特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

人生は無意味、だけど。:映画『サン・セバスチャンへようこそ』

 今日の東京は雪。雪や氷の上の歩き方すら慣れていない都会の人間には積雪で足が滑ると、それこそ、命にかかわります。積もらなければいいけどなあ。

  さて、ボクはなるべくならリアル書店で本を買いたいと思っています。店頭で見ることで『出会い』があるからです。人間とは余程でない限り、知らない人と出会いたいと思わないですが(笑)、本ならいいです。
 ところがボクが出歩く渋谷や新宿の近辺ではジュンク堂は閉店、紀伊国屋ネトウヨ本がずらっと並んでいますからボイコット、と リアル書店からは何年も足が遠のいています。バカウヨ本屋なんか、さっさと潰れてしまえばいいのに。
 最近の本の売れ行きはこんな感じなんですね。呆れました(笑)。

 やはりこれも『民度』です。


 民度と言えば、そろそろマスコミでも、前回のエントリーで触れた『裏金問題は岸田の仕掛け』の件、『「政治とカネ」の問題で最も「トク」をしたのは、他ならぬ岸田首相本人』という観測が出てきました。

gendai.media

 法政大の白鳥教授のこの記事にある『支持率が下がっても、どうせ国民はすぐ忘れる。自民党総裁の地位だけ盤石にしておけば権力は維持できる』という岸田の判断はある意味正しい。それが日本の民度ですよ(笑)。

 裏金がどうの、派閥がどうの、と表面的なことばかりあげつらっているだけでは、どうにもならない(笑)。
 あんまり興味なかったんですが、京都の市長選で立民が自民と相乗りしたことをぎゃあぎゃあ言ってる連中がいます。

 普通に考えたら、京都なんて昔の共産党府政の負の遺産が余りにもデカいんじゃないの。詳しくは知らないけど。 

 少しは頭を使え、と。少なくとも維新の京都進出は阻止できた。

 歴史に向き合わず、自分の頭で考えないのはバカウヨも一部の左翼も全く変わりません(笑)。TWITTER(X)見て条件反射しているだけだったら、犬にも劣る。

 やっぱり、こういうことですよ。左右に関わらず、バカはダメ(笑)。


 と、いうことで、日比谷で映画『サン・セバスチャンへようこそ

舞台はスペイン、バスク地方ビスケー湾に面した風光明媚なサン・セバスチャンという町。ニューヨークの大学教授で売れない作家のモート・リフキン(ウォーレス・ショーン)は、映画の広報担当である妻スー(ジーナ・ガーション)に同行してサン・セバスチャンで行われる映画祭を訪れる。彼は売り出し中のフランス人映画監督フィリップ(ルイ・ガレル)と妻との浮気を疑っている。妻への疑念で心気症となったモートは、紹介された病院で美しい女医ジョー(エレナ・アナヤ)と出会うのだが。

 ウディ・アレン監督の新作、コメディです。毎年のように新作を発表していたウディ・アレンですがセクハラ問題で拠点を欧州に移したためか、20年の『レイニーデイ・イン・ニューヨーク』以来、久しぶりの公開となりました。原題は『リフキンズ・フェスティバル』。

●左から主人公のモート(ウォーレス・ショーン)、妻のスー(ジーナ・ガーション)、フランス人映画監督(ルイ・ガレル

 モート・リフキンはそろそろ60歳を迎えます。大学で映画を教えていましたが、本業は売れない小説家。スランプで新作がなかなか書けない状況に悩んでいます。彼の妻は映画の広報担当者。モートとは異なる華やかな世界にいます。

 彼女は今 売り出し中のフランス人映画監督の広報を担当していますが、モートは妻と監督との仲を疑っています。そこでモートは妻に同行して、サン・セバスチャン映画祭にやってきたのです。

●映画祭へやってきたモート(左)と妻のスー。 

 社交的とはとても言えないモートは映画祭の雰囲気になじめません。

 まして妻が四六時中 ハンサムなフランス人映画監督と一緒に過ごしているのに心穏やかではいられません。

●左からモート、妻、フランス人映画監督。手の位置に注目(笑)。

 ヨーロッパの巨匠のクラシック映画を愛するモートは現代風の映画が嫌いです。妻が担当するフランス人監督が映画祭でちやほやされるのも面白くありません。

  

 映画祭のストレスや妻との関係に加えて、常日頃から、死を意識し、実存とは何かを悩み続けている(笑)モートは心臓の異変を感じ、現地の医者に掛かります。

 その医者は美しい女医でした(笑)。

 お話はいつものウディ・アレンです。ヨーロッパの巨匠のクラシック映画を愛し、ハリウッドを嫌い、車がパンクしても何もできず、死ぬことを異常に恐れる主人公は普段だったらアレン本人が演じるところです。
 今回はベテラン俳優のウォーレス・ショーンが主人公を演じている。これがいい。当たり前かもしれませんが、アレンとは大違いの演技力です(笑)。彼の表情や細かな動きが実に面白い。それに小太りで、禿げて、しわの寄った顔が良い。説得力があります。

 モートが気に入らないフランス人映画監督にも、業界でちやほやされたり、ジャズの演奏をするなどアレンのキャラも入っています。こういう一筋縄ではいかないところも実に嫌らしい(笑)。 

 ゴダールベルイマンの名画を模した場面が出てくるのもすごく面白い。雰囲気を壊さずに自然に挿入されているのは、さすが良くできているなあと思いました。フランス人監督を演じるルイ・ガレルはかってゴダール役を演じていたのもアレン監督は狙っていたのでしょうか。 

 今回はギャグがいつもより辛辣なのもボクは好き(笑)。イスラエルパレスチナの和平を訴えるフランス人監督に「SFを読んでるのか」とか、昔の元カノに「デートで映画『去年マリエンバードで』に誘ってきた」と罵られる!ところなどは素晴らしい。不謹慎かもしれないけど、そういう辛辣さがボクは愛おしい(笑)。

 美しいサン・セバスチャンの町並み、美しい女性、ファッションも何気なくおしゃれ、これもまたいつものアレン節ですが、見ていて楽しいです。

 なによりも主人公の悩みが実に身に沁みました。いい歳こいて自分探しをやってるのもイタいと言えばそうなのですが、今回は切れ味が実に鋭い。
 『人生は無意味。だけど、空っぽである必要はない』。
 じたばたしても結局 人生は無意味、なんでしょうけど、それだけにしてはいけない

 今回はこの10年くらいのアレン作品の中でも傑作だと思います。好き嫌いはあるでしょうが、『ブルージャスミン』や『ミッドナイト・イン・パリ』と並ぶか超えるくらい、ボクは好きです。辛辣だけど希望があって、少し緩いかもしれませんが、本当に面白かったです。


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