特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

目指せ!エロジジイ?:映画『ある天文学者の恋文』と『男と女』

新潟県知事選は良かったなあ。1週間前まではどうなんだろうと思っていましたが、後半にかけて大逆転したようですね。文字通り市民の勝利。新潟の人たち、素晴らしい。選挙の公示以来 東電の株が下がっていたので『もしや』とは思っていたのですが、株というのは恐ろしい。軍部が恐ろしくて総理大臣ですら降伏を言い出せなかった太平洋戦争末期でも、株だけはじわじわと上がっていたそうですし。
一方 大恥をかいたのは民進党です。元民進党県連の米山氏に対して自主投票と言うどーしようもない対応をしたのもそうですし、蓮舫が現地入りするのを野田は止めようとしたのも許し難い。これで蓮舫が現地に行ってなければ、民進党、終了になるところじゃないですか。前回の参院選でも電力総連の候補が比例区1位当選だから、目先の事だけ考えれば連合の顔色を見るのは組織人として判らないでもない。だけど、それじゃ只のバカ(笑)。本質的な事が見えてないんです。新潟の民意は原発再稼働反対が7割だそうです。クソ労組より市民の意志の方が大事って根本的なことがどうしてわからないのでしょう、民進党は。これで野党共闘もどうしたら良いか、はっきりしたのではないでしょうか。

                                
                                         
昨日放送されたNHKスペシャル『マネーワールド』NHKドキュメンタリー - NHKスペシャル マネー・ワールド 資本主義の未来(1)世界の成長は続くのか、ちょっと驚きでした。というのは、番組で取り上げられたジャック・アタリ先生やロバート・ライシュ先生、シュンペーター先生やAIの話にしろ、あまりにもボクのブログとネタが被っていたので(笑)。これから困ったなあ(笑)。弱肉強食を加速させるシェアリング・エコノミーへの見方など細かいところは別にして、番組の内容はボクの意見とほぼ一緒でした。目新しい話はなかったけど、TVの前で『もっと言え!』と拳を振り上げていました(嘘)。1点だけ、番組の中でライシュ先生が言っていた『スーパー資本主義』というのは、彼は『縁故資本主義』(コーポラティズム)とも呼んでいるというところは補足しておきます。要するに金持ちが世の中のルールを自分たちに有利なように捻じ曲げているということをライシュ先生は指摘しているんです。
とにかく資本主義は限界を迎えつつある、今まで通りの成長が続くというのもムリだけど、終わると決めつけてしまうのも早計、というのは、もはや共通認識なんでしょう。資本主義は峠に差し掛かったと言っても先は見えない、というのが大事なところです。資本主義はもう終わりと言って、そこで思考停止してたらこれも只のバカ(笑)。時代が不安定になっていくわけですから、より一層自分の頭で考える、ということが問われてくるのだと思います。我々は100年先の事を考えながら半径1メートルの問題に取り組んでいかなければならない、のでしょう。
NHK、良くこんな番組を放送しました(笑)。19日0:10に再放送をするそうですから、ご覧になってない方は是非。
●これが諸悪の根源の一つです。長時間労働撲滅キャンペーン。
キャンペーン · 長時間労働を撲滅して、日本から過労死をなくしましょう! · Change.org


                                         
さて、このブログを読んでくださっている皆さんは、自分のお手本、ロールモデルみたいなものは意識しませんか?俳優でもロックスターでもスポーツ選手でも身近で尊敬できる人でも誰でもいい。自分のお手本みたいな人を意識すると、人生の道しるべ、自分の行く手に広がる暗闇を照らす灯台みたいに思えるんです。若い時は身の程知らずだったし、自分のお手本になると思えるような人は大勢いた気がします。だけど自分が齢を取ってくるに従い、現実的になってくる。大偉人を目指しても無理ですよね。知力も視力も体力も衰え、髪の毛も薄くなってくる中で、さて、自分はどうしたらいいのだろう、と思うわけです(笑)。デヴィッド・ボウイなんかは最後までかっこよかったけど、あの人間離れしたルックスの良さは参考にならない(笑)。もうちょっと庶民的な線で何とかならないか、と思うわけです(笑)。今回はそういう映画のお話です。

                                

