特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

ヒロシマからバグダッドへ

出張で広島へ。仕事なんかはどうでもいい(笑)。
広島へ行くたびに思い起こすのはアラン・レネの映画『二十四時間の情事』(Hiroshima Mon Amour、ヒロシマ・モナムール)、だ。恐怖と前衛、ロマンティシズムが混じりあった、この作品は本当に素晴らしい。

二十四時間の情事 [DVD]

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 現在は近代的なビルが立ち並ぶ広島だが、50年前のこの映画で描かれていた街の光景、例えば、河に浮かぶ明かり、真夜中の商店街などは今も変わっていないような気がする。それは中心部に河が流れる美しい地形がそのままであるからだけではなく、今も(原爆の)恐怖がこの街のどこかに影を落としているから、と思うのはボクだけだろうか。原爆ドームの脇をタクシーで通っても、常宿のリーガロイヤルから美しい夜景を見渡してみても、どことなく血の臭いがする、とでも言ったらよいか。
 ただ当時と今とで大きく違うのは、当時は将来に対する眩いくらいの希望があった、ということ。当時の光景を写した、主演女優のエマニュエル・リヴァが撮影した美しい写真集『HIROSHIMA 1958』を見ると、その想いは一層強くなる。
HIROSHIMA 1958

HIROSHIMA 1958

 広島からの帰り、羽田で朝昼兼用のヨシカミのカツカレーを食べたあと(Boo〜)、見逃していた映画『バグダッド・カフェ』(原題Out Of Rosenheim)
http://www.bagdadcafe.jp/
ラスヴェガス近くの砂漠を縦断するハイウエイ沿いにある寂れたモーテル兼カフェ。そこに居るのは、猛烈な性格で夫に逃げられた女主人、ハリウッド映画の元小道具係、バッハばかり弾いている主人の息子など、どこか奇妙な人間ばかり。そこに亭主と別れたドイツ人の主婦が紛れ込む、そんな話だ。
 退廃的な雰囲気をかもし出す名曲、主題歌の’’Calling You''から連想される、荒涼とした、もっと癖のある映画だと思っていたら、良くも悪くもハートウォーミングな話だった。ブーメランやらバッハやら、アートっぽいモチーフが色々と引用されるのもどことなく中途半端。ボクにはカフェでのミュージカル・シーンが一番面白かった。悪い映画ではないが、ちょっと拍子抜け、と言う感じ。これなら同じビルでやっていた『山城新伍とその時代』に行ったほうが良かったかも(笑)。
 ということで、口直しに映画館の近くのVIRONでペストリーを幾つか買って帰る。エシレ・バターたっぷりのパン&パイ生地は身体には悪いだろうが、抗いがたい唯一無二のうまさ。バターの重さと小麦粉の歯ごたえがマッチしているのだ。
 それにしても寒くなったなあ。