特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『BABYMETAL広島公演「LEGEND − S − 洗礼の儀 − 』と『gifted/ギフテッド』

めっきり寒くなりました。この週末は広島へ行ってきました。
BABYMETAL広島公演「LEGEND − S − 洗礼の儀 −」を見にいったのです。坂本九以来40年ぶりに全米チャートに入るなど、今や世界的に活躍するバンドになったBABYMETALですが、ヴォーカルのSU-METALちゃんは広島出身、20歳を迎えた凱旋公演です。


このところ、年1回くらいは地方のコンサートへ出かけています。会場は東京より小さいし、地方の雰囲気も味わえるし、会場までの一人旅も情緒があって、なかなか楽しい。
今回は羽田発の飛行機も会場の隣のリーガロイヤルホテルもメタルTシャツを着たロックジジイ・ババアばかりで異様な雰囲気でした。交通費や宿泊を考えると年齢層はいつもより遥かに高いということなんでしょう。ちなみにボクはBABYMETALは好きですが、メタルは大嫌いです(笑)。頭悪いんだもん。
●開演前に食べた広島「みっちゃん」のお好み焼き。香ばしくて美味しかったです。ジャンクですけどね。

●会場周辺の光景。寒空で30分、入場を待たされました(泣)。

ショーの方はダンス&お囃子のYUIMETALちゃんが病欠と言うピンチでしたが、それを二人でカバーしていました。日本ではTVには殆ど登場せず、海外で数万単位の観客を相手にしているBABYMETALですが、この日は歌もダンスも鬼気溢れるような感じがしました。ヴォーカルのSU-METALちゃんは確かにロック・ヴォーカリストとしてはAクラスではあることは間違いありません。これでまだ二十歳なんですから末恐ろしい。もう一人のダンス&お囃子のMOA METALちゃんも孤軍奮闘で踊り続ける指の先まで気合が入っている感じでした。




*写真は全て過去の衣装を着た影武者と戦うSU-METAL(Vo, Dance)。(Photo by Tsukasa Miyoshi [Showcase]) [画像ギャラリー 3/10] - 音楽ナタリー

メタリカと。今までメタルなんて長髪とデブの汚いジジイばかりだったんですから、こんな娘たちが参入すれば、超一流ミュージシャンだって赤子の手をひねるようなものです。孫娘の運動会を見に行っているようなものでしょう(笑)


かってないくらいセットは大規模だし、演奏は和太鼓と組み合わせるなど新機軸もあったし、SU-METALちゃんの声も良く出ていたし、充実したショーでした。ただ、ちょっと疲れたかな。BABYMETALはダンスとメタルを組み合わせた素晴らしいイノベーションだし、好きなバンドであることは間違いありませんが、次回は新曲が出るまで、いいかなという気はしました。そもそも翌日のホテルの朝食時までメタルTシャツ着てるオヤジ・オバハン連中と一緒なのも嫌なんだよなあ(笑)。

●広島の夜景。広島は市の中心部を川が流れる、実に美しい街です。しかし、夜の静けさの中で光に照らされた原爆ドームを見ていると、かって起きたことの凄惨さが深く感じられます。





●お土産の『うえの』の穴子飯。これは美味しいです。宮島の本店で食べると1時間待ちですが、三越で普通に売ってました。



ということで、日比谷で映画『gifted/ギフテッド

7歳の姪、メアリー(マッケンナ・グレイス)と片目の猫フレッドと共に、フロリダの小さな町で生活している独り身のフランク(クリス・エヴァンス)。貧しいながらも平凡な家庭だったが、学校に通い始めたメアリーは数学の天才だったことから周囲に波乱が巻き起こる。フランクは天才ではなく、普通の子供と同じように育ってほしいと願っていたが、元研究者だった祖母エブリン(リンゼイ・ダンカン)は二人を引き離してメアリーに天才向けの英才教育を受けさせようとする。



(500)日のサマーアメイジングスパイダーマンのマーク・ウェブ監督の新作です。ハリウッドの超大作で懲りた?ウェブ監督がウェルメイドな路線に回帰して作った作品ということで期待大です。
●メアリーとフランク。貧しいながらも叔父と姪は仲良く暮らしています。


メアリーとフランクはフロリダの貧困者向けの住宅で暮らしています。フランクは元ボストン大の哲学の教授でしたが、訳あってボートの修理をして暮らしています。メアリーは数学者だったフランクの姉の子。自殺した姉に代わってフランクが育てています。

メアリーは登校初日 いきなり数学の才能を発揮して、周りをタジタジにします。学校はフランクに奨学金付きの英才教育学校に転校するよう勧めますが、フランクは『メアリーを普通の子供、子供らしい感情をもった子供に育てたい』と頑強に拒否します。


数学の天才って縁がないんでわかんないんですが(笑)、アメリカには天才向けの英才教育の仕組みが整っているんですね。優秀な子どもを見つければ飛び級はもちろん、特別な教育を奨学金付きでやっている。日本とはまったくえらい違いです。ちなみにマーク・ウェブ監督は祖父が数学者、父親も数学関係だったそうです。一般にはなじみが薄い題材ですが、彼にとっては身の回りの出来事なんですね。


やがて話を聞きつけた、富豪の妻で元数学者だったフランクの母、メアリーの祖母がフロリダにやってきます。母親の強烈なプレッシャーで姉が自殺した後 フランクは音信不通のまま東海岸からフロリダに逃げていたのです。強引な祖母はメアリーの親権を取り上げようとして、裁判に訴えます。
●祖母はメアリーに英才教育を受けさせるため、フランクと引き離そうとします。


メアリー役のマッケンナ・グレイスと言う子は天才です。数学ではなく、演技の。可愛らしいところ、大人らしいところ、見事に演じ分けています。担任の教師がフランクと寝たのを見つけたときの彼女の表情と言ったら(笑)。彼女のことは色んな人が絶賛してますが、確かに この子すごい。


フランク役のクリス・エヴァンスキャプテン・アメリカ役として有名な人ですが、ボクはそういう映画は見たことがないので全然わかりません。でも、この作品では良かった〜。大仰にもならず、影があるシングルファーザーを熱演しています。本当に良かった。久々に男性の登場人物に感情移入できました(笑)。

一点だけ この人はメアリーの元担任だった若いねーちゃんではなく、隣人でメアリーの親友、オクタヴィア・スペンサーとくっついてほしかった(笑)。9月に公開された『ドリーム』の名演が記憶に新しい、アカデミー女優のこの人は当然のことながら、実に渋い好演を見せています。
オクタヴィア・スペンサー演じる40代の隣人だけが、メアリーの親友です。

●メアリーの担任教師は陰のあるイケメンのフランクに惹かれてしまいます


映画はほのぼのとした雰囲気にあふれていますが、深い陰影に彩られています。そのなかでメアリー役のマッケンナ・グレイスとクリス・エヴァンスが文字通り 愛を体現してみせます。そういうものは安易に信用しないボクですが、今回 二人の演技には見事にやられました。説得力がある。素晴らしいです。


丁寧な演出を積み重ねていく監督の手法は見事です。善悪を強調するような単純な描写は避け、深みのある登場人物像を描いています。それに今作は特に、音の使い方が非常にうまかった。ただ、脚本はちょっと凝りすぎていたかもしれません。
最初から最後までハートウォ―ミングな温かさに溢れた見事な作品です。やっぱり、マーク・ウェブ監督は、人間ドラマのほうが似合います。