特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

バラが無くちゃ生きていけない:『ローズ・ブーケのソフト』と『ムーンライダーズ45周年ライブ』(moonriders 45th anniversary “THE SUPER MOON”)

 関東も今日から梅雨入り。
 この2か月弱、徒歩圏内でしか生活していませんでしたが、この週末はお出かけをしてきました。

 まずは渋谷から北参道へ歩いて、いつものソフトクリーム屋さん。店の名物、『季節のソフト』はいちごからローズ・ブーケに変わっていました。バラの甘い香りと自家製ミルクのハーモニーが素晴らしい。

 この辺りは交通規制も始まったし、どことなく物々しい。ボクの知る限り国立競技場近くに住んでいる人は全員オリンピック反対ですが、最近はこの辺りから変異株が広まらないか、住民の間で不安が広がっているそうです。知り合いが『オリンピックなんて狂ってる』と吐き捨てるように言ってたのが印象的でした。


 そのあとは六本木へ徒歩で移動。
 日本最古?のロックバンド、ムーンライダーズの45周年ライブがあったんです。ライブに行ったのも昨年2月末のPerfume以来。
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 さすがにライブはちょっと怖いなーとは思ったのですが、大好きなムーンライダーズだからリスクを冒す価値あり、と判断しました。バカには判らない音楽なので、客にもアホはいないと思いましたし。


 
 ボクは日本のバンドでは、ムーンライダーズが一番好きなんです。高校生の時からずっと聞いている。このブログの第1回もムーンライダーズのネタです。漫画家の江口寿史山本直樹など色んな人に色々な影響を与えたバンドですけど、ボクもゴダールの映画のようにムーンライダーズを聞いていなかったら知らなかったものが沢山あります。

 明治期の私小説からの伝統なんでしょうか、日本の音楽の歌詞ってフォークでもロックでも歌謡曲でも自意識過剰で気持ち悪いものが多いですが、ムーンライダーズはシャイだけどクールな歌詞が良いし、演奏もカッコいい。日本でほぼ最初にシンセサイザーを使い始めたり、常に最先端のテクノロジーを取り入れてきたバンドでもあります。
●10年前のライブにて『スカーレットの誓い』:バラが無くちゃ生きていけない

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 メンバーはスタジオ・ミュージシャンもやっていて映画やゲーム、CMの音楽も多々手掛けていますが、ムーンライダーズとしては資生堂ミノルタを始めとして様々なCMタイアップをやっても全く売れなかった(笑)。
 ムーンライダーズの音楽は、ボクはいたってノーマルと思ってますが、友人家族、誰に聞かせても『変だ』、『ひねくれている』と言われます。レコード会社に『難解過ぎる』と言われて、作ったばかりのCDが発売中止になったりもした。
●ちょうど今週発売された昨年の無観客ライブ。この演奏も凄い。
 


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 メンバーは皆、アラ70歳(笑)、この10年くらいはメンバーの入院もあったし、ドラマーのかしぶち哲郎氏は亡くなってしまいました。10年前の35周年ライブで活動休止を宣言したのですが、
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その後 活動休止の休止を宣言(笑)、活動を続けています。

 入場時に手指消毒、検温、マスク、おしゃべり/歓声禁止。場内は換気もガンガンやっています。ボクはN95マスクをしていきました。

 演奏は4人のメンバーでのアコースティック演奏(ギター3本+バイオリン)で始まりました。これは誤魔化しが利きません。気合が入っているのがよく判ります。
 中盤以降は若いバックミュージシャンが7人加わった’’スーパー・ムーンライダーズ’’仕様の演奏。これは一段と良かった。トリプルドラムにツインベースの重くて跳ね回るリズム隊、それにサックスとトランボーンにメンバーの武川雅寛氏のトランペットが絡む。12人という大人数ですが、音に無駄がない。
 選曲も普段はライブでやらないような珍しい曲が多いだけでなく、アレンジも全く変えている。それでもほとんどの曲は知っていますけど、最近は人間だけでなく曲名も思い出せないんだよなー(泣)。
 テクノロジーにしろ、演奏にしろ、元々必ず新しいことをやってくるバンドですが、相変わらず攻撃的というか、攻めている。

 人間、70にもなったら良くも悪くもゆったりした、レイドバックした演奏になりそうなものですが、この日の演奏は今まで見たムーンライダーズの演奏で一番上手い、と思いました。
 ムーンライダーズはシンセだけでなく、演奏にコンピューターを利用し始めたのも元祖みたいなものです。今や殆どどんなバンドでもコンピューターでカウントを取りながら演奏している。しかし、今のムーンライダーズはコンピューターは全然使っていない、人力の演奏です。2時間休みなし、若いミュージシャンをうまく使って躍動感を作り出している。

 若い時はテクノロジー命だったバンドが歳をとるにつれ肉体回帰していくのは面白いです。もしかしたら、アラ70歳ばかりのこのバンド、今が絶頂期なのか。
 アンコールで、今年初めに自宅前で転んで入院、リハビリを終えて、前日に退院したばかりのキーボードの岡田徹氏が加わったのも感動的でした。

 単に演奏が良かっただけでなく、自分がどうやって歳をとっていくかも考えさせられるような充実した2時間でした。最後に鈴木慶一氏は『50周年もやるぞ』と言ってましたので、それを希望に生きていこうと思います。