特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ』

 先週末の『日本人の同性愛カップルがカナダで難民認定された』というニュースには笑いました。まさに日本の常識は世界の非常識G7で同性婚を認めない唯一の国は伊達じゃない(笑)。

 そういう日常を当たり前のように感じている国民の側も問題です。ボク自身もマヒしているかもしれませんが、官だけでなく民まで足並みを揃えた同調圧力に支配された日常を不思議に思わない。
 自民党の目指す政治は中国共産党北朝鮮と思ってますけど、日本人を北朝鮮のようなセルフ奴隷臣民化するのは着々と成功しているようです。

 それを助長しているのが相変わらず無能・現実無視・自己満足の左派です。この前川のtweet共同親権を導入した民法に付帯決議をつけることで賛成した立憲民主を批判したもの。

 こんな役立たずのバカ連中を見ていれば、まだ与党の方がマシか、と思ってしまう人が出てくるのもやむを得ない。

 今の与野党議席差ではただ反対しているだけでは強行採決されてしまいます。先日の入管法もそうでしたが議席差がこれだけある以上 少しでも議論して付帯決議や修正を勝ち取る事は大いに意味がある。
 今回の共同親権の問題も立民が与党と協議して『運用を見ながら数年後に見直しをする』、『懸念に対し政府や裁判所に配慮を求める』などの修正や付帯決議をつけることに成功しました。これでもないよりはマシ、です。

 現実を変えようともせず、妥協という政治的な努力もせず、自分たちだけの正義を押し通そうとするのは中国共産党と大して変わりはありません。野党でいることが自分たちの商売だった、かっての社会党と同じです。
 これもまた、セルフ奴隷臣民の一種です。今のシステムを少しでも変えようとしないんだもの(笑)。

 歴史を振り返っても戦国時代、明治期の文明開化、戦後80年代くらいまで、など、今迄 日本が栄えてきたのは国民に対する縛りが緩んで、やりたい放題になった時(笑)です。締め付けとセルフ奴隷臣民化が進む今の日本が衰退していくのも無理はありません。


 と、いうことで、新宿で映画『ミセス・クルナス vs. ジョージ・W・ブッシュ

2001年9月11日の同時多発テロのひと月後。ドイツ・ブレーメンに暮らすトルコ移民のラビエ・クルナス(メルテム・カプタン)は旅行中の息子がタリバンの疑いをかけられ、米軍のグアンタナモ収容キャンプに収容されたことを知る。息子を救おうとするも警察や行政は動いてくれず、彼女は電話帳で見つけた人権派弁護士ベルンハルト・ドッケ(アレクサンダー・シェーア)に助けを求める。やがて二人はアメリカ合衆国大統領ジョージ・W・ブッシュを相手に訴訟を起こす。

www.zaziefilms.com
 ベルリン国際映画祭で主演俳優賞と脚本賞を受賞した、実話を元にした作品です。
 アンドレアス・ドレーゼン監督は無実の罪で5年もの間グアンタナモに収監されたムラート・クルナス本人の著作に心を打たれて映画化しようとしたものの、映画化するには悲惨すぎて困っていた時、ムラートの母ラビエに出会って彼女の天真爛漫なキャラクターに魅せられ、映画にしたそうです。

●映画の中のトルコ系移民のラビエ夫婦。夫はメルセデスの工場に勤めています。まあまあ成功した移民一家です。

 お話はドイツのブレーメンに住むトルコ系移民の一家の主婦、ラビエが朝、息子のムラートが家にいないことに気づいて大騒ぎをするところから始まります。やがて息子から『中東のモスクを旅行で回ってくる』という電話があります。

 その後 数か月して息子が当局に捕まり、米軍に引き渡されてキューバグアンタナモに送られた、というニュースが飛び込んできます。息子のムラートタリバンと疑われたらしい。
 途方に暮れたラビエは電話帳で見つけた弁護士、ドッケの事務所へ強引に押しかけます。偶然ですが、ドッケは人権派の弁護士でした。

 ムラートの無罪を確信したドッケは文字通り無法地帯であるグアンタナモでの拘禁の違法性を訴えるアメリカでの訴訟に加わることで、ムラートを取り戻そうとします。ラビエはドッケの力を借りてブッシュ大統領を相手に訴訟を始めることになる。 

 話としては理不尽で悲惨です。タリバンとは何の関係もないトルコ系の移民が旅行中に拘禁され、アメリカも含めて、どこの国の司法も及ばない米軍のグアンタナモ基地で拷問されながら監禁される。しかもドイツに住むトルコ系ということでドイツ政府もトルコ政府も知らんぷりする。酷い話です。

 しかし、お話としてはコメディに見える。
 ラビエのキャラクターがとても魅力的だからです。一言で言うと大阪のおばちゃん?。虎模様の服は着てないけど、押しはめちゃめちゃ強い。モットーとしては料理は手作り、子供達には絶対的な愛情で接している。人情に厚く、親切だけど、人の都合は全く考えない。遠慮という言葉は彼女の辞書にはない。人見知りのボクにはこういう人ってうらやましいです。

 

 息子がタリバンの容疑を受けているということで彼女をうさん臭い目で見る人もいますけど、彼女はそんなことは気にしない。甘くてデカいケーキを焼いて強引に押しかけて、いつの間にか周囲の人は彼女の味方になってしまう。計算ずくではなく、彼女はそういう人、なのです。


 
 ラビエを演じるメルテム・カプタンという人はドイツの有名コメディアンだそうです。緩急つけた見事な演技です。さすがベルリン映画祭の主演俳優賞(笑)。

 お話の進め方も上手いです。エピソードを『ムラートがいなくなってから何日目』で切っていくやり方はテンポもいいし、ラビエたちが置かれた状況が如何に過酷かも表している。5年ではなく、約1800日です。彼女の苦悩はいかばかりか。

 コメディのように見えて、実は民主主義国家とは思えない人権侵害がアメリカ、ドイツで行われていたことを告発する作品でもあります。特にドイツで事件を隠蔽しようとしたのが、緑の党と連立した左派政権だったことも許し難い。

 その反面、アメリカにはグアンタナモで拘禁されている人を救おうと懸命に努力する人もいる。ラビエのアメリカへの渡航費用を援助する金持ちもいる。ドイツでも左派政権は腐っていても、保守中道のメルケルが政権につくとムラートの解放の動きが始まる。人は宗教やイデオロギーで判断されるべきではない
 このコメディでも、そういうことがキッチリわかるようになっています。さすがベルリンの脚本賞(笑)。

 またイスラム教徒のラビエがお酒を飲むシーンが挿入されるのも多様性を表現していてうまい、と思いました。お酒を飲んでも神様が寝ていればいいというんです(笑)。

 最近 新宿などでインドネシア辺りから観光でやってきたヒジャブを被った女の子たちがキャッキャ言いながら、どう考えてもハラルではないスイーツやファストフードをガンガン食べています(笑)。キリスト教徒でも仏教徒でもそうですが、イスラム教徒も色んな人がいる。何でもステレオタイプで判断するのは間違いです。

 エンドロールで本物のラビエとドッケの姿が映ります。俳優さんたちがそっくりなのも感心しました。
 コメディのように見えても、案外深い、だけど深すぎない(笑)、ドイツで大ヒットしたのがよくわかる、良い映画でした。世界の救い難い理不尽を訴えても重くなり過ぎない。だから希望が持てるんです。


www.youtube.com