特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『ムーンライダーズ 岡田徹氏の逝去』と『天神様に会いに行く』

 今週 ショッキングな知らせが飛び込んできました。ムーンライダーズのキーボード、岡田徹氏が亡くなってしまったのです。享年73歳。

 昨年のライブは車椅子での出演でしたが、年末に『来年春にはリハビリが終わって車椅子から解放される』と言っていたので、ボクも安心していたんです。全く意表を突かれました。

 岡田氏はムーンライダーズ以外でも『ドコモダケ』等各種CM音楽やアイドルのプロデュースもしていましたが、プリンセスプリンセスの名づけ親とは全く知らなかった。まあ、ボク自身はJ-POPなんか1ミリも興味ありませんけど。

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 高橋幸宏氏(下写真右)が亡くなったばかりですが、岡田氏の逝去は遥かにショックが大きい。もう、優しくて流麗な彼の新曲が聴けないのか。

 全員が曲を書き、リードボーカルを取るムーンライダーズでも岡田氏はポップな曲調が特徴でした。
 しかし、もっとも印象に残っているのが学生運動の時代をテーマにした『まぼろしの街角』。日本のフォークソングの大多数があの時代をなかったことにしているのに対して、ライダーズはいまだに正面から向き合っている。過去を無かったことにはしない。未だに革命を目指すかのような不穏さを漂わせている


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 これも岡田氏の名曲。『9月の海はクラゲの海』。ボーカルは高橋幸宏。日比谷野音のこのステージ、ボクは生で見ました(エヘン)(笑)。

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 岡田氏の逝去を受けて、ライダーズのメンバーは皆、無言で晴れ渡った青空の写真をtweetしています。
 

  昨年ライダーズが突然 活動的になって、何度もライブを行ったのもこういうことだったのかもしれません。人生、時間が短くなってきたと感じると先を急ぐのは当然でしょう。

 普段はあまり意識しない『死』を改めて身近に感じる出来事でした。人の生死はコントロールできない。それに対してはただ、頭を垂れることしかできません。RIP

●これも岡田さんの名曲。『さよならは夜明けの夢に』
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 さて駒沢公園の梅は1月からぽつぽつ咲き始めましたけど、今はだいぶ花も開いています。

 それを犬たちが寄り添って眺めている。こういう風景を見るためにボクは生きているのかも。


 春の日に誘われて、丸の内へ和食を食べに行ってきました。接待などがない休日の店は空いていて、静かです。

 ビルの中の店のテーブル席ですが、窓辺には季節ごとのしつらえがしてあります。これもまた和食の楽しみ、です。

 今回はお人形さんが飾ってあったのですが、なんだか判らなかった。

 仲居さんに聞いたら『天神様』、つまり菅原道真だそうです。もちろん梅の季節だから。なるほど勉強になりました(笑)。こういうのが本当の意味での『勉強』と思いました。

 最初に出てきたのが『梅豆腐』。ウニ、ミル貝が載ったごま豆腐の上に梅の餡がかかっています。

 それから、お椀。器にはホトトギスが描かれています。
 この店のお椀は昆布が利いたすっきりした味わいです。出汁というより、水を味わうための味付けのように感じます。これもまた良し。

 中身は雲子と自家製の分厚い湯葉。『お椀』というのは器、香り、食べたときの味、後味まで一体になっている偉大な発明だと思います。

 お造り。ヒラメとサヨリと甘いアオリイカ

 次はマナガツオの焼き物。『手捻りの取っ手の形が面白いですね』と仲居さんに話したら、『万が一のことがあるから、こういう器は取っ手を持って運ばないように言われている』と言ってました(笑)。

 付け合わせは長野産の花豆ですが、異様に大きい。仲居さんが言っていたように、ふっくらした身はまるでマロングラッセみたいでした。

 次は八寸。右から鮑、山芋、鰯の寿司。梅の枝が添えられています。

 黄色い器は蕗の薹を模しているそうです。

 次は近江牛のローストビーフ。ここは本店が滋賀だからです。牛肉を和食で出されるのは好みませんが、ワサビを利かせた出汁が肉に染み込んでいて良いお味でした。上に載っているのもわさび菜。

 若芽と白魚。2月半ばで白魚。春に食べる生の若芽って本当に美味しいです。 

 かぶら蒸し。上に載っているのは蕗の薹。

 中には鯛、蟹、百合根,きくらげ。

 近江米を銅釜で炊いたもの。料理屋のご飯って、どこの店も柔らかい。旨味を味わうため、と仲居さんが言ってました。

 吉兆でも菊乃井でも最後のご飯は季節の具材が入った、趣向を凝らしたものが多いですが、この店はいつも、シンプルな白飯です。若いときはそれが物足りませんでしたが、今は心地よさも感じます。漬物が美味しいから余計にそう感じる。これも自分が歳をとってきたからでしょうか。

 抹茶とお菓子。『立春大吉』の器の中にお菓子が入っています。

 お菓子は『下萌え』という名前だそうです。

 土を模した黒豆の餡の中に、豆の緑色の案が詰まっています。春の息吹です。

 春は別れの季節でもあり、出会いの季節でもあります。だけど歳を経るにつれて寂しい事ばかり増えていくような気がする。
 ボクはあと何回、春を迎えられるか判らないけれど、それまで懸命に生きて、楽しいこと、嬉しいことを味わいたいと思います。