特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『アメリカン・ブリクジット』(終わったら、始めるだけ)と『1111再稼働反対!首相官邸前抗議』

大方の人と同じようにボクもアメリカの大統領選の結果にはびっくりしたし、がっかりしました。これで同性婚や女性やマイノリティの権利向上が遅れる事を考えたら、正直 日本の選挙より心理的ダメージ大きいアメリカで起きたことは日本も含めて世界中に派生しますからね。一方 トランプにカネを出してたプーチンは喜んでるでしょう。
                                               
個人的には、ヒラリーの好感度の低さを心配していた通りになってしまいました『老いぼれトランプ』と『法人所得と景気回復策』、それに『0930再稼働反対!首相官邸前抗議』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)ボクだって彼女のパブリックイメージ、特に喋り方が上から目線、相手を叩きのめすような話し方は非常に感じ悪い、と思いますもん。職場でアメリカ帰りの人が、『あれは男の喋り方だ』と言ってましたが、どうなんでしょうか。

                                      
映画監督のマイケル・ムーアが今回の選挙の事を『アメリカン・ブリクジット(EU離脱)』と言ってます。アメリカ人は、自ら(本来の)アメリカを離脱することを選択した、と言うのです。確かに(言葉は悪いけど、良く言われる)地方部の頭が悪い、負け組労働者がヤケクソになって、自分で自分の首を絞める選択をした』という点では両者は共通しています。これをポピュリズムと呼べば良いのか、反知性主義と呼べば良いのか。


                                                               
まず、トランプの勝因はマーケティングの勝利だと思います。具体的には、主張を白人、それも経済発展から取り残された白人に絞ったのが功を奏した。
まず、トランプとクリントンの獲得州です。これは皆さんご存じのとおり。

http://news.yahoo.co.jp/story/430
次はこの図、WSJに載った『地域別の人種の混じり具合(2015)』です。色が濃いほど民族や人種が多様な地域、色が白い地域は白人が多いところです。アリゾナやフロリダなどの例を除けばトランプが獲得した州、特に従来は民主党の労組票が中心だった中心部(製造業が潰れて不況が続く、いわゆる『ラストベルト』)と見事に重なります。

トランプは、経済成長に取り残された人々、それも白人にターゲットを絞りました。従来はこの人達は労組など民主党の支持層です。ヒラリー大嫌いの共和党基礎票に加えて、民主党の支持層を奪って上積みした。これはまさに、マーケティングの勝利です。日本では右でも左でもしたり顔に、貧しい者の叛乱だ!とか言ってる奴が居るけど、全然違うから(笑)。そもそも若い人はヒラリーにいれた人が多かったんだし。トランプは単に民主党の支持層を切り崩しただけです!本人が作戦を立てたかどうかは知りませんが、トランプの出身校のウォートン・ビジネススクールマーケティングの超有名校であるのを思い出さざるを得ません。
●今回の現象は、津田塾大教授の萱野氏が言っていることがボクは最も納得できました。

日本国内では、トランプ氏を支持するのは貧困層の白人男性だと報じられていました。けれど実際に属性別の世論調査を見ると、もともと白人女性などは、クリントン氏よりもトランプ氏の方を支持していた。高所得者ほど共和党候補のトランプ氏を支持し、低所得者民主党候補のクリントン氏を支持していた。伝統的な共和党支持者がそのまま共和党候補であるトランプ氏を支持し、そこに、日本で報じられたような低所得の白人男性が加わって、トランプ氏の票が伸びた
トランプ氏、真の姿は柔軟なビジネスマン:日経ビジネスオンライン


かといって、トランプが自分を押し上げた人たち、経済成長に取り残された人々の問題を解決できるか、というとそれはない(笑)。ラストベルトに位置する自動車や鉄鋼などの製造業が衰退したのは製品の品質や価格に競争力がなかったからで、NAFTAクリントンが調印した北米自由貿易協定やTPPが有ろうとなかろうと関係ありません。まして今から本当に国境に壁を作ってもアメリカの製造業は取り戻せません。自由貿易を否定し物価が上がって一番困るのは、トランプに票をいれた人達です。昨年ノーベル賞をとったディートン先生の調査によると、この10数年アメリカの白人の中年男性は死亡率まで上昇しています米国で白人中年の死亡率上昇、依存症など要因 - WSJ