六本木で映画『ある天文学者の恋文

老境を迎えた天文学者エドジェレミー・アイアンズ)と教え子エイミー(オルガ・キュリレンコ)の関係を描いたラブストーリー。エイミーは危険な映画のスタントマンをやりながら大学院で天文学を学んでいる。スコットランドで家族と暮らす恋人、エドとはたまにしか逢うことができない。ある日 彼女の元にエドの訃報が届く。悲しみにくれていたエイミーだったが、その後も彼から手紙や贈り物が届き続ける。エドが遺した謎を解き明かすため、エイミーは彼が暮らしていたスコットランドやかつて2人で過ごしたイタリアを訪ねる。

                                          
ジェレミー・アイアンズ、かっこいいですよね!知的だし、包容力もあるし、何よりも色気があります。恰好良すぎるけど、できれば、ああいう爺さんを目指したい!

オルガ・キュリレンコ、この世のものとは思えないくらい、スーパー美女ですよね!人間というより美術品に近いんじゃないでしょうか(笑)。

監督はジェゼッペ・トルナトーレ、『ニューシネマ・パラダイス』や『海の上のピアニスト』の名監督です。前作の『鑑定士と顔のない依頼人』も面白かったし。

                                     
と、ハードルが上がったところで(笑)、映画はジェレミー・アイアンズオルガ・キュリレンコが夢中になって抱き合うシーンから始まります。

そのあと、彼女の元に恋人の老教授の突然の訃報が届きます。しかし、老教授からは彼女あてのメールや手紙、小包が届き続けます。時候に沿った彼女の心情を思いやるメッセージも添えられていて、まるで老教授が生きているかのようです。彼女は謎解きを始めます。

お話自体はあまり感心しません。オルガ・キュリレンコが演じる主人公のキャラクターに思い入れが持てないし(ルックスが常人とは違い過ぎ(笑))、謎解きのお話自体 ボクは興味持てませんでした。謎解き自体は前作のほうが遥かに面白かった。老教授と彼女との結びつきも今いち良くわからない。主人公の欠落感とか老教授の病に悩む姿は判るんですが(この部分のジェレミー・アイアンズの演技には超感動しました)、今いちピンとこなかった。主人公の欠落感も、良くある単なるファザコンじゃないの、と解釈出来てしまう。もっと単純にラブ・ストーリーを作っても、この二人なら充分 絵になったと思うんですが。

                                                    
面白かったのはまず、演出、でしょうか。ジェレミー・アイアンズは冒頭のラブシーンを除いて、殆どiPhoneやPC画面の中で演技を続けます。これは面白かったし、それでも重厚な演技が伝わってくる。クールな情感を醸し出すエンリオ・モリコーネの音楽も良かった。
●PCで、スマホで、ひたすら画面の中で独り演技を続けるジェレミー・アイアンズ

                              
主人公は実質的にオルガ・キュリレンコです。殆ど彼女が出ずっぱり。これは嬉しい!30歳上の家庭を持つ男に夢中になる大学院生、自己の欠落を補うためにスタントマンという危険な仕事を続けるという、個性的な、そして、どちらかと言うと垢抜けないというキャラクターです。見ていて歳とったなあと思いましたけど、役作りでした。最後にショートカットにした本気の姿?を見せてくれます。ちなみにこの人は37歳。やっぱり変わらず美しい。また終盤に出てくる、彼女をモデルにしたという設定の彫像はそのコンセプトが凄く良かった。
●前半の彼女はやたらとめそめそ泣いてるのがちょっと良くわからなかった。

●最初 ジジイがウルトラ美女と抱き合う姿は内心、ムカつきました(笑)。



と、いうことで、オルガ・キュリレンコの彫刻のような美しいお姿をひたすら拝見する映画。お話自体はくだらないと思いますが、もちろん、トルナトーレ監督ですから一定以上の水準は確保されています。見ていて、単純に楽しかったです。

           
                                                         
もう一つ、恵比寿で『男と女』。10月15日が公開50年ということでデジタルリマスターされたそうです。

海沿いにある学校の寄宿舎に娘を預けて、パリで一人暮らしをしているアンヌ(アヌーク・エーメ)と息子を同じ学校に預けているカーレーサーのジャン(ジャン=ルイ・トランティニャン)。子供を通して知り合った二人はそれぞれ夫と妻を亡くしたという共通の過去があった。やがて二人は心を通わせていくが----。

