特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

読書『世代の痛み』と映画『ザ・サークル』

11月もそろそろ終わり、一段と寒くなってきました。映画館に行くと来年公開の映画のチラシが置いてあります。うーん(笑)。せわしい年末は嫌だなあ。忘年会とか思いついた奴って死んでほしいです。


日曜朝の朝日新聞に前原と小池の選挙前の密談の模様が載っていました。それをセッティングしたのが自称ジャーナリストの上杉隆で、三権の長経験者を排除するというアイデアを出したのも上杉だったそうです。

小池氏「護憲、遠慮願う」前原氏「当たり前」深夜の密談:朝日新聞デジタル


度々触れていますが、自称ジャーナリストの上杉隆というのは病的な嘘つきと言っても良い人物です(ネットでググれば山ほど証拠は出てきます)。番組の降板理由のウソに始まり、経歴詐称に読売新聞の記事盗用、311の時は福島は人が住めなくなるというデマを振りまいていた奴です。前回の都知事選に立候補して落選、今回も希望の党から立候補が噂されていました。そんなペテン師が絡んでいるというだけで、新党がうまくいかないのは誰でも判る(笑)。そんな嘘つきに載せられる前原も小池も玄葉も救いがたいアホとしか言いようがありません。連中がここまでアホだとは思わなかった。


一方 トランプの中国訪問はとりあえず、北朝鮮と話し合いをしようということになったみたいじゃないですか。中国の特使が北朝鮮に何を言いに行ったか知りませんが、とりあえず話し合いは行われる。武力行使で得する国はどこもないんです。なんでもいいから話し合いで解決してくれ、それしかありません。それにしてもトランプは故宮接待と何兆円ものお土産で、中国の手のひらで転がされている感じがしましたね。


さて、軽い読書の感想です。『世代の痛み
学園紛争と高度成長を体験した団塊世代」の上野千鶴子就職氷河期のため安定した雇用に恵まれなかった団塊ジュニア」である雨宮処凛の対談本です。

ボクは団塊世代でも、その子供の世代である団塊ジュニア世代でもありません。また世代や性別による差より個人の差の方が遥かに大きいと思っていますから、世代論はあまり好きではありません。せいぜい『団塊世代はバカが多い』くらいの感想でしょうか(笑)(失礼)。安保法反対当時 国会に突入しろとか無意味なことを言って暴れてたのは団塊のボケジジイばかりでしたから。
だからこの本の中で語られている世代論はあまり関心が持てません。が、上野千鶴子雨宮処凛という個人の対論本としては非常に面白かった。以下のような点が印象に残りました。
今の世の中の生きづらさは少なからず、日本の社会を動かしてきたオヤジ同盟の政策的合意によって動かされてきたことに起因していること』、
多くの人が弱者になりつつあるのに弱者を排除し忌み嫌う『ウィークネス・フォビア』(弱者による弱者タタキ)が蔓延していること』、
団塊世代がまともな家族像を提示するのに失敗し、政治活動も無残に失敗したことで、団塊ジュニア世代に家族や政治への幻滅を与えてしまったこと


これが世代論として語られるなら、統計的な数値が踏まえられていないとかケチがつけられるのですが、上野、雨宮それぞれが過ごしてきた人生として語られるから、説得力があるし、面白いです。団塊団塊ジュニアもボク自身はどうでもいいし、興味もない。団塊ジュニアのあとの世代にはSEALDsのようなしっかりした子たちが育ってきているわけですし。が、二つの世代間の親子関係に今、想定外の未婚・長寿・介護などの家族リスクが襲いかかっているのは他人事ではない。面白かったので電車の中でするすると読めました。手軽に読める新書なので機会がありましたら是非。



ということで、六本木で映画『ザ・サークル

派遣社員から転職し、世界一のシェアを誇るSNS企業「サークル」に勤めることになったメイ(エマ・ワトソン)。サークルは社員を互いに仲間扱いし、カリスマ経営者ベイリー(トム・ハンクス)は、何もかもオープンな社会を理想としていた。ある日 メイは自らの24時間をネットワークで全世界に公開するモデルケースに選ばれる。すぐさまメイは1,000万以上のフォロワーに注目されるようになるが……。


2013年のベストセラー小説が原作だそうですが、まさに今を切り取ったような映画でした。
映画に出てくるハイテク企業『サークル』はアップルやフェイスブック、グーグル、アマゾン、セールス・フォースなど様々な現実の企業が組み合わさったような会社です。カジュアルでフレンドリー、社風は気取らず、オープン、自分たちの活動を通じて社会を変えよう、という旗印を掲げている。企業理念は徹底されていて、社員は行動に理念を反映させることが求められる。犬連れの出勤や福利厚生もばっちりだけど、仕事は厳しく、成果がでなければ直ぐクビ。

現実を見渡すとアップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックの4社でアメリカの株式時価総額の1割を占めるようになったそうです。
●これらの企業の売上と各国GDPの比較。殆ど国なみの力を持っています。