それくらい彼らは痛めつけられてきた。でもトランプに投票した労働者にとってはまた裏切りの4年間が続くことになります今回の選挙で最大の敗者はトランプに投票した労働者です。

今、イギリス、アメリカ、日本、世界に広がっている問題は共通しています。中間層の崩壊ポピュリズム(反知性主義)の広がり、です。ポピュリズムは中間層の崩壊や格差の拡大に対する解ではありません。イギリスのEU離脱がまさにそうですが、EU離脱で一番困るのはEU離脱に投票した、生活に困っている側です。物価が上がり、雇用も減るからです。小泉改革に賛成したB層と一緒です。今回も同じことになるでしょう。


日本でもさらに格差が広がり臨界点を迎えた時、出てくるのは再分配を唱える野党ではなく、『改革』とか『CHANGE』を唱えるポピュリスト政治家じゃないでしょうか。小泉『改革』、橋下の『維新』や小池の『東京大改革』、ボクにはポピュリストが仮想敵を煽って、自分の権力の為に利用しているだけとしか思えない。公務員や労組、生活保護へのバッシングはトランプのメキシコ人やマイノリティへの罵声と一緒じゃないですか。どちらも何が問題なのかはっきりさせないまま、犯人だけを挙げつろっているだけだからです。原因も目的もはっきりしない彼らの『改革』はうまくいかないでしょう。だから、また誰か他のせいにする。

左側も大して変わりません。昨日もTPP反対と言って国会前で抗議している人がいて、多分 彼らは昨年、反安保法でボクと一緒に抗議していた人たちで、彼らをディスる気はないけれど、なぜTPPに反対なのか、真剣に考えているとはあまり思えません。元農水大臣の山田みたいな既得権益代理人堤未果みたいなプロ嘘つきの言っていることを鵜呑みにして、反対と言っているだけじゃないでしょうか。まさにポピュリズムです。トランプの当選でTPPもなくなるでしょうから、反対と言っても文字通りアホの遠吠えでしょうけど(笑)。連中の言ってることに未来はない
ファシズムは家畜輸送車や着飾ってやってくるのではない。親し気な顔をしてやってくる。

                                           
今 世界中で起きている格差の拡大の原因は2つ。『1%の側に有利な社会システム(政治や税金)』と『技術進歩やグローバリゼーション』です。
前者はまさに政治の問題です。アメリカの民主党も日本の民進党も99%の側に立っている政党じゃない。アメリカも日本も組合や大企業じゃなく、人々の側に立つ政党を作り直さなくてはいけない。日本でもアメリカでも、政党や選挙区など、今の政治システムは人々の意志や利害を代表していないんですね。
しかし後者の技術進歩やグローバリゼーションは、それとは違う。社会の構造変化に人間が対応しきれていないことが問題です。政治だけの問題じゃない。ヒラリーもサンダースも教育の強化を主張して、変わっていく産業構造への対応を訴えていましたが、そういう声は今回トランプに投票した労働者には届かないのでしょう。昨日まで鉄鋼労働者をやってた人にIT技術者になれと言っても、嫌だ、と思う人はいるでしょう。それに外国人や生活保護の悪口を言っている方が判りやすい。カエサルが言ってた『人間は自分の見たいものしか見ない』は真理かもしれません。

                                 
今回 大統領選だけでなく上院も共和党過半数を維持したのは非常に残念です。これから2年間、中間選挙までは、アメリカではかなり酷いことが起きるかもしれないし、それ以上に日本の女性活躍の機運に水を差しかねないのが残念です。でもトランプは年齢的に4年しかできないだろうし、白人人口はどんどん減っていくし、トランプに票を入れた白人のジジ・ババは死んでいく(笑)。それ以上にアメリカには粘り強く闘い続ける人たちが大勢いるでしょう。そもそも得票ではヒラリーの方が多いわけですし(CNNの集計(開票率92%)によれば、クリントン氏の得票数は5975万5284票で、トランプ氏は5953万5522票)CNN.co.jp : クリントン氏、得票数ではトランプ氏上回る 米大統領選
酷いことは起きるかもしれないけれど、トランプがやるようなことは長く続かない
●差別主義者の集団クー・クラックス・クランがトランプの勝利を祝ってパレードを計画中(LAタイムス)

