特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『報道1930(''人新世の資本論''特集)』と『首吊りの国』(ムーンライダーズ)

 今日の東京は梅雨の合間の気持ちの良い晴れ。
 しかしオリンピックはやるようですし、心は晴れません。

 政府は政権の維持と電通パソナの利権の方が国民の命より大事なんだから、まったく酷い国です。

 でも政府の目論見通り、バカな日本人はオリンピック中継を見て忘れちゃうんだろうなー。元々甲子園みたいな旧日本軍のパロディを見て本気で喜んでいるような人種です。そのあと変異株がやってくるにしても、その時はその時で記憶から消去されているのでしょう。

 政府も酷けりゃ、大都市の知事もクズばかり。それを選んだ日本人ってどれだけ特殊な有権者(つまりバカ)が揃ってるんでしょうか。

 


 さて、先週11日の金曜日 BS-TBSの『報道1930』に『人新世の資本論』の著者、斎藤幸平氏が出演していました。約1時間の特集です。

 なんでも『人新世の資本論』は32万部も売れたそうで、大ベストセラーです。

 この本の内容を一言でいうと『地球の温暖化などによる環境破壊を食い止めるにはSDGsなどでは間に合わない。不必要な仕事を創ってまで成長しようとする資本主義そのものを見直すしかない』というものです。
●日本を含む世界の富裕層10%が二酸化炭素の大半を排出している。斎藤氏は格差が温暖化を作り出しているというのです。

 『広告代理店やコンサル、金融などの虚業が本当に世の中にとって必要なのか』、『感染リスクに耐えながら世の中に不可欠な仕事をしているエッセンシャルワーカーとテレワークで高給を貪る代理店やコンサル、金融との格差など、今回のコロナで理不尽な格差が可視化された』という著者の指摘は全く同感です。あと、本の中で指摘されていた『稀少性の議論』は非常に刺激的でした。ここは勉強になった。

 しかし『資本主義はもう無理。マルクスをよく読んで(笑)脱成長コミュニズムを目指そう』という結論は噴飯もの、子供の議論にしか思えません。今の資本主義はロクでもないけれど、どうしてそれがいきなり、コミュニズムに結びついちゃうのか(笑)。同じ左翼の白井聡もそうですが、『(机の前に座ってるだけじゃなく)ちゃんと、自分でまともに働いてからモノを言え』と思ってしまう。全員とは言いませんが、学者だってある意味、虚業です。
 そういえば、番組では斎藤氏の『1日ウーバーイーツ体験』等も紹介されていました(笑)。それくらいで働いたつもりになってんのか。舐めてんのか(笑)。

 ボクは斎藤氏の言ってる事より、コメンテーターのパックンの『主旨はよく判るけど、斎藤氏の言ってることはSDGsと同じ、資本主義社会の微調整に過ぎない。コミュニズムとか言わないで、素直に微調整と言えば賛同する人も増えるのではないか』がしっくりきました。
 番組で解説を担当する堤伸輔氏は『コロナ禍にうまく対応できたのは女性政治家がトップだった国が多い。それらの女性政治家に共通しているのは人々のエンパシー(共感)を大事にしたことだ。コミュニズムより、70近い爺さん政治家を退場させて女性に置き換える方が速いのではないか?』と指摘していました。おお、同志!(笑)。パックンの指摘にも堤氏の指摘にも、斎藤氏はもぐもぐ言うだけでまともな反論はなかったですが、そういう事です。

 斎藤氏の指摘は新鮮に聞こえる部分もありますが、所詮は昔の左翼と同じように革命幻想を振りまいてるだけです。
 例えば彼は本の中で『企業の自主管理』を強調していますが、40年前のチリの失敗とか判って言ってんのか、と思ってしまう。競争をしなければいいと斎藤氏は言いますが、競争がない組織は東電のような独占企業やソ連共産党のように必ず腐る
 そもそも、この複雑な時代に経験も知識もない社員がいくら集まっても、高度な経営戦略どころか運営だって出来る訳がないのはバカでも判る。逆にそんなことすら判らないのが、能天気な日本の左翼(笑)。

 バカウヨの『ニッポン、サイコー』のような妄想も困りますが、こういう安易な革命幻想にも困ったものです。『消費税廃止』もそうですが、人間、どうしても単純かつ現実を無視した解決策もどきに頼りたがるものです。人間の性かもしれませんが、それでは問題は解決しない。
 現実は複雑だし、判らないことが沢山あるけれど、それでも向き合いながら一歩一歩、改善していくしかないんだけどなあ


