があろうと、こんなバカな行為を、愚かな戦争を、正当化できるのだろうか?
兵士たちは当然 刺激に頼るようになる、アルコール、スリル、残虐性、etc。
かってはベトナム、今はイラクやアフガンに派遣された兵士の多くが精神的外傷を抱えて社会に復帰できないということがよく言われているが、確かにそのとおりだと思う。戦後のドサクサに紛れて殆ど語られていないが太平洋戦争から復員した日本兵だって実はそうだったのではないか。こんな緊張を強いられてマトモでいられる人間のほうが少ないだろう。世界中に嘘をついて戦争を始めたブッシュ、それに加担したブレア、小泉、こいつらには絶対に、この兵士たちのような爆弾処理をやらせるべきだ、1日だけでも良いから。
そう思わせるほど、キャスリン・ビグロー監督が描く画面は文字通り、緊迫感が溢れている。兵士たちの日々のエピソードを積み重ねる中でリアルさを強調しつつ、スローモーションや長回しを使っての演出=フィクションは本当に効果的だ。淡々とそれを見せる手腕はイーストウッドのようでもある。
 しかし その緊張感は正直言って見ていて気持ちが悪くなった。その日の朝は二日酔いだったせいもある(笑)。
 この監督の「ハート・ブルー」、「ピース・キーパー」は大好きだったので今回のアカデミー受賞は良かったと思う。ついでに女性初の監督賞受賞、なんて時代錯誤なキャッチフレーズは聞きたくも無い。が、戦場の地獄をそのまま描いた(だけ)の、この作品が今 アカデミー賞に選ばれた、というのは一体 何なんだろうか。ここにあるのは地獄のような戦場、そしてもっと残酷な、その地獄から逃れられないという現実の地獄だ。この戦争でアメリカ社会が背負ったトラウマは日本にいるボクラが想像している以上に酷いのではないだろうか?
もちろん、それはアメリカ人の自業自得、それこそ、自己責任だ。石油会社や軍需会社などの大企業の手先の政治屋に投票したのは彼らだ。FOX TVなど戦争を煽るマスコミに騙されたのは彼らだ。
だが世の中は自己責任論だけで片付けられるほど単純にはできていない往々にして、他人の不幸は自分にも降りかかってくるものなのだ。