The Ku Klux Klan says it will hold a Trump victory parade in North Carolina

                                             
イギリスやアメリカ、日本に限らず、トランプ当選みたいな出来事はこれから何度も起きる、と思います。ジャック・アタリ先生が『21世紀の歴史』で延べていたように、企業の力が強まっていくのと比較して国家の力は弱まっていくし、格差も広がっていく。その反動でポピュリズム、具体的には孤立主義保護主義、それに暴力や差別なども増殖していく。トランプはその一例に過ぎません。これくらいでビビったり、絶望しているわけにはいかない。
こういうことを起こしてしまう資本主義が行き詰っているのはその通りだと思いますがかといって左側へ行けば解があるわけでもありません(笑)。組合は既得権益を守るクズだし、左翼政党もマヌケ、また日本の旧来の市民運動は頭のボケた爺さんばっかり。映画評論家の町山智浩氏は、内田樹などが先の参院選三宅洋平を支持したことに対して『不勉強で頭のボケた護憲ジジイ』と評してましたが、全くその通りだと思います。

                                                              
結局 政治と技術と経済、その三つを睨みながら、その都度 答えを見つけていくしかありません。日々の暮らしの中には世の中を良くするための手がかりは転がっています。それらを拾い上げて育てていく努力をボクらはしなくてはいけない。
いつもの話ですが、99%の側の一人一人が賢くなっていくしかないのだと思います。思考停止して1%の側のお金持ちやその代理人の政治家、ポピュリスト、そして(堤未果のように)商売でデマを飛ばしている連中に騙されない知恵が必要なんだと思います。
終わったら始めるだけ』でしょう↓。いずれにしても 我々にはそれしか出来ることはないですからね!

●『終わったら、始めるだけだ』マイケル・ムーアがSEALDsと同じことを言ってます(笑)。



                                          
ということで、今週も官邸前へ。今週は政治家や大学教授など大勢のスピーカーを呼んだ拡大版だそうです。

★1111再稼働反対!首相官邸前抗議 | 首都圏反原発連合
                                            
今朝の東京は酷い雨。午後には止みましたが時折ぱらつく、寒い日でした。主催者挨拶のあと、政治家のスピーチが始まりました。悪いけど、あんまり感心しませんでした。原発に反対するのはいいけど、言ってることにあんまり具体性や現実味がないからなあ。
●国会前の銀杏も色づいてます。

●主催者挨拶:ミサオ・レッドウルフ氏

●社民の吉田。所謂、いい人だとは思うけど言ってることが古臭い。彼の次に菅直人が出てきた時は文字通りガックリ来ました。

●おなじみ共産党笠井亮と吉良ちゃんともうひとり(笑)

民進党阿部知子、2枚目は野党共闘共産党の3人、民進菅直人阿部知子、自由)


落合恵子氏。野党だけでなく、市民運動も大同団結しなきゃいけないのは自明の理


                               
折しもインドのモディ首相が来日中と言うことで原発輸出に道を開く日印原子力協定締結に反対するプラカードが目につきます。ボクは以前ベトナムへ行ったとき、しょっちゅう停電が起きて皆が困っていたのを体験したので、新興国原発をやりたい、という気持ちは理解できないでもありません。でも日本の企業が輸出しなくてもいいじゃん(笑)。社会に害悪をもたらす事業は早く潰れてもらった方がいいですからね。少なくとも日本の原子炉メーカーは潰れるか撤退するまで、あと、もう一歩なんだから(笑)。
●抗議風景





                                  
                              
今日の参加者は主催者発表で3000人。フクシマの事故から約5年半経っても、相変わらず多くの人が粘り強く反対の声を挙げ続けています。寒い〜(笑)。
●鋭い指摘です