特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

予算は極端に違うけれど(笑):映画『インターステラ―』と『パンク・シンドローム』

さ、寒い〜。ヨーロッパ出張から帰ってきた人が、あっちより日本の方が寒いって言ってたぞ。
この前の土曜日、久々に銀座へ行ったら、中国系の人が凄く多かった。朝はGUCCIの開店前に大行列を作っていたし、銀座通りの歩行者天国を歩いていると視界の中に常に中国系の人が居るという感じだ。ケータイで記念写真を撮ってる人がやたらと多い。団体旅行と言うより、2,3人のグループが多かったから本土より香港や台湾の人が多いのだと思う。円安が後押ししているんだろうけど今やこういうインバウンド需要(海外観光客の需要)は年間5兆円もあるそうだから、バカにはできない。デパートなんか今や外国人 命!だろう。5兆円と言えば消費税3%分、それに原発廃炉に出来る金額(全電力会社のB/Sの原発&燃料の帳簿残金額)だもの(笑)。
もうすぐ旧正月が始まったら中国本土の人がさらに増えるんだろう。いつも思うんだけど中国にしろ、ベトナムにしろ、インドネシアにしろ、東南アジアは実質は旧暦で動いている国の方が多い。この点はビジネスでは結構気を使わなくてはならない。今にして思えば日本も無理して西洋暦にする必要なんかあったんだろうか。そうすれば24節気のように良い風習も大事にできたんだし。これも明治の薩長の田舎者文化負の遺産かも。
                                         
ワイン屋のバーゲンへ行ったら窓際のテイスティングコーナーで、バッチリ、髪型とお化粧を決めたお姉さんがオヤジとシャンパンを飲んでる。これもボクは普段は全く見かけない光景なので新鮮だった(笑)。洋服屋にしろ、デパ地下の食べ物にしろ、銀座を歩いていると目移りして、ついお金を使ってしまう。とにかく危険なので、要件だけ済ませて急いで撤収した(笑)。
                           
                                                                                                      
六本木で映画『インターステラー

異常気象で滅亡の危機に瀕する近未来の地球。激しい砂嵐は食糧生産を困難にし、人類の健康も蝕まれつつあった。元宇宙飛行士の主人公(マシュー・マコノヒー)は幼い兄妹を育てながら、トウモロコシ畑の中の一軒家で老父(ジョン・リスゴー)と暮らしている。ある日 彼はふとしたことからNASAの秘密計画を知ってしまう。銀河のかなたに人類が移住できる星を探しに行くと言うのだ。パイロットに選ばれた彼は、すがる娘を置いて宇宙に旅だつ。幼い娘に『必ず帰る』と約束をして。

今 SFというジャンルは中々厳しいのではないだろうか。今どき、科学技術が無条件に人類を幸せにする、という発想をしてたら、ただのバカだからだ(笑)。ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーのようなお伽噺ならともかく、あとはSFというと、科学技術が人類を脅かすネガティヴなものが