                                  
カンヌ映画祭でもパルムドールを取り、アカデミー外国語映画賞も取った、50年前の言わずと知れた名作です。ピエール・バルーが書いた『ダバダバダ』という主題歌は知らない人はいないでしょう。ボクは見たことないのでとりあえず教養のために見に行った次第です(笑)。
●主役の二人。

アカデミー脚本賞もとったそうですが、お話自体ははっきり言って、かなりクダラないです(笑)。男と女が出合って恋に落ちるだけの、なんてことない話です。しかし見ていてつまらなかったというわけではありません。映像と音楽、こちらは非常に面白い。映像はカラー、白黒、セピア色のものが混在します。写っている光景も非常に美しい。美しい海沿いの街、ドーヴィル、レースの光景、超々美しいアヌク・エーメ! フェリーニの8/2分の1とかにも出ている人だそうですが、全然気が付かなかった。この人の美貌だけでもご飯3杯行けます(笑)。たっぷり目の保養をさせてもらいました。

音楽はピエール・バルーフランシス・レイ。有名な主題歌だけでなく、ボサノバ、流麗なストリングスの音楽は楽しいです。要するにこの映画は大人のためのミュージカルですね。そう思えば、見ていて楽しいです。

      
                                                                                       
今回 上映を見に行った理由のもう一つは主題歌を作るだけでなく映画にも出演していたミュージシャン兼俳優のピエール・バルーの舞台挨拶を見てみたかったからです。昔、この人の『ル・ポレン(花粉)』というCDを聞いて、結構 影響を受けたんです。
●このころのピエールバルーは50代。聞く人の創造力を刺激する見事なバック演奏はムーンライダーズ

LE POLIEN

LE POLIEN

CDの内容はムーンライダーズの演奏に載せて、人生の喜びと悲しみ、そしてそんな人生への想いを呟くように綴った作品です。そして、この美しいジャケット写真!ボクも煙草吸おうかと思ったくらい(笑)。

●表題曲『ル・ポレン(花粉)』(花粉)。『今日、ボクたちはボクたち。すべてはボクらを培ってきた花粉。』

                                                                                  
この日 投げキッスをしながら会場に入ってきたピエール・バルー、御年82歳。齢を取ったなとは思いましたが、現役感がビンビン伝わってきます。一目見て、とんでもないジジイだ、と思いました。往時に比べて体はだいぶ太っていますが、臆面もなく今も堂々としている。身体を包むシャツの柄といい、不良感がただならない感じです(笑)。
●司会の大学教師(左)と通訳(右)に挟まれて。二人ともバルー氏に個人的な思い入れがたっぷりみたいでした(笑)。

                                  
彼はもともと監督と友達で、当時カネも名声もない二人はディスカッションをしながら映画の構想と脚本を膨らませていったそうです。今では大巨匠のフランシス・レイも当時は只のアコーディオン弾き、彼らの友達だったから映画に参加したそうです。途中でバルーはブラジルへ遊びに行ってしまい(笑)、ボサノバに夢中になる。映画のクランクイン直前に帰ってきて、当時は珍しかったボサノバを映画に使ったら大成功(笑)。映画に出た後は主演のアヌク・エーメと結婚して数年で離婚。そのあと日本人と結婚して、また離婚。主題歌の印税でレコード会社を作って、自分の好きな音楽を紹介することにカネを全てつぎ込んでいるそうです。14歳から世界中を放浪している、生まれついての遊び人。彼は『男と女』は究極のインディーズ映画なんだ』と言ってました。確かに、この映画の本質はそういうことかもしれません。音楽、美女、恋、ワイン、創る側が好きなことが詰まっている映画です。
途中で元ピチカート・ファイブの歌手、野宮真貴が花束を渡しに出てきました(先日のリオの閉会式でもピチカートの『東京は夜の7時』が使われました)渋谷系のファッション・アイコンとして一世を風靡した彼女ですが、最近、この人がボクより年上ということを知って何となく心強く思った次第(笑)。
野宮真貴と。

                                                
30分 精力的に話しを続け、歌まで歌ったバルー氏、最後は舞台に居る女性陣全員(司会、通訳、野宮真貴)それぞれに丁寧に数秒間ハグをして、会場に投げキッスを振りまきながら去っていきました。かっこいいです、エロじじい。この人はカネも名誉も関係なく、純粋に自分にとって楽しいことだけを追い求めて生きているんでしょうね。凡人には中々真似できませんが、こういう風に齢を取りたいなあ(笑)。