特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『福島の県名変更?』と映画『残されし大地』と『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』

毎度のことながら週末は過ぎるのが早い〜。今日 桜並木の下を歩いたら、甘い香りが漂ってきました。もちろんつぼみも膨らんではいませんが、嬉しかったですよ。


今月は、ボクにしては珍しく休日も予定が立て込んでいます。日曜は姪っ子ちゃんの入学祝いでした。彼女が『お寿司がいい』と言うのでお寿司屋さんへ連れて行ったのですが『さび抜きでお願いします』だって(笑)。話を聞いたら、彼女が行く学校では入学式に父兄を入場させないそうです。最近は親が大学の入学式や卒業式、挙句の果てには入社式にまでついてくる奴がいるという話も聞きます。それと比べれば遥かに見識があると思いました。学校なんて自立できる人間を作るためにあるんですからね。SEALDsのメンバーで度々スピーチもしていたような子も居る学校なので、『デモとかにも、バンバン行きなさい』って言ったんだけど『エー!そんなの嫌〜』だそうです(笑)。彼女にはまだロックンローラーの精神はないらしい(笑)。仕方がありません。とりあえずズートピアのDVDを渡して洗脳?を始めました(笑)。


さて、先週金曜の日経MJ(流通業向けの日経)の1面で、全国で旅館やホテルを経営する星野リゾートという会社の社長が『福島という県名は改名することも覚悟するべきではないか』と言っていました。

          
                     
彼は磐梯山でもホテルを経営しているそうですが、『いくら外国に売り込んでも福島というだけで敬遠されることが多い。県民の心理的な抵抗はあるかもしれないが本気で福島を復興させたいのなら県名を変えることを考えても良いのではないか。でなければ子供たちの世代に責任を持って手渡すことができない』、というのです。


心理的には非常に抵抗がある話だと思いますが、ボクは、なるほどと思いました。ちなみに彼が経営する磐梯山のホテルでは外国人客が少ないことを売りにして外人を集客、どんどんお客さんが増えているそうです。
ボクも星野リゾートの宿は何回か泊まったことがありますが、従業員の人たちが皆 若くて優秀なのが印象的でした。支配人自体 30代前半の女性でしたし。男も女も仕事は完全に平等。レストランから受付、掃除、アトラクションまでこなしている。従業員は外国語を喋れるのは勿論、料理やワインの説明まである程度 出来るんです。通常の旅館は従業員の役割はフロントならフロントと固定されていて、それが生産性の低下につながっていることが多いそうですが、星野リゾートでは全員が様々な仕事をこなすことでコストを下げて、その分 従業員に高い給料を払っているそうです。それがまた、優秀な人材を呼び寄せている。それでも内実はどうだかは知りませんし(笑)、今の拡大路線が止まった時 この企業はどうなるんだろう、とは思いますが、現時点ではこの企業の従業員の質が高いことは間違いないです。時には知識や気配りが足りなかったりすることもないわけじゃないけど、若い人がやる気をもって仕事をしているのを見るのは気持ちがいいです。


ちょっと余談が長くなりましたが、次世代の事を考えたら福島の復興には経済の自立的な発展が不可欠であることは間違いありません。原発も反対だし、戦争は起こしちゃいけないし、格差が拡大するのは良くないと思います。でも、そのためにはじゃあ、どうするということまで考えなければ意味がありません。そういうことを何も考えないのなら、また原発補助金に頼ろうって話にもなりかねません。反対するだけならバカでもできるんです。
 

福島という県名を変えるのは外国人誘致や経済発展だけでなく、311の記憶を心に刻むためにも意味があることだと思います。もちろん、このことは福島の人たちが選ぶことで、県民でもないボクが滅多なことは言えないんですが。


         
と、いうことで、青山でドキュメンタリー『残されし大地daichimovie.com - このウェブサイトは販売用です! - 映画 アニメ動画 ドラマ動画 映画動画 海外ドラマ リソースおよび情報

