特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『お皿の上の物語』と『マルクス・ガブリエル氏の講演''New Normality''』

 コロナの感染はいよいよとどまるところを知りません。
 誰がいつかかっても不思議ではない状況。それに加えて、バカ政府やアホ知事連中は国民に責任をおっかぶせるばかりで、まともな対策をとらない。

 空襲には防空頭巾を被れとか町内会で消火しろとか言ってただけで政府はまともな防空手段を取らなかった、太平洋戦争もこんな感じだったんでしょうね。広島の原爆なんか空襲警報を解除したところで落とされて被害を大きくしたんだから。

 結局は個人任せ。マヌケ政府やクズ知事は税金を取るだけの役立たず。とにかく遅いし、ピントがずれてる。

 どうぞ皆さま、お気を付けください。 


 さて、これは少し前に近所のレストランで食べた『桜エビと香茸とアマゾンカカオのパスタ』です。

 
 珍しい組み合わせですが、美味しかったです。静岡のサクラエビと岩手の香茸、海と山の強い出汁が手打ちパスタに染み込むことで、溶け合ってます。その上からアマゾンで作ったカカオがまろやかさを加えています。

 ボクは『創作料理に上手いものなし』と思ってますが(笑)、ここのシェフはNHKでパスタを教えてたりするだけあって、オーソドックスなところもちゃんとしているので、まあいいかな、と(笑)。
●ソムリエ氏が合わせたワイン。Vivinoというアプリでボトルの写真を撮るとAIがネット上の画像を検索して、銘柄から凡その値段まで判別します(画像下)。AI、恐ろしい(笑)。


 このパスタを食べるときに店の人から聞いたお話をしようと思います。

 静岡名物のサクラエビは、ここ数年 不漁が続いています。特に今年は史上最低だそうです。

www.at-s.com


 原因は資源の乱獲とも、湾に流れ込む富士川水質汚染とも、言われていますが、はっきりしない。多分両方なのでしょう。
www.at-s.com

 今年春にはあまりの不漁に『乗り子』と呼ばれるエビを取る漁師さんがおおよそ700人のうち50人くらいが集団退職すると言う騒ぎが起きました。

 国の補助で手厚く守られている船主とは対照的に、乗り子は不漁で一か月の給料が数千円にしかならない人もいる。乗り子さんたちは『船主と乗り子で50:50だった取り分を変えてくれ』という要求を出したそうです。昔は乗り子が60、オーナーが40の取り分だったのが、近年はオーナー側の取り分が増えてしまった。ここにも新自由主義の影響が出ている。
www.at-s.com

www.at-s.com

 資源の問題だけでなく、労働者と資本家の報酬の配分だって持続可能性の問題です。静岡のちゃんとしたフレッシュなサクラエビはもうすぐ食べられなくなるのでは?と言う話はここ数年 色々なレストランでよく聞きます。 


 香茸はスーパーなどでは見かけない、あまり馴染みがないキノコです。強い香りはマツタケとも比べられるそうですが人工栽培が難しく、東北など産地も限られるそうです。この店はジビエをやっているので岩手のマタギさんが猟の間に見つけてくるものを使っています。西洋のポルチーニ茸(セップ茸)に近い味・香りです。

 ところが、最近は店で使えるキノコが減っているそうです。野生のキノコですから、311以降は放射性物資がたまっています。勿論 検査して出荷されていますが、近年は放射性物質の濃度が濃くて使えないものが増えているそうです。岩手のマタギさんだけの話ではありません。
www.asahi.com

 こんなところにも、原発事故はまだまだ終わっていないことを改めて実感します。


 カカオはご存知の通りチョコレートの原料ですが、カカオベルトと呼ばれる赤道を挟んで緯度が上下20度の地域で栽培されています。主に先進国で消費されますが、カカオは国際市場や政府の定める安価な価格で取引され、農家の多くは日々暮らしていくために十分な収入が得られず、児童労働などの温床になっていることが世界的に問題になっています。
 それに対して一部ではフェアトレードやチョコレート屋がカカオ豆の栽培から携わる『ビーン・トウ・バー』などの取り組みが行われていますが、まだまだ足りません。
dandelionchocolate.jp

 このパスタに使われたカカオは、店にワインを卸していた人が一念発起、フェアトレードを志してアマゾンで自ら栽培を始めたものだそうです(笑)。店では、彼を応援するためになるべく、それを使っていると言ってました。

 チョコレート大好きなボクは、なるべくフェアトレードビーン・トウ・バーのチョコを買うようにはしてますが、入手できる機会自体が少ない。結果として発展途上国の搾取や児童労働に加担していると言えなくもありません。かといって通常のチョコレートやカカオ製品をボイコットしても解決するような問題でもない。難しい問題です。
 

 サクラエビ、香茸、カカオ、素晴らしい組み合わせでしたが、それぞれ難しい問題を抱えています単純に日本の自然環境や資源を守れという話で済む話ではありません


 TPPを反対する人が良く『日本の農業を守れ』とか言ってましたが、ちゃんちゃらおかしいと思ってました。現在の日本の農業は石油をじゃぶじゃぶ使い、現代の奴隷制度=技能実習生で成り立っています。TPPに反対しても日本の農業が守れるわけでは全くない。
 日本の農業は安全性や味などで差別化すると同時に、機械化・大規模化で生産性を高めると同時に、自由貿易で海外への輸出を増やしていく以外にはない。他の産業と一緒です。


