特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『逆さレインボーブリッジ』と『お正月のNHK』(「欲望の資本主義2023」と「100分でフェミニズム」)

 今日は小寒
 東京の最低気温はマイナス二度。冬もいよいよ本番です。通勤途中に見る富士山も寒そうです(笑)。

 あっという間に終わってしまったお正月のお休みですが(泣)、年賀状って言うのはつくづく嫌なものです。
 普段の嫌なことを忘れられる休みなのに、届いた年賀状を見るだけで現実に引き戻されてしまう。電話よりはマシだけどプライベートに土足で入り込まれてくるようで、不愉快なんです。最近は年賀状が来ても見る気力すら湧かない(笑)。

 もちろん書くのも嫌です。一部とはいえ自分の汚い肉筆で書くのも外で裸でいることを強要されているような気がします。新年早々他人に伝えたいことも特にありません(笑)。

 君が代や日の丸と同様に古来からの風習でもない、明治期にでっち上げたものでしょうが、あんなもの、誰が始めたんでしょうか。届いたものを放置したまま無視していたら数はだいぶ減りましたが、全く迷惑な習慣です。来年あたり年賀状仕舞の挨拶を出して止めを刺してしまおうと思っています。


 お正月休みは外出する気はなかったのですが、お台場にある家具メーカーのショールームに新居のソファを見に行きました。

 家の売却&購入だけでも頭が痛いのですが、リフォームやら家具やら家電、それに引越しや家の片づけ、廃棄物収集の手配など細部も大変です。やらなければいけないことが莫大で目が回りそうです。
 あと10年後だったら、こんなことをやる気力は絶対なかった。

 普段は近寄ったこともないお台場は虚飾に溢れている反面、雰囲気は殺伐としていて、まるでスラム街みたいでした。ファストフードと安っぽい店ばかりが集まったショッピングセンターに外国人観光客と田舎から出てきた?家族連れが一杯です。コロナの事もあるから、流石に気持ち悪くなりました。

 早々に退散して、気分直しにお台場とシャンパ(笑)。ちょうどボトルを開けたところだったので、店の男の子が『泡が元気です』と自慢してました(笑)。
 ちょうどシャンパンの中にレインボーブリッジが逆さに映っています。古来、絵のモチーフとして有名な『逆さ富士』の湾岸版です(笑)。

 キンメダイと蟹とイクラの土鍋ご飯。ダイエットの為にボクの家では普段、ご飯は0.5合しか炊きません。
 お台場の食べ物なんて全く期待していなかったのですが、キンメダイの出汁で炊いた2合のご飯は美味しくて全部食べてしまった(笑)。


 紅白はともかく(笑)、お正月のNHKの一部は(笑)良かったんじゃないですか。
 1日はBS1の『欲望の資本主義2023』。恒例の特集で、これもまた恒例でボクの好きなバンド『相対性理論』のヴォーカル、やくしまるえつこがナレーターをやっていました。

www.nhk.jp

 今回は最近話題になっているロンドン大のマリアナ・マッツカ―ト教授、それに新たにロンドン大でノーベル賞候補だった故森嶋通夫教授がフィーチャーされていました。これは成程と思いました。

 今回の結論としては、これからは従来の常識にとらわれず、官(政府)と民(企業)と市民の役割を問い直さなければいけない、ということでした。

 健全な社会を保つためには、もっと市民の社会参加が必要なことは言うまでもありません。それに加えて我々は考えを変えていかなければならないのではないか。民営化とよく言われますが、官と民は必ずしも敵対関係ではないし、自由競争といっても民を官が放っておいても良いわけでもない。それに民も社会的な責任、公共的な役割を担わなくてはいけない面もある。

 貧困、格差、環境破壊など、今の資本主義の問題は官(政府)・民(企業)・市民、それぞれのバランスがおかしくなっていることに起因しているのではないか。
 資本主義の限界とかグリーン社会主義とか浮ついた話より、まず今ある問題点の本質を認識することが大事ではないか。例えばグリーン社会主義だろうが新しい資本主義だろうが、市民の積極的な社会参加がなければどんな体制になっても世の中はおかしなままでしょう。