 さてさて 先週土曜日にムーンライダーズを見に行って、久方ぶりに感動(笑)、今週はずっと旧作を聞き直していました。
●当日の模様

 その中で91年の傑作『最後の晩餐』のこんな歌詞に気が付きました。

最後の晩餐

最後の晩餐

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黄色い月の黄色い海に、黄色い肌の強いボクの姿
神がいる国だから国民はいない
怖いものなんか生まれたときから、ボクたち知らないやい

はい!はい!はい!はい!憲法の中で
はい!はい!はい!はい!銃を下げて
はい!

つんつんてる天の脳みそをからかわれたら相手を殺すだけさ。
首吊りの国に悪い奴なんていないやい
片言の言葉話すことだけじゃ、君たち住めないやい

はい!はい!はい!はい!ニュースの中で
はい!はい!はい!はい!嘘をついて、はい!

『はい!はい!はい!はい!』

www.youtube.com

 比喩やメタファー、嫌味(笑)は使っても『直接的な言葉遣いなんか粋じゃない』と言うバンドが『首吊りの国』なんてストレートな言葉を使っていたのは意外でした。曲自体はあまり好きではなかったので当時は聞き流していたんですが、91年の時点でもう、そうだったんだ、この国は。

 今週16日に日本とアメリカ、対照的な記事を読みました。
 日本では東大や京大の学生の就職先として国家公務員の人気がダダ下がり、外資系コンサルを選ぶ人が増えている、というのは随分前から言われています。
www.asahi.com

 そりゃあ、当然です。今は昔のように公務員の給料が民間に比べて安いなんてことはないですが、極端に高いと言うわけでもない。大量の残業に耐えながら苦労して仕事しても、やらされるのはバカな政治家の尻ぬぐいと忖度、場合によっては自殺にまで追い込まれる。そんな職業に就きたいなんて思う人は普通、居ませんよね(笑)。

 優秀な人だったら残業は同じように多くても、給料は高い、男女の差は全くない、若くても実力本位で仕事が出来る外資系コンサルに行くのは当然です。各種の白書が典型ですが、今は官庁の仕事も外資系コンサルや野村総研に丸投げしてることも多いから、やる仕事は同じでも給料は遥かに高い、なんてこともあり得る(笑)。
 
 優秀な学生ほど、バカらしくて日本なんて国は相手にしてられない(笑)と思っている。この国の衰退を端的に象徴する出来事でもあります。

 

 一方 アメリカではどうか。同じ16日にアメリカの公正取引委員会連邦取引委員会(FTC)の委員長にハーマン・カーンという32歳の女性が選ばれました。日本もアメリカも巨大企業を抑えるには独禁法が最大の武器です。それを司る公正取引委員会/FTCの役割は非常に大きい。本来は最高裁長官より大きいと思う。
www.nikkei.com

 彼女は名前から想像できるようにパキスタン系。クイーンのフレディ・マーキュリーと同じようにロンドンのパキスタン系の家庭で育ち、11歳で渡米。911直後にイスラム系に向けられた差別に直面したことで社会の不公正さに関心を持ち、独禁法を武器に戦おうと思ったそうです。
 彼女がエール大の法科大学院に在籍中に書いた、アマゾンを独禁法で規制すべき、と言う論文「アマゾンの反トラスト・パラドックス」を大統領候補のエリザベス・ウォ―レン氏が取り上げる等 大きな反響を巻き起こしたのはボクも耳にしていました。

 彼女は「消費者のみに焦点を当てる考え方が、我々をアマゾンの強大な力に対して盲目にした」と言っているそうですが、確かに鋭い指摘です。頭いい。
 企業の独占的な行為を消費者に対する直接的な影響があるものだけに絞る理由なんかどこにもない。社会の利益のためには、競争を阻害する独占的な行為があるかないかが問題の筈です。目からウロコ、でした。

www.nikkei.com

 アメリカは大きな問題を抱えた国であるにしても、優秀なだけでなく社会をより良いものにしようというパキスタン系の32歳の女性が政府機関のトップに抜擢されるような国でもあります。このこと一つとっても、やっぱりアメリカのダイナミズムには敬服せざるを得ません。
 と、同時に日本とのあまりの違いに頭が痛くなります。やはり日本は自ら自滅する『首吊りの国』かな(笑)。