 料理の説明をしてくれるお店の人の話を聞きながら、環境汚染、労使の不公平な配分、原発事故、発展途上国との不公正な貿易(南北問題)、様々なことが思い浮かびました。パスタ一皿とっても我々の生活は様々な問題を抱えていると改めて思いました。


 昨日は、今を時めく?哲学者のマルクス・ガブリエル氏のオンライン講演を聞いてきました。

 この人の対談本『未来への大分岐』や『全体主義の克服』は本屋でも大きく扱われたベストセラーになってますよね。

 

またE-TVが今夏、この人の連続番組を放送していたのをご覧になった方も多いと思います。

 この人は、80年代から90年代にかけて流行った「全体の構造、関係性の中では全てのものは等価である」という相対主義構造主義を越えて、『世の中には普遍的なものが存在するという新実存主義』という立場を唱えている人です。一言で言うと、『世界には普遍的なものはない、という普遍的なものがある』という風にボクは理解しています(違っていたら教えてください)。

 ボクはロックファンなので、実存を信じています。ビートに合わせて踊ることで生じる肉体的感覚は構造によって生じるものではなく、確かに関係性から独立して実在しているからです。

 何より、関係性の中では全てのものは等価、とするのは世の中に対して害が大きすぎる、と考えるからです。バカウヨの陰謀論歴史修正主義はまともに論じることすらしちゃいけないでしょう。そんなものは等価じゃない。
 言論の自由は重要だけど、一定の限度を超えると社会に害をもたらします。一般的なモラルなんてボクは信じませんが、人間には最後の守らなければいけないラインがある。それが普遍的価値だと思います。


 ガブリエル氏の講演は最初に『ユニヴァーサル・バリュー』(普遍的価値)と『New Normality』(新しい価値基準)についてお話します』、と宣言して話が始まりました。最初にポイントを述べるのは、海外の人に良くある判りやすいプレゼンのスタイルです。

 ユニバーサル・バリューについて、彼はこう言っていました。

 今回のコロナ渦でモラルの革新が始まっている。マスクをすることは自分だけでなく他人を慮って、社会を感染から守ることでもある。アジア圏では従来からそういう習慣があったが、そういう習慣がなかった欧米でも広がりつつある(例外もあるが)。
 資本主義についても同じで、どうやって自由市場を守っていくが、維持していくかが課題になっている。そのためには児童労働の禁止や環境対策など『他人を傷つけてはいけない』という発想が強くなってきた。ブラック・ライヴズ・マターが黒人だけでなく白人にも拡がりをみせているのも、多くの人が『他人を傷つけてはいけない』と考えるようになったからではないか。

 私は共産主義者=COMMUNISTではない。しかしCO IMMUNISD(共同で免疫を持つ者)ではある。人間は共同しなければ生きていけないことが明確になりつつある。
 人間は科学や技術の進歩で他の人間、環境、動物に対して多大な影響を及ぼすようになっており、それだけの責任がある。

『新しい価値基準』については以下のようなことを言っていました。

 例えば疫病学者は、コロナの感染を防ぐためには他人と会わないのが最良の対策と考える。しかし、それは現実的ではない。経済学が唱える自由市場などの概念も同様である。ある意味 科学はプロパガンダの性質を持っている。
 Qアノンのような陰謀論がはびこるのは科学がプロパガンダの一面を持っているからではないか。科学は一見 客観的なものに見える。しかしコロナも気候変動も示しているものは所詮『モデル』であり、現実とは異なる。コロナはモデルより被害は少なめだし、気候変動はモデルより遥かに進行は深刻である。
 いずれにしても科学は現実と異なる場合もあり、そこに陰謀論が付け込んでくる隙がある。
 それを打ち破るには共同・協力という価値基準が必要ではないか。科学や技術が進歩したように価値基準(モラル・倫理)も進歩させていく必要がある。
 私は資本主義を否定はしないが、今のまま続けていくのは難しいことが今回のパンデミックで明らかになった。特に気候変動への対応には時間的余裕はほとんどない

 物事は全て良い方向に進んでいるわけではないが、今回のパンデミックによって『モラルの革新』の萌芽がでてきたこと、そしてトランプを排除できたのは、人間にとって最後のチャンスではないか

●記事によると2035年には本州の半分くらいの広さに相当する100万平方キロメートルの陸地が水没するそうです。


 講演の内容は最近 彼が話している事と重なります。例えば、これ↓。
www.vogue.co.jp

 ボクはガブリエル氏の言ってること全てに賛同するわけじゃありませんが、今回の禍を奇貨として、チャンスにしなければいけない、というのは賛成です。仕事でも生活でも、世の中がマシな方向へ進むためのチャンスを諦めずに見つけて行かなければいけない。それが今、一人一人が出来ることだと思います。



 と、いうことで感染症の拡大で今週も金曜官邸前抗議はオンラインです。