特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『日本の外交』(BS-TBS『報道1930』)と『moonriders アンコールLIVE マニア・マニエラ+青空百景』

 今年もあと、僅か。寒いですねー。昨日はクリスマス、と思ったら、今日はもうスーパーの前に門松が飾られています。


 
 先週12月20日BS-TBS報道1930』は『日本の外交』を取り上げた大変充実した特集でした。


bs.tbs.co.jp

 政府は安保政策を転換すると言ってますが(表面的には言ってないですが)、『平和を守るためには軍事力ではなく外交で』とは、誰もが思うことです。

 しかし護憲リベラル派の人たちが典型で、『実際に日本の外交がどうなっているか』という、きちんとした議論は聞いたことがありません。軍備強化に反対はするけれど、外交を具体的にどうするか、なんて話は聞いたことがない。
 『外交だけで平和を守れ』というリベラルの主張も、『軍備を強化すれば大丈夫』というバカウヨの寝言も、ボクには現実味を欠いた無責任な意見に聞こえます。

 番組では日本の外交について、冷静に事実を挙げていきます。

 まず、日本の外交予算。各国に比べて日本は全く外交にお金を使っていない。外務省の要員も圧倒的に少ない。

 GDPが日本の半分しかないイギリスと比べると予算も情報関連の要員の数も絶望的に差が開いています。

 しかもキャリア官僚は数年でローテーションがかかってしまうため、幹部には専門家が育たない。明治期から続くこの制度を変えるには他省庁も絡むから莫大な労力が要る、と番組では指摘していました。しかも最近は政治家が人事にまで介入してくる。

 日本の外交には金もなければ人員もいない、専門家も育たない。外交で平和を守るとは言っても、これでどうすればよいのでしょうか。

 今や中国、北朝鮮核兵器やミサイルを持ち、アメリカの力は相対的に低下した。日本の強みだった経済力も低下しているし、外交力は弱いまま。

 戦後70年以上経って環境が激変した今、日本は従来の経済優先の国から新たな自我像を再定義しなくてはいけないと番組は問いかけます。日本は世界に何を訴えて外交をやっていくのか。

 番組に出演していた日大教授の小谷賢氏も元外務官僚の田中均氏も『今後も平和国家を目指すのは変わらないが、手段が変わった。これからは他国に誤解を招かないよう、外交、経済、軍事、財政、技術など総合的な手段を用いつつ平和国家を目指すことを世界に訴えかけていくことが一層重要になるのではないか』、と言っていました。ボクも同感。

 目指すのは『平和国家』。そのためにはどういう手段を組み合わせていくか、という議論が必要です。その観点からすれば、軍事力に偏る保守派も外交というお題目しか言わないリベラルも落第です。 
 

 元外務官僚の田中均氏はこう言ってました。
アメリカと手を組んでいかなければならないのはこれまでと変わりないが、中国との関係など日本とアメリカは利害が完全に一致しないこともある。今後は国民・政治家が議論して、日本独自の外交戦略を作っていかなければならないのではないか。』

 そのためには『与野党含めた政治家がきちんと国民に説明・議論すること、そして専門家である官僚を生かしていくことが必要ではないか』というのが議論の結論でした。現状のように議論を避け法案を通すことに躍起になっている与党、スキャンダルばかりを追求する野党という国会では政治が機能しているとは言えません。国民だってうんざりする。

 護憲リベラルが軍拡にいくら抵抗しても代案がないのだから説得力を持ちません。だから現役世代には支持が拡がらない。あと10年もすれば高齢者世代は死んでしまうから(笑)、彼らも尻すぼみになるでしょう。
 一方、『国内では選挙対策のためにまともな議論をせずに、安全保障はアメリカに任せておく』という与党の従来路線では早晩行き詰まることは目に見えています。日本は属国状態のままであるだけでなく、国民もアホのまま。51番目の州にすら昇格出来ない(笑)。

 与党に対抗できる現実的な批判勢力が出てこない限り、日本の現状は変わらないのではないか、と、番組を見ていて思いました。与党だけでなく、野党(と、その支持者)が戦後の夢から覚めない現実離れしたアホばかりだから、こういうことになるんです↓。


