特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『セールスガールの考現学』

 5月も半分が過ぎました。最近は地震も頻発しているし、どことなく落ち着きませんが、早く夏休みになって欲しいです。もう疲れた(笑)。

 連休は映画館周辺も最寄り駅の自由が丘も人がいっぱいでした。人が街に大量に出ているみたいですね。
 勤務先で営業に話を聞いたら軒並み小売店の業績は伸びているそう。たまには景気の良い話も聞きたいから良い話だと思いますが、それでも世の中全体はおかしな方向へ向いているように見える。入管法の改悪もそうだし、これもそう。

 そんなものに乗せられる国民が悪いんでしょうけど、与党も酷けりゃ、野党も酷い。マスコミもバカばっか。

 現実には習近平は暴れ出しかねないし、アメリカはトランプかデサンティスみたいなアホが出てきそうなくらいで対外環境はどんどん厳しくなってくるし、円安は進んで資源は高い。国内の少子高齢化はどんどん進むけど、移民は受け入れないし、あくまでも女性の社会進出は邪魔しようとする。
 ただでさえ酷い状況なのに前途に一筋の光明すら見えない、というのはどうなんでしょうか(笑)。

 日本の将来は過去の遺産をどれだけ食い延ばせるかしかないかもしれませんが、自業自得にしても酷すぎるよなあ。


 と、いうことで、映画『セールスガールの考現学

 モンゴルの大学生、サロール(バヤルツェツェグ・バヤルジャルガル)はケガをしたクラスメートの代理として、アダルトグッズショップでアルバイトをすることになる。高い給料なのに仕事は簡単だと聞いたサロールは、1か月だけ働くことを決める。ショップのオーナーはカティア(エンフトール・オィドブジャムツ)という謎の女性だった。
www.zaziefilms.com

 モンゴル映画、というと中々想像がつきませんが、評判が高いので見に行ってきました。大草原も朝青龍も出てこない、都会の女子大生を主人公にした物語です。

 モンゴルで原子力工学を学ぶ大学生、サロールは同級生にアルバイトを押し付けられます。楽な仕事なのに給料は高いと聞いていたら、なんとアダルトグッズショップの店番でした。

 サロールの仕事は、店番をして閉店後 オーナーのカティアの家に売り上げを届けること。カティアは豪華な家に住み、アルコールばかりの派手な暮らしをしていますが、いつも一人。70年代のロックバンド、ピンク・フロイドの『Darkside of The Moon』を愛聴する彼女は過去を多くを語りません。ロシア語も堪能で、かっては有名なバレリーナだったらしい。

 気難しく毒舌なカティアですが、率直なサロールは彼女に気に入られ、二人の間には奇妙な友情がはぐくまれていきます。

●サロールとカティア(右)

 彼女が働く店は職種柄、人間の本音が垣間見えるところです。男も女も色々な人がやってきます。老いも若きも、彼女の大学の先生もやってくる(笑)。それでいいじゃないですか。
 洋服などは若干垢抜けない感じもありますが、サロール達の考えていることは我々とあまり変わりません。素朴で引っ込み思案、親の言うなりになることが当たり前だった女の子の成長物語です。

 貧困問題も無いわけではないし、ロシア人が幅を利かせているモンゴル社会を見て思うところはありましたけど、無口で世間知らずの少女だったサロールが紆余曲折ありながら成長していくのを見るのは楽しい。

 韓国スターに憧れているサロールのボーイフレンドは呑気で良いキャラクターです。飼い主を見習って、やる気のない大きな犬とぶらぶらしている彼に久々の好青年キャラを見た(笑)。

 サロールがどこかへ移動するたびに音楽が挿入されます。この作りが非常に良いです。お洒落であるだけでなく、一服の清涼剤にもなっている。

 音楽は全編、モンゴルでは知名度が高いシンガーソングライター、マグノリアンという人の唄がフィーチャーされています。何を歌っているかさっぱりわかりませんが、なかなか美しいギターポップです。我々と感覚は全く変わらない。

Best of Magnolian

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●後部座席に座っている長髪のアンちゃんがマグノリアン。映画の中でも度々彼が登場します。

 誰もが思うことでしょうが主役の女の子、バヤルツェツェグ・バヤルジャルガルは存在感がある子です。実際に大学生で、これが映画デビューだそうですが、彼女を見ながらモンゴルなりのお洒落さ、ポップさに触れているのは中々心地よいです。

 カティアに様々なところに連れ出されたり、店に出入りする色々なお客と接触することで、サロールは次第に自分はこれから、どのように生きていくべきか、考えるようになります。

 この映画は彼女同様『これから』のことをテーマにした作品です。モンゴル社会もそうなのかな。衰退まっしぐらの日本とは違うらしい(笑)。
 深く感動するとか、そういう映画ではありませんが、お洒落だし、見ていて楽しい作品でした。モンゴルも日本も若い人の感じ方や社会の本質的な面では大きな違いはない、そう思いました。


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