AGFA(Apple, Google, Facebook, Amazon)の四強が世界を支配する | ギズモード・ジャパン

これらの企業のサービスで我々の生活は大変便利になりました。例えばスマホは世の中を変えましたよね。一方 規模を拡大するにつれ、これらの企業の横暴さは目立つようになったし、我々のプライバシーはどうなるのか、そして彼らが世の中を独占してしまうのではないか、と言った問題も出てきています。


保険会社のコールセンターに勤めていた派遣社員メイ(エマ・ワトソン)は『ザ・サークル』の顧客担当係として正社員に採用されます。難病を抱える父親と母親と同居していたメイは初めての正社員、それも巨大IT企業の社員に採用されて有頂天になります。
ザ・サークルの業務ではすべての行動が数値化され、評価の対象になります。


ザ・サークルではすべて活動がネットの上で行われ、それが数値化されます。メイの顧客対応も常に数字で評価される。しかし頑張れば頑張るほど成果は明確になる。会社の雰囲気もカジュアルで気取っておらず、社屋も緑に溢れた新しいビルです。中庭ではヨガ、じゃなかった、社員の飼い犬のヨガ=ドガまで行われています。健康保険などの福利厚生もばっちり。
●どこかの大企業とは違い、カリスマ経営者のベイリーが自ら社員の前に立ち、方針を説明することで、社内に理念を徹底させています。


毎週金曜になるとカリスマ経営者のベイリーが自ら演壇に立ち、社員に向かって直接 会社の方針を発表します。新しい商品や儲けのことだけじゃありません。IT技術で社会をオープンにすれば世の中はもっと民主的になる、独裁や貧困や汚職もなくなる、と説くのです。人間はお金だけでは動きません。大多数の社員たちはそれに熱狂します。
社員たちは仕事だけでなく、休日の課外活動やパーティで24時間会社漬けです。オープンで自分を他人にさらけ出すことが求められる雰囲気です。うーん、ボクだったら自殺します(笑)。
●週末には会社の広大な中庭で親睦パーティーが開かれます。


当初は馴染めなかったメイですが、次第にその熱狂の中に飲み込まれて行きます。サークルはすべての国民を自社のSNSに登録させ、SNSを投票の道具として活用しようとします。そうすれば投票率は確実に跳ね上がり、より民主的な社会になる、と言うわけです。それだけでなくサークルはすべての人の全ての活動をデータ化し、世界のすべてをオープン化することを目指していました。
●メイの友人はザ・サークルから各国政府などへのロビーイングを担当していました。

●入社後 メイはかっての友人を失います。彼は徹底的にネットになじめなかった。


この映画の宣伝では『「いいね」が押せる社会がどう』とか言っていますが、それだけの話ではありません。先ほど挙げたようなデジタル企業、いや社会のデジタル化が我々の世界にどのような影響を及ぼすかを描いた作品です。
根本的な問題は、そのようなネット企業は文字通り、世界を支配してしまう可能性があることです。ネットの上では規模の優位性が明確になります。シェアが強いものが圧倒的な力を持ちます。例えば先日 世界で一番大きなおもちゃ屋トイザらスがアマゾンに圧されて倒産しました。他の業態、例えば本屋も文具屋もアマゾンに圧されてリストラをどんどん進めています。今後 アマゾンが進出する業界では小売店が殆ど潰れてしまうんではないか、と言われています。今後みずほ銀行が従業員の4分の1を削減するなど、ここにきて銀行がリストラを進めているのもネット企業の影響です。
米大統領選にフェイスブックツイッターがロシアに利用されたのはどうでしょう。スケールは小さいですが上杉隆フェイクニュースもどうでしょう(笑)。グーグルもアップルも一緒です。文字通り1社が世界を支配しかねませんが、現行の法律や政治はそれに対する対処は間に合わない。アマゾンが日本で法人税を払っていないのがその例ですが、税制も現実に追いついていません。


この映画でも冒頭から『独禁法』で調査される『サークル』の姿が出てきます。ネット企業と独禁法の問題は超重要な問題です。まさに世界中の情報の独占が起きようとしているからです。ハイテク技術は世の中を便利に変えていき、世界中の人をつないでオープンにしようとしています。一見 理想の企業『サークル』は『民主主義のため』を標榜しています。もしかしたら、そのような価値観は一面的なものではないのか、また、その裏に何かあるのではないか。観客には鋭い問いが突き付けられます。


ただし、この映画は突っ込みが不足しています。様々な問いが提示されますが話のふくらみがなく、提示されるだけで終わっているから 投げかけられる問いを見逃す人も多いでしょう。そこは残念。と、思いつつも、エマ・ワトソンちゃんの自然な笑顔を見ていると癒される、それも事実です(笑)。知的だけど気軽なエンタメとしては悪い映画ではありません。ボクは2時間、とても楽しめました。