特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

演奏はよりパワフルに、歌はより下手に(笑):ムーンライダーズ

水道橋でムーンライダーズのギグ『Tokyo,Osaka 7』
その日は東京フィルメックスロウ・イエ監督『SPRING FEVER』の上映と被ってしまったが先約のこっちをとったのだ。
 メンバーはバックステージから登場し、観客席近くに立って、まずアコースティックセットで3曲くらい。そのあとは新作を中心にしたエレクトリックセットの本編、そして最後はアコースティックセットで会場を退場していく、という凝った構成だった。
今回はライダーズ初体験の友人を連れていったのだが、登場したメンバーが白髪ぞろいで度肝を抜かれたようだった。岡田徹氏が『メンバーも還暦が半分』と言ってたな。それでいて、あんな演奏が出来るんだから凄い。
 数年前の30周年コンサートでも思ったのだが、ライブでのライダーズの演奏は益々うまくなっているのではないだろうか。メンバーそれぞれのテクとかじゃなくてバンドとしてのアンサンブルが凄いということだ。もともとねじ曲がってひねくれきった曲(笑)を緩急を超複雑に織り交ぜ、それを何事もないように平然と演奏する力量はまったく普通ではない。近年はかしぶち氏の体調のこともあってツインドラムにしているのかもしれないが、それもライブでは迫力を増す効果を出していると思う。それに鈴木博文氏のベースも一段とパワフルになっている。
 あと、鈴木慶一氏は歌が一段と下手になったのではないか(笑)。その日は体調が悪かったのかもしれないが、キーは外すし声も殆どでてない。今回は珍しく慶一氏がリードギターを弾く姿が見られたのだが、そっちは案外うまくて驚いた。次回は歌のほうの練習もやっておいてもらいたい(笑)。
 選曲は当然 新作『TOKYO 7』のものが中心。『TOKYO7』は名曲がなかった近年のライダーズの作品のなかでは、メロディが良い曲が多く中々気に入っている。2000年代のオリジナル作品では一番の充実作だと思う。

Tokyo7

Tokyo7

他には慶一氏も自分で『ライブでやるのは珍しい』といっていた『まぼろしの街角』。まるで扉を閉じたような、自閉しているかのような前半の歌唱は岡田氏のボコーダーに置き換えられていた。それが一転するサビの部分の突き抜けたところはまさにライダーズの真骨頂。涙が出そうになった。この日一番の収穫だった。
 アンコールは『Frou frou』、ハードにアレンジされた『冷えたビールがないなんて』、『Damn Moonriders』。『冷えたビール』も『Damn』もあまり好きな曲ではないので、個人的には最後にちょっと盛り下がった。慶一氏は『Damn Moonriders』と雄たけびを挙げたあと『なんて酷いことを言うんだ』と言いながらステージを去っていった(笑)。相変わらずだよな。
 ムーンライダーズは30周年コンサート以来ご無沙汰していたのだが、今回はやっぱりいいな、と改めて思った。メンバーが爺さんだらけになって、一層演奏がパワフルになってくバンドなんてまったく異常、としか言いようがない(笑)。世の中にはそういうこともあるということを教えてもらえるなんて、高校生のときからムーンライダーズのファンでいて良かった。