 番組ではケインズの『各産業に配分する資源の量と報酬まで決めることが政府の仕事だ』という言葉が紹介されていました。それではまるで社会主義ですが、政府と企業の役割をもっと大胆に役割を問い直してみても良い筈です。

 日本では、特に大阪では(笑)『民営化』なんてサッチャー時代のキャッチフレーズが未だにもてはやされています。もちろん国鉄のようにサボタージュしたり、正社員の既得権益ばかりの労組が復権すればよいというわけではないので、そこは難しいところです。

 あと慶大の小幡績准教授(元財務省、パフュームファンクラブ会員)が『資本主義がまともに成立すらしていない日本が金融資本主義の時代に負け組になるのは当たり前』、『これからはイノヴェーションが悪になる』と言っていたのが面白かったです。

 2日に放送した『100分で名著スペシャル 100分でフェミニズム』。これも良かった。

www.nhk.or.jp

 上野千鶴子はともかく、歴史家の加藤陽子先生、沖縄のシングルマザーや少女たちの実態調査で近年注目されている琉球大の上間陽子教授、

 一昨年にネットフリックスか何かでドラマ化されてアメリカで大きな話題になった『侍女の物語』を翻訳した鴻巣友季子という顔ぶれでした。加藤先生や上間氏がこういう話題で出てきたのは意外でした。

 加藤氏が言ってた『関東大震災で唯一事件化された民間での虐殺は大杉栄伊藤野枝を警察が殺害したことだが、それはかって伊藤野枝が長文の抗議の手紙を送りつけた後藤新平閣議で取り上げたからだ』というのは全く知りませんでした。後藤新平も加藤先生もさすが。

 上野氏の話はほぼいつも通りで目新しい話はありませんでしたが、彼女が時々言及する『ホモ・ソーシャル』の概念のネタ晴らし(出典)を話してたのが面白かった。男だけど男社会に入れない(入りたくない)ボクにとってホモ・ソーシャルはボクを抑圧する不倶戴天の敵でしかない。
 彼女がそのような男ムラ社会を『ホモ・ソーシャル』と言語化してくれたのは、個人的には結構助かりました。

 ボクは全然見ていませんでしたが昨年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は典型的なホモ・ソーシャル、というのは面白かった。男たちがパワーゲームから降りられないところは確かにそうかも。

 ただ『男が最も求めているのは『男同士の称賛』』とまで決めつけるのは上野のダメなところです。
 ボクは男ですが、そんなことを思ったことは一生のうち一度もない。他人の賞賛の様に不確かなものを気にするようになったら自分が惨めじゃないですか。老子徒然草を読んでいれば直ぐ判ることです。子供の時から図書館が大好きだったボクは中学生くらいから、判らないなりに老子徒然草に触れてましたけど、最初に思ったのは他人の賞賛なんか求めていたら人生が惨めになる、でした。バカは相手にしない(笑)。

 上野たちが言ってた『組織なんて本気で関わるべきではない。半身で関わるくらいが正気の選択ではないか』というのはボクも同感です。
 が、上野が『半身で関わるべき』としてしまうのに対して、実務家である上間氏が『そちらの方が面白いということで、そちらへ引っ張りたい』といっていたのは流石だと思いました。

 実際に現実を変えようとすると『べき』論ってどこかに限界にぶち当たる。人間は必ずしも道徳や正義では動かないからです。上間氏のやり方の方が現実社会では遥かに有用です。上野の言ってることは所謂9条信者に代表されるオールドリベラルの限界でしょう(笑)。
 
 あと元来 日本の社会は同性愛など性に寛容だったのに、明治期に国が変な道徳を持ち込んだからおかしくなったという指摘は成程と思いました。

 お正月、この二つの番組は面白かったです。夜7時、9時のニュースは目を覆わんばかりですけど、NHKにも見るべきものはある。だから全否定する気にはなれないんですよね(笑)。