昨年3月 ベルギーのテロで亡くなったジル・ローラン監督が富岡町のたった3組の家族に寄り添って描いたドキュメンタリーです。この人は元はサウンド・デザイナーで初監督作品だそうです。先週の土曜から公開が始まりました。#残されし大地
福島関連のドキュメンタリーは今や 沢山あるので普段でしたらスルーなんですが、コメントをくださるベルギー在住のshohojiさんが翻訳で関わっておられたベルギーの監督によるフクシマのドキュメンタリー映画 - (チビコロおばさんの脳みそのシワ保存箱改め)いざとなったら死んだふり ブリュッセルのテロ事件で学んだこと:私はベルギーに暮らしていることを嬉しく思う - (チビコロおばさんの脳みそのシワ保存箱改め)いざとなったら死んだふりということで見に行ってみました。


映画で描かれるのは松村さん、半谷さん、佐藤さんの3組の人たちです。皆 60歳は過ぎているのでしょうか。松村さんは富岡町で暮らしています。避難した人たちが置いていった犬や猫、それにダチョウや牛に餌をやり続けているそうです。まさに尊敬に値します。文字通り腹の座った、意志が強そうな人です。普通は猫ってそんなに人間に対してべたべたしないと思うんですが、野良道を歩く彼の跡を猫たちがぴったりついていくのが面白かった。
富岡町に残る松村さん。外国では『福島の最後の人間』と報じられているそうです。


半谷さん夫妻も富岡町で暮らしています。永年暮らしてきた場所を今さら離れるわけにもいかない。ガスは通じていませんが電気は通じているようです。農作業にいそしむ毎日。この人たちが作ったナスがめったに見たことがないくらい立派です。そのナスを炒めたものがとても美味しそう。もちろん、そのナスにも放射性物質が残留しています。
●半谷さんご夫妻。住み慣れたところで好き勝手にしたほうが人生は楽しい と語ります。


ところどころに富岡町の今の光景が挿入されます。検問ゲートを通って入らなければいけない廃墟の街。そして除染作業。3つの家族の営みと交互に除染作業の風景が挿入されます。除染も大変な仕事ですが、富岡町一つとっても、いくら除染をしても間に合うようとは思えません。虚しさが伝わってくる。
それでも富岡町は美しいところです。東京では考えられないくらいに星が大きく瞬く夜空。清流。生い茂る緑。放射能は見えないし、匂いもない。日常生活の中に当たり前のように放射能測定器があります。


佐藤さん夫妻は富岡町の外に住んでいます。が、時折 家がある富岡町に戻って、家を掃除したり、お墓参りをしたり、友達とお茶会をやったりしている。しかし、富岡町には若い人は当然 帰ってきません。登場人物は皆 この街はいつか滅びるしかないことは判っているんです。復興は30年後か、50年後か という台詞が印象的です。
●お墓参りをする佐藤さんご夫妻

3組の家族の想いをどう考えればいいのでしょうか。彼らも、制作側も声高に主張しません。でも彼らの表情と日々の営みが雄弁に何かを物語っています。
押しつけがましさが全くない、大変優れたドキュメンタリーです。表現がキビキビしている。これが本当に初監督作品なんでしょうか。さりげない描写が続く70分間ですが、住んでいた人たちの気持ち、そして、6年前の311に何が起こったか、たっぷりと伝わってくる。凡百なドキュメンタリーとは次元が異なる素晴らしい作品です。お近くで公開されたらぜひ!





もう一つ、渋谷で映画『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方

父親に、幼いころから一夫一婦制を全否定されてきたエイミー(エイミー・シューマー)は独身の雑誌編集者。異性と深い関係を構築することが出来ない彼女は、深酒しては男と寝て、ポイ捨てする日々を続けている。ある日、仕事で真面目なスポーツ外科医アーロン(ビル・ヘイダー)を長期取材することになるが- - -