 さて、昨日は恵比寿で『moonriders アンコールLIVE マニア・マニエラ+青空百景

 デビュー45周年を迎えた日本最古のロックバンド、ムーンライダーズは活発な活動を続けています。昔は数年間も活動休止したり、ライブも滅多にやらなかったりしたバンドです。ところが今年ボクがライブを見るのは3回目。なんと言っても平均年齢70歳近いバンドです。ありがたや、ありがたやです。

 今回は80年代前半にムーンライダーズが出した名盤『マニア・マニエラ』、『青空百景』の再現ライブです。

 『マニア・マニエラ』はコンピューターを全面的にフィーチャーした半面、フォークギターでコンピューターのリズムと同期させたりするアバンギャルドで斬新な音作りと労働者階級をテーマにした不穏な歌詞でレコード会社が発売中止にした、という伝説の名盤です(笑)。レコード会社が発売を拒否したため、当初の流通はカセットテープでした。

 『青空百景』は『マニア・マニエラ』の発売中止を受けて、『じゃあ、売れ線の音楽を作ってやる』とばかりに急遽録音したポップアルバムです。いわば陰と陽。

 青空百景に収められたライダーズの唯一の?シングルヒット『僕はスーパーフライ』のサビの歌詞、「僕は蝿になって君の家のまわりグルグルまわる」という詞は高橋幸宏がモデルだそうです。この曲は当時女子大生の斉藤慶子が出演するミノルタのCMで使われました。当時は気が付かなかったのですが作者の鈴木慶一も出演していました。

www.youtube.com


 と、いうことで、クリスマスの夜に会場の恵比寿ガーデンホールへ。イルミネーションが飾られ、人も大勢いましたが全く興味なし。

 開演前のステージにはオープンリールが置かれ、床にはバラが飾られています。

 開演前 会場にはメンバーが何やら話す声が流れています。楽屋の実況中継かと思ったら、こういうことでした。

 ライブは今年71歳の鈴木慶一氏がフォークギターを抱えて客席内で『鬼火』(仏映画の『鬼火』からインスパイアされた自殺の歌です)を演奏するところから始まりました。最初 どこの爺さんかと思いました(笑)。演奏すると歳は感じないんですが。

 途中で『鬼火』を中断すると、メンバーがステージに現れ『マニア・マニエラ』の演奏が始まります。全員がアルバム発表当時をイメージした白い衣装を着て登場です。

 再現ライブと言っても、今のライダーズはステージでコンピューターは使わないのでアレンジは変わっています。これが感心した。当時のアバンギャルドな解釈を残しつつ、オープンリールを使ったり、インプロヴィゼーションを入れたりして40年前の演奏がもっと過激な演奏になっている。

 後半の『青空百景』の演奏も同じです。ポップな作品でしたから余計に現在の過激な演奏が引き立っている。地味な曲ほど「こんなに良い曲だったのか」と思わせられることしきり、でした。

 アンコールは登場時の『鬼火』を中断したところからの演奏です。フォークギター一本だった演奏が、今度はジャズ系のギターソロとストリングスが入り混じった重くて美しい演奏に変わります。長年聴いてきた曲ですが、想像もつかないようなアレンジです。そして最後はバイオリン、ビオラインプロヴィゼーションで終わった。

 ネット上の感想では『今までベスト』という声も挙がっているほど充実した演奏でした。声も良く出ていたし、今までのライダーズの演奏の中でもAクラスだったのは間違いありません。
 療養していたキーボードの岡田徹氏が車椅子で復帰、バイオリンの武川雅寛氏が杖無しで演奏、それに数年前に亡くなったドラマーのかしぶち哲郎氏がスティックで参加、とアナウンスされたのも嬉しかった。

 今回のライブはチケットを買えなかった人も大勢いるそうで、最後に鈴木慶一氏が『来年もう一回やるかも。でも演奏はまた変える』(笑)と言ってました。DVD出してもらえないかなあ。