特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『横浜市長選』と映画『独立愚連隊シリーズ』

 今日は処暑。そろそろ暑さも峠を迎えました。
  昨日の横浜市長選は野党共闘の候補がゼロ打ち(投票が終わると同時に当確発表)で勝つ、という結果でした。

 この山中と言う候補は人選に疑問が無いわけではありませんが、野党共闘の候補が大差で勝ったのは良かったと思います。菅の選挙区である西区、南区、港南区でも得票数は小此木を上回ったそうです。

 今回の選挙ではなぜか、れいわ支持者や一部のリベラル?が、政治的スタンスが全く違う田中康夫をなぜか熱狂的に支持していたのが面白かったです。連中は既存政党でなければ何でもいいんでしょう。

 田中康夫はボクが通ってた神宮前のイタリアンの常連で何度も見かけたことがあります。彼は物の価値は判ると思う。長野県知事当時に講演も聞いたし、名刺交換もした。一言居士としては高く評価しますけど、この10年くらいは維新から立候補したりして、政治家としてはとても支持することはできません。

 神宮前のイタリアンでも彼は大抵一人でしたが(笑)、康夫ちゃんは個人としては能力あるけど、とにかく周りに人が集まらない。

 田中康夫は首長として組織を率いるのは全く向いてない。まして横浜市は長野県の2倍近い人口の大都市です。彼は組織や権威に媚びないし、良いアイデアは出してくるかもしれないけど、大組織のマネジメントや政策の実行はムリだと思う。 

 今 日本の政治で最も大切なことは与野党伯仲を作り出して、国会を機能させることです。そのためには野党共闘は前提条件です。小選挙区で自民公明と戦うには野党はまず、一本化しなければならないことが改めて明確になりました。

 立憲も連合も共産党も、そして市民も、妥協するべき点は妥協して最大公約数を作っていかなくてはなりません。まして消費税がどうとか、理屈の通らないことを言っても仕方がない。そんなことに固執するバカを相手にするヒマはない。既存の政党を否定したくなる気持ちは判りますが、政党も官僚も動かしていなければ世の中を変えていくことはできない。

 逆に野党が一本化すれば十分に勝算があることが示されたわけです。今回 山中が野党支持層だけでなく無党派、それに自民支持層まで票を取り込んだように、ウィングを中央へ拡げていくことが大切なのが改めて明らかになった。

 こんなことを言うとネット上の左寄りの人の間では人気がないでしょうけど、現実はそうなっている。山中が自民から取り込んだ票は共産支持者の票より多い↓。ちなみに田中康夫無党派層ですら、山中の半分どころか3分の1程度しか取れなかった


www3.nhk.or.jp


 これを切っ掛けに、野党共闘が調整や政策決定などで更に深化していけばよい、と思います。

 ただでさえ問題山積の横浜市です。横浜では立憲、共産を合わせても少数与党だし、政治経験のない山中氏の政治家としての資質もまだ判らない。

 市民は政治に関心を持って監視していかなければいけない。これからが大変でしょうけど、何とか成功例を作って欲しいものです。政治は選挙の日だけで終わるものではありませんよね。


 先日の 『日本のいちばん長い日』に続いて、アマゾンプライム岡本喜八監督の映画を2本見ました。
59年の作品、『独立愚連隊
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第二次大戦も末期、北支戦線の日本軍に各隊のクズばかり集めて作った独立愚連隊と呼ばれる小隊があった。ある日 日本軍が駐屯する将軍廟という村へ従軍記者荒木(佐藤允)と名乗る男がやってくる。男は何やら人探しの調査を開始するが


60年の作品、『独立愚連隊 西へ
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第二次大戦も末期の北支戦線。歩兵第四六三連隊は八路軍に攻撃を受け、軍旗を抱いて脱出した北原少尉を残し、玉砕した。師団本部は将軍廟の第四六三連隊留守隊長大江大尉に軍旗捜索を命令し、増援隊として現役小隊を派遣した。その小隊は、隊長左文字少尉(加山雄三)以下、日本軍隊からは厄介者扱いを受け、危険な戦線ばかりを転戦している独立愚連隊と呼ばれる部隊だった。

 どちらも太平洋線末期、中国戦線が舞台のエンターテイメントです。戦争ものと言っても西部劇を意識した構成で、日本軍とはみ出し者揃いの独立愚連隊、それに国民党軍、八路軍満州馬賊従軍慰安婦たちが登場します。
 シリーズ第1作の『独立愚連隊』はヒットしたものの、公開当時は好戦的という評価もあったそうです。ボクの感想は全く違います。

 これはエンターテイメントでありながら、徹底的な反戦映画です。
 ここでの日本軍は中国人捕虜を遊びのように虐殺し、空いた時間には従軍慰安婦たちと享楽にふける、思い切り腐った軍隊です。
●遊びで中国人捕虜を撃ち殺そうとする日本軍将校を止める主人公(写真右、佐藤允
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 『独立愚連隊』では日本軍の隊長は気が狂ったふりをして前線を逃げ出すし、残された代理の隊長も部下に不祥事の責任を押し付けるような私利私欲を追及する輩です。
従軍慰安婦雪村いづみ)、隊長(三船敏郎)、主人公(佐藤允
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 『独立愚連隊 西へ』ではボロボロの布切れに過ぎない軍旗を探すためだけに上層部は大勢の日本兵を犠牲にします。
左文字少尉(加山雄三)と戸山軍曹(写真右、佐藤允)。加山雄三は映画デビューだったそうです。
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 どちらの映画でも戦争の意味なんか全くない。そして日本軍は中国の大軍の前に次々と死んでいく。あとには何も残らない。
フランキー堺八路軍隊長(写真右)はサイコーでした。
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 ここでは慰安婦たちも一人の人間として描かれます。『独立愚連隊』で雪村いづみが演じる慰安婦は、元は看護婦だったが主人公を追いかけて軍に同行する慰安婦になった、というキャラクターです。その悲恋には心を打たれます。慰安婦たちには日本人も朝鮮人もいることもきちんと描かれるし、戦争孤児の姿や中国の一般庶民が蒙った迷惑もちゃんと描かれる。

 そんな悲惨な背景の中で、たくましく生きていこうとする主人公たち。それが西部劇調に描かれることでエンターテイメントになっているのですから、岡本喜八監督の手腕、演出には舌を巻きます。どちらの作品ともクライマックスでは感動する。エンタメの鏡です。
上原美佐演じる謎の中国人女性。冒頭と終盤に登場するこの人も実に良いキャラだった。
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 この映画を見ると、日本軍が中国へ何をしにいったか、ということが、とても良く判ります。当時の出演者やスタッフは軍隊帰りの人が大勢いたそうですから、戦場シーンもリアルだそうです。徹底的に軍隊のバカらしさが描かれる中 馬賊というファンタジーの要素を織り交ぜながら、人間は如何に自由に生きていくか、ということが追及されます。
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 今の日本を見ていると日本人って劣化していると思うじゃないですか。社会は同調圧力で息が詰まりそう。他人の足は引っ張るけれど、自分では大したこともしない。選挙すら行かない。減税とか補助金のことは口にするけど、どうやって未来を作っていくかという議論は甚だ希薄。


 でも岡本喜八の映画を見ていると、どうしようもない日本的社会のバカらしさを告発しつつも、自分のやりたいように自由に生きる日本人の姿もまた、発見できるのです。日本人は必ずしも自ら長いものに巻かれる奴隷臣民ばかりじゃないことがわかるんです。
 今のような時代だからこそ、組織や権威に関係なく自由に生きる主人公たちの姿は一つの希望に見えました。

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