特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『2020年の始まり』と映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』と『パラサイト 半地下の家族』

 今朝は一段と寒い朝でした。楽しかった正月休みもおしまい。毎年のことながら、暗ーい気持ちで仕事の始まりです(笑)。まあ、こういう暗い新年もあと何回か我慢すれば毎日がお正月、と思って耐えております(笑)。

 それでも仕事が始まって唯一、生活が規則正しくなるのは良いことではあります(寒いけど)(笑)。心理テストを受けると、自分のストレス対処傾向は『逃避』というのがはっきり出ているのですが(笑)、残念ながら逃げ道はない(笑)。


 年末のトランプの愚行には肝が冷えました。下手すればイランと戦争になる。アメリカも北朝鮮とイランと両面作戦はできないから自制していたのに、バカが衝動的なことをやらかした。アメリカの軍部ですら、そんなことをやるとは思ってなかったそうです。
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 今朝の朝日『天声人語』に今回の暗殺に関して、第1次世界大戦の指導者を描いた意思決定論の名著『8月の砲声』が引用されていました。
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 当時はドイツもイギリスもフランスも政治指導者は誰も戦争を欲していなかったし、まして長期戦になるとは思ってなかった。だけど偶発的なことが折り重なり、政治指導者はその都度に短期的な視野に立った、一見合理的な決定を行っていくことによって大戦争になってしまった。

八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

八月の砲声 上 (ちくま学芸文庫)

 トランプや安倍晋三がいくらバカでも、戦争は欲していないとボクは思っています。しかし短期的な視野で合理的な決定を行っていくことによって全体として大きな過ちを犯してしまう、それが第1次大戦でしたし、第2次大戦でもそうでした。ヒトラーだって東条英機だって昭和天皇だって一応、世界戦争は避けたいと思ってたんですから。

 何でも反対すればよいと思ってる単細胞な一部のリベラルと違って、ボクは、今回の自衛隊の派遣はまずイランに仁義を切った、ということだけは高く評価しています。イランの大統領が『自衛隊の派遣を理解した』と言っています。アメリカもイランも敵に回す必要はありません。
ロウハニ師、海自派遣に「日本の意図理解」:イザ!www.iza.ne.jp
 
 ただ、このように事態が変わってくると話は変わってくる。イランの人たちだって、アメリカだって頭がカー助になっている状況で、偶発的なことが起きる可能性は格段に高まりました。自衛隊の派遣にそのリスクを冒すだけの価値があるかどうか。

 無能そのものの安倍晋三はもちろんですが、

 日本人もあまりにも呑気過ぎないか。今日だって株はダダ下がりだし、原油価格(WTI価格)もクリスマスには60ドル程度だったのが、この数日で65ドルまで上がりました。
●1月4日のtwitterトレンド

 これでは多くの日本人の脳味噌もかなり問題があると言わざるを得ません。自衛隊派遣の損得を考えるどころではない。

 ちなみに今 京都市長選でれいわの連中が候補者の福山和人より数倍大きな山本太郎の写真を貼ったトラックを走らせているそうです。やっている連中もそれを認めている山本太郎も完全に頭がおかしい類は友を呼ぶで、れいわの連中はこういうアホばかりだからダメなんですよ。


 

 ということで、アホが織りなすロクでもないニュースで始まった2020年、まさに先が見えません。
 それでも頑張ってやっていきたいと思います。最後は良い告知(笑)↓
●1/12の『安倍やめろデモ』は全国各地に拡がっています。楽しみ。

occupyshinjuku.qcweb.jp

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 ということで、年末に見た映画を二つ。どちらも非常に面白かったです。
 一つ目は『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!
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heavy-trip-movie.com

 フィンランド北部の村で暮らすトゥロは介護施設で働く傍ら、結成12年のヘヴィメタルバンドでボーカルを務めていた。しかし彼らはコピーばかりでオリジナル曲がないばかりか、トゥロは極度のあがり症で人前で演奏すらできない有様。風変わりな負け犬のような存在として、ただでさえ保守的な田舎の村で肩身が狭い彼らはオリジナル曲を完成させ、ノルウェーで開催される音楽フェスを目指して旅に出る。