アメリカのコメディ監督/プロデューサーのジャド・アパトーの新作です。日本ではアメリカのコメディはあまりヒットしないようですが、ボクは嫌いじゃないんです。
ましてジャド・アパトーウィル・フェレルの『俺たちニュースキャスター』シリーズ、アメリカでは大ヒットした『ブライズ・メイズ 史上最悪のウェディング・プラン』、今年のアカデミー主演女優賞を取ったエマ・ストーンを発掘した『スーパーバッド 童貞ウォーズ』(名作です)などリベラルで笑って泣かせる大好きなコメディの監督やプロデュースをしています。

おまけにジョン・カーニーの超名作『はじまりのうた』のプロデューサーも務めています。ついでに、この人はハリウッドでトランプに反対する急先鋒でもあります。
●トランプ当選時のジャド・アパトーの反応。

そういう人ですから、ボクは絶対 見に行くわけです。こっち側の人ですよ(笑)。
●独身主義者で男を次から次へとポイ捨てしてきたエイミーは、優しいスポーツ外科医と知り合います。

主人公の幼少期のエピソードが最初に紹介された後、本編はいきなり下ネタ全開で始まります。え〜と思いながら見ていると、実はそうでもない。下品に見えるけれど下品ではない、オオカミの皮をかぶった羊みたい(笑)。実はすご〜く気を使って作られている作品です。
主役・脚本のエイミー・シューマーという人はアメリカの人気コメディアン(知らないけど)、ちょっとおデブなところが親しみが持てます。
毒舌を振りまきながら酒と男におぼれる生活を送っているエイミーですが、それは彼女が人間関係を構築することができない裏返しです。共感できるなあ(笑)。離婚した父親とそっくりに育ってしまった彼女は自分でもそのことを自覚しています。だから、余計にこじらせてしまう。幼少期のトラウマで恋愛が出来ない大人なんです。
●無頼な生活を送るエイミー(右)と家庭的な妹(ブリー・ラーソン

                                           
彼女には正反対の妹(ブリー・ラーソン)がいます。妹は男と結婚して継子を育てている常識的な人間です。二人は度々対立するのですが、この対照が非常に面白い。昨年『ルーム』でアカデミー主演女優賞を始め、様々な賞を総なめにした彼女ですが、彼女の演技の強さがあるから、この姉妹、好対照なのが凄く良く表現されています。

                                
B級に見えるこの映画、出演者は超豪華です。ブリー・ラーソンだけでなく、超極悪非道な編集長役でティルダ・スウィントン、主人公の元カレ役でプロレスラーのザ・ロック、犬を散歩させる役だけでダニエル・ラドクリフだの、マリサ・トメイだの、物凄い顔ぶれが並んでいます。ボクは全然わかんないんだけど、テニス、バスケットボールの超有名選手もいっぱい出ているようです。かっての名選手、クリス・エバートが男を口説くためだけに出ていたり、実は豪華な映画なんです。
●左の黒人も超有名スポーツ選手(バスケかテニス)のようですが、ボクはわかんない(笑)

                                
下ネタ辞さずのギャグの連発ですが、女性の気持ちの描写がどうしてこんなにうまいんだろう と思います。エイミーはダメ人間ですが、自分の気持ちを隠したり、男に媚びたりはしない。男の側も女性に媚びたり、ジェンダーを押し付けたりしない。『ブライズ・メイズ 史上最悪のウェディング・プラン』もそうでしたが、人間をありのままに描こうとしています。見ていて気持ちがいいです。
ティルダ・スウィントン(胸騒ぎのシチリア)が演じるエイミーの上司の雑誌編集長。こんな極悪非道なキャラは見たことない。最強で最凶です


                                           
         
豪華な出演陣を使って、エキセントリックなお話が進んでいきますが、下品そうに見えて下品じゃない。人間の存在をバカにしていない。性や肌の色の差別には徹底して抵抗する。そして最後はダメ人間がどう立ち直るかを説得力あるストーリーで語っています。最後は思わず、泣かされました。その後、ギャグでまた落とされましたが(笑)。脚本も演技もAクラスの職人芸。素晴らしい。
痴的に見えるけど知的でハートウォーミングな、すっごく良い映画。面白かったです!