特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

映画『マイ・インターン』と『ステーキ・レボリューション』

今日の東京は真冬のような寒さ、それに台風のような強い雨でした。奇妙なお天気です。
さて、大阪の知事・市長選挙が迫ってきました。現地での関心はどうなのでしょうか。SEALDs関西SEALDs KANSAI on Strikinglyが大阪の選挙にコミットする、具体的には反維新の運動をするそうです。

その理由について、彼らはこう言っています。
私たちが大阪で行われている「大阪維新の会」による政治からの転換を求める理由は以下の三点です。
1.個人の思想及び自由の侵害
2.議会の軽視
3.住民サービスの切り捨て
                                         
旧来の大阪府政・市政は酷かったことも否定できないようですが、橋下は民主主義者じゃないことも否定できません。卒業式で口パクをチェックするなんて、小説『1984』の世界そのままでしょう。とにかく橋下は嘘つきであるだけでなく、仮想敵を作って自分の意見を押し通す、あの強権的なやり方には賛成できません。今や自民の候補の応援を赤旗がやっているくらいで(笑)、全国レベルでもあれを見習え、と思いますが、とにかく橋下のような凶暴なポピュリストは消えてもらいたい。安倍晋三三原じゅん子が自民の候補を応援する、見るに堪えない光景もありますけど、それでも大阪の人は冷静に、どっちがマシかという大人の選択をして頂きたい。自分たちの運命に対してどれだけ真剣か、が問われていると思います。
●勿論 大阪だけの問題ではありません。


                                           
今週の映画、1本目は映画『マイ・インターン』@六本木映画『マイ・インターン』オフィシャルサイト

急成長中のファッション関連のネット通販会社社長ジュールス、30歳(アン・ハサウェイ)。娘一人と専業主婦の夫がいるが、自分が創業した会社を育てることに朝から晩まで追われている。彼女の会社は社会貢献の一環で高齢者のインターンを採用することになり、彼女の元に配属されたのが70歳のベン(ロバート・デニーロ)だった。ベンは元電話帳会社の管理職で妻を亡くしたばかり。人生のやりがいを求めてインターンに応募してきた。当初は服装も生活も全く違うベンに距離を置くジュールスだったが、目立たぬように支える彼のサポートは社内の雰囲気を変えていく。マネジメントでも私生活でも難問を抱えるジュールスにとっても、いつしか彼が無くてはならないものになっていく。

宣伝文句は『プラダを着た悪魔』の続編の『ような』映画、というのが売りになっているようです。単純にそれにつられてきたらしい女の子たちが見終わった後、『続編っぽくなかったよね』と言っていましたけど、勿論 続編じゃあないですからね(笑)。御年60代のダイアン・キートンと人気絶頂期のキアヌ・リーブスとの素敵なベッドシーンが印象的だった「恋愛適齢期」のナンシー・マイヤーズ監督の新作。それで、だいたいお話の雰囲気は判りますでしょ(笑)。

恋愛適齢期 [DVD]

恋愛適齢期 [DVD]


                              
今時のベンチャー企業を舞台にした脚本は丁寧だしリアルだと思いました。古い工場をリニューアルして作ったワンフロアのオフィスを自転車で走り回りながら、仕事に追われるジュールス。仕切りがないワンフロアのオフィスは部門間の風通しが良くなり生産性が上がる、として日本でも流行っています。売り上げの急成長にオペレーションが追い付かない会社の現状に、彼女は投資家から外部のプロ経営者を招き入れるよう圧力を受けます。自分が創業し、何でも自分でやってきた彼女は、本音では自分でやりたいのです。でも投資家の言うことには逆らえないし、自分でも限界も感じているし、もしかしたら自分よりうまく会社を経営できる人はいるかもしれない。私生活では夫婦仲も醒めているし、一人娘のことも心配です。いろんなものに板挟みになる経営者の姿を映画はうまく描写していると思います。企業の経営者って真面目にやってれば、共産党の連中が想像するより(笑)遥かに大変です。
                                           
アン・ハサウェイって優等生っぽくって昔はあまり好きじゃなかったのですが、『レ・ミゼラブル』や『ワン・デイ』など最近の作品を見て好きになってきた(笑)。メインストリームのスターならでは華やかさだけでなく、歳をとるにつれて細やかな演技力やこの人なりの味が出てきました。この映画で見せる猛烈経営者の姿にも彼女なりの人の良さがにじみでていて、とても良かったと思います。勿論 ファッションも見ていて楽しかったし。

●リアルにデモをしている彼女も素敵です(笑)

                                               
デニーロ演じる高齢のインターン像も面白い。採用されたのはカジュアルな服装のベンチャー企業ですが、彼は常にネクタイを締めた、バシッとしたスーツ姿を押し通します。でも、俺が俺がとしゃしゃり出ることなく周りのサポートに徹するのです。上司の顔色を見ることも忘れない。常に柔らかな態度を崩さない彼の姿はとてもチャーミングです。『国会に突入しろ』っていう過激派の認知症ジジイほどではないにしろ、最近はクレーマーになったり、暴力を振るう暴走老人が時々ニュースになります。けれど、やっぱ歳とったら、これです。チャーミングなお年寄りを目指さなくちゃなあ(笑)。何より、登場人物に悪人がでてこないのもこの映画の良いところです。

                        
恋愛適齢期』もそうでしたが、年配の人をアイコンとして描くのは良いことです。誰だって歳をとるのだがら、将来の目標ができますからね(笑)。そのための配役としてデニーロはピッタリです。あの演技力があれば充分に説得力があります(笑)。デニーロがカジュアルな服装の若い社員たちに、常にハンカチを持ちなさい、とアドバイスするシーンには恐れ入りました。いわく
ハンカチは自分で使うものではなく、女性に差し出すために持つものなんだよ。』

くっ〜、まったく恐れ入りました(笑)。皆が忘れた頃、これは使わせてもらいます(笑)。

                                                                                   
かような感じでリアルなディテールは嘘くさくもないし、楽しいファッションも見られるし、とても良い映画でした。脚本は丁寧にできてるし、俳優の演技も良い、万人が楽しめる、へそ曲がりのボク自身も納得しました。何度も見返すことが出来る映画だと思います。DVDが出たら、ワインでも飲みながらアン・ハサウェイデニーロのファッションを見たら楽しいだろうな、と想像してしまう、そんな映画でした。



もう1本は、恵比寿で『ステーキ・レボリューション(STEAK (R)EVOLUTION)映画『ステーキ・レボリューション』オフィシャルサイト 10.17公開

フランスの牛肉はまずい、と思った監督と友人の肉屋がうまいステーキを求めて、アルゼンチン、ブラジル、イギリス、アメリカ、日本、スウェーデン、スペイン、イタリア、コルシカ島と世界を旅するドキュメンタリー
                                              
監督によるとフランスではあまりステーキは食べないそうです。フランスの牛は脂肪が少なく、硬いので煮込みが中心だと言います。確かにフランス料理にステーキがないわけじゃありませんが、あまり聞いたことがありません。その現状に不満を持った監督と肉屋の友人は美味しいステーキを求めて旅にでます。
                                                         
まず最初に向かったのはNY。世界で1番美味しいステーキ屋として有名な『ピーター・ルーガー』を訪れます。ボクも1回は行ってみたいなあ。最近 日本でも熟成肉が話題になっていますが、ここはヒレとサーロインを両方食べられるTボーンの塊を熟成させ、オーブンで高温で焼いて、客に供するスタイルです。牛はアンガス牛。フランスの牛よりサイズが大きく脂肪が多いのでステーキ向きだそうです。アメリカの牛肉というと赤身というイメージでしたが、フランス人から見る と脂肪が多い、という見方は驚きました。
●監督の友達の肉屋。彼と監督が映画のために世界20か国、200を超えるステーキハウスを食べ歩いたそうです。当然の事ながら、太っています(笑)

                                     
それからアルゼンチン、ブラジル。こちらでは牛肉の1人当たり消費量はアメリカやヨーロッパより遥かに多いそうです。スペイン人が連れてきた牛が風土に合っていたようです。画面ではバーベキューにして、でかい肉を食ってますが、あんまりおいしそうじゃありません。
●これは神戸牛。霜降りが酷い。

                                  
劇中 イギリスの農家の人が言ってました。昔の料理本を見ると、今とは違う材料が載っているそうです。例えば鶏肉7.5キロという表記がありますが、今はそんな大きな鶏は存在しない。コスト上の問題で大きくなる前に、すぐ出荷してしまうからです。彼が時間をかけて、そのくらいにまで育てた鶏肉は実に美味しかったそうです。コストの関係から3年以内に出荷されてしまう今の牛肉にも同じことが言えます。

                                            
監督たちは市場に出回っている混血のアンガス牛に対抗して、純血のアンガス牛を育てるアメリカの農家、それにイギリスの純血のハイランド牛を育てる農家、イタリアではもう数少なくなったキアーヌ牛を育てる農家を廻って、ステーキを試していきます。また日本では和牛の霜降り肉のステーキの柔かさと肉汁に監督は驚嘆していました(築地の鉄板焼きステーキ店でした)。ボクは画面に映った、真っ白な霜降り肉は気持ちが悪い、という感想しか持ちませんでしたが、何も知らない外人が食べたら驚きなんでしょう。ですが監督は神戸牛や松坂牛の生産農家を見て疑問を抱きます。他の地域では牛は放し飼いで牧草を食べさせていたのに、日本では牛を牛舎に入れっぱなしで、高カロリーの穀物飼料を食べさせ、マッサージをしている。だから肉に脂がのりやすい。これでいいのか、と言うのです。そのあと監督はスウェーデンへ向かいます。和牛の精子は輸出厳禁だそうなのですが、どこかで入手した(笑)和牛の遺伝子を移植した牛、つまりスウェーデン産和牛を育てている金持ちが居ます。彼は和牛を放し飼いにして牧草を食べさせ、育てている。高級肉として1キロ400ユーロ(6万円くらい)でレストランに卸しています。メニューの価格ではその3倍くらいでしょう。まだ生産量が少ないのですが、将来は広がってくるのかもしれません。
●これはキアーヌ牛。1回だけ食べたことありますが、日本の霜降り肉の100倍はうまいです。

                           
監督が最もおいしい、と評価したのはスペインのある農家が育てている牛です。アメリカや日本では高カロリーの飼料を与えて2年くらいで出荷してしまうのに、こちらでは放し飼いで牧草を食べさせながら10年以上かけて育てている。だから脂も乗るし、肉も美味しくなるそうです。『牛肉の味は牛の性格が大事。幸せに牛を育てれば、肉は美味しくなるよ』、と農家のオジサンは断言します。



映画自体は工業化した食肉産業の問題点や安全性をえぐるような観点はそれほど、ありません。当然のことながら霜降り肉を作るために牛をビタミン不足に追いやり健康を害している問題も出てこない。そもそも牛肉の生産は、餌などで鶏や豚の数倍の環境負荷がかかるそうです。地球上の人間が皆 牛肉を食べ始めたら地球はパンクするとも言われています。そこいら辺を何も考えずにステーキを食ってばっかりいるのも、さすがに気になります。時折 カメラも手振れするし、ドキュメンタリーとしても問題あります。ですが、たっぷり2時間 でかいステーキ肉のオンパレードで、とにかく、おなかが空いてくる映画ではありました(笑)。


と言いつつも(笑)、映画を観た後、六本木のステーキ屋へ行ってみました。映画に出てきたNYの『ピーター・ルーガー』から独立して、約2年前に日本に上陸した店があるんです。未だにTVでしょっちゅう取り上げられるので、なかなか予約が取れません。そういう、ちゃらちゃらした店は好きじゃないんですが、たまには華やかな店で家庭内接待、というやんごとない事情、つまり平和維持活動です。

                                      
店に入るとレセプションにノースリーブで超ミニのワンピースを着た女の子が5、6人ぷらぷらしています。それぞれバラバラな服を着ていたので、客かと思ったら案内の店員さんでした。国内でも海外でもスタイリッシュな店ではレセプションに黒服を着たモデルみたいな美男・美女がいる、ということはありますが、こういうのは初めてです。一瞬違う種類のお店かと思いました(笑)。その子たちも含めて、ウェイターなどの店員さんはやたらと物腰は丁寧ですが、殆どアルバイトみたいな感じです。皿を運ぶ手つきや注文聞きも危なっかしい。ちなみにボクのテーブルの隣のお客さん(若い女性二人)は『わざわざ新幹線で食べに来たんですぅ〜』と嬉しそうに店員に話してました(笑)。最近の若い女の子って肉が大好きですね。
                                          
肝心のステーキは熟成肉の香ばしさはありましたし、霜降りの脂みたいにギトギトはしてないし、まあ、美味しかったです。というより、事前の期待値が低かったので、美味しく感じたんだと思います(笑)

塊のままのTボーンをオーブンで焼いて、煮えたぎるようなバターがかかっているステーキもステーキが載ったお皿も、サーブの仕方まで映画で見た通りだったので、可笑しかった。サーブしてくれた店員さんが爪にネイルをしているところだけは違いましたが(笑)。

●二人分で骨を除いて550グラム。こういう肉は脂がしつこくないので、その量でもフツーに食べられました。