 先日34歳の女性首相が誕生したことでも話題になったばかりですが、北欧の国フィンランドは男女平等が進んだ福祉国家として知られています。学費も幼稚園から大学まで無料で学力世界1、ノキアなど世界的大企業も輩出し、一人当たりGDPは日本より遥かに高い。

 第2次世界大戦では隣国ソ連の侵略を受けたにもかかわらず、多くの国民が銃を持った血みどろの戦いと叡智で独立を守りました。確か国民の6人に一人が銃を持ったと記憶しています。
 戦後もワルシャワ条約機構などソ連の勢力圏にも属さず、共産国にもならず、独自の立場を守り抜いた。同じ第2次世界大戦の敗戦国にも関わらず日本とは全然違う、すごい国です。

 ところが、フィンランドは世界で最もヘビメタが盛んな国とも言われています(笑)。人口10万人あたり53.2のメタルバンドが存在し、人口比率で世界で最も多くのメタルバンドがいるメタル超大国だそうです。

 フィンランドのような文明国で、なんでヘビメタのような下等で頭が悪い音楽が盛んなのでしょうか(笑)。良くわかりませんが、たぶん田舎なので他にやることがないからだろう(笑)、と言われています。多分、そうなんだろうとボクも思います。


 この映画の主人公、トゥロは介護施設で働く傍ら、ヘビメタバンドをやっています。ギタリストはトナカイの精肉工場(笑)、ベースの子は図書館で働いています。そういうところがいかにも、フィンランドらしい。
 道をトナカイが悠然と歩いているような田舎の村では長髪革ジャンという格好の彼らはどうしたって目立ちます。そういう格好をしているだけで、彼らは村の人たちから白い目で見られています。

 彼らのバンド名は『インペイルド・レクタム』(直腸陥没)、自ら標榜するジャンルは『終末シンフォニック・トナカイ粉砕・反キリスト・戦争推進メタル』、いかにもメタルにありがちなおバカさんたちの発想です。
 しかし、トゥロは極度のあがり症で人前で歌うなんてとんでもない、という恥ずかしがり屋です(笑)。結成以来 12年間一度も人前で演奏したことがありません。

 村人からはバカにされても、気になる花屋の女の子にも励まされて勇気を得たトゥロは『トナカイの地獄の叫び』(笑)を再現したオリジナル曲(確かにそう聞こえるのは感心しました)を作り、ノルウェイの音楽フェスに出演しようとします。が、彼らの前に様々な妨害が降りかかります。

 音楽もカッコいいし、主人公たちのキャラも好感が持てます。お洒落さなんてかけらもないし、徹底的にバカだけど、音楽が好きという純粋な気持ちがある。良い意味で田舎の素朴な人たちです。

 バイキング、トナカイ、特殊部隊、ロマンス、様々な要素が詰まっています。それを田舎の素朴さが包み込んでいる。すれてない。

 ブルース・ブラザース』、『サイタマノラッパー』などの傑作の系譜に連なる、B級だけど良質なお笑い映画です。ボクはメタルは好きじゃありませんが、全然大丈夫。非常に気持ちが良かった。間違いなく面白い映画です。

映画『ヘヴィ・トリップ/俺たち崖っぷち北欧メタル!』予告編


 もう一つ、『パラサイト 半地下の家族
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www.parasite-mv.jp

 ソウルの半地下住宅に住むキム(ソン・ガンホ)一家は全員失業中、日々の暮らしに困窮していた。半地下の部屋は日の光も電波も弱い、水圧が低くてトイレが部屋の一番高い場所に置かれ、時折 路上で散布される消毒液が部屋に流れ込んでくる。長男のギウ(チェ・ウシク)は友人から、IT企業のCEOを務めるパク氏の娘の家庭教師の仕事を紹介される。パク氏の豪邸で職にありついた彼は、美術学校に行きたいのに予備校に行く金もない妹のギジョン(パク・ソダム)を後輩と偽って、パク氏の息子の家庭教師として紹介する。やがてキムはパク氏の運転手として、妻のチュンスクは家政婦としてパク氏の一家に寄生していく。


 昨年のカンヌ映画祭で最高賞を受賞した、非常に評価が高い作品です。韓国では観客動員1000万を突破、フランスでも150万人を突破、今年のアカデミー作品賞候補ではないかともいわれています。
 カンヌでは3年前のケン・ローチ監督の『わたしはダニエル・ブレイク』、一昨年の『万引き家族』に続いて、格差社会をテーマにした、この作品がカンヌ映画祭の最高賞を受賞しています。世界中に格差が広がっているのを示す、非常に象徴的な話だと思います。


 と言っても、この作品はほぼ、コメディと言っても良い映画です。それに風刺と残酷さを振りかけてエンタメに仕上げた。
 
 格差が広がる韓国では家賃の高騰で、ビルの半地下という劣悪な環境に住む人が数万人という単位で存在しているそうです。経営者や財閥企業に勤める一握りの人は江南などの高級マンションに住んでいるけれど、まともな家も買えない人も大勢いる。
 東京圏では新築マンションの平均価格が7000万円を超える高騰ぶりが話題になっていますが、ソウルも上海も新築マンションの価格は億ションはザラ、日本より高い、という話も聞きます。格差は世界的に広がっている。


 この映画の主人公、キム一家は全員失業中です。
 商売にも失敗し、良い仕事も見つからず、一家四人で半地下住宅で暮らしています。日の光も、電波も弱いし、酔っ払いが立ちションしたり、散布された殺虫剤が窓から入ってきたりする。しかも雨が降れば浸水したり、下水が噴き出す(昨年の台風で武蔵小杉であったパターンです)。日々の食べ物にも事欠く有様。
●半地下の部屋で暮らすキム一家


 そんなある日、大学受験に失敗し続けている長男ギウは、エリート大学生の友達に女子高生相手の家庭教師の仕事を紹介されます。堅物のお前なら可愛い女子高生を教えても大丈夫だろう、というのです。
●ギウは友人の紹介で大豪邸で家庭教師をやることになります。

●ギウはひょんなことから女子高生を教えることになります。確かに可愛い(笑)。

 女子高生の親は大豪邸で暮らす、IT企業を経営するパク社長。一家は夫婦と姉弟の4人家族、キム一家と同じ家族構成です。
●豪邸で暮らすパク社長夫妻。美男美女のカップル。こういう人種って日本にもいそうです。


 ソウル大生と身分を偽り、母と娘に気に入られて高給の家庭教師になったギウは、今度は絵が上手い妹のギジョンを自分の学校の後輩に仕立てて美術の家庭教師として紹介します。

 やり手のギジョンは他人のふりをして父のキムを運転手として、母のチュンスクを家政婦として紹介します。キム一家は徐々にパク社長の一家と大豪邸にパラサイトしていくのです。

 

 
 非常に面白いし、皮肉と風刺を利かせつつ、格差を告発する。身近な者の口コミに非常に重きを置いたり、一見上品だけど中身は傲慢な金持ち一家も、現実主義で辛辣だけど肝心なところは抜けているキム一家も、いかにも『あるある』です。そういう細かいところの演出はとっても上手い。
●特にこういう奥さんって居そうな感じがします(笑)。

 ため息が出るような大豪邸で人間の愛憎、醜さをあらわにしたドラマが展開されます。

 映画が始まる前、わざわざポン・ジュノ監督や出演者が『ネタバレはなしでおねがいします』と促すフィルムが流れました。確かにネタバレしちゃうと問題がある映画ではあります。でもプロットも良くできてはいるけれど、そんなに驚かせるような話ではない。奇抜さだけでなく正攻法で楽しませる映画です。

 社会問題をエンタメに昇華する腕前、映画の出来の良さは日本映画に欠けているところでしょう。昨年の『新聞記者』なんかその典型。この映画は、どの登場人物も心境が理解できるように作られています。だから感情移入できて、面白いと感じる。

 思い切り笑って、時には背筋が寒くなり、映画館を出たら考えさせられる良い映画ではあります。何より面白い。ただ、個人的に好きかと言われるとそんなに好きではないなあ。ちょっと露悪的なところがボクは合わないのかも。 

第72回カンヌ国際映画祭で最高賞!『パラサイト 半地下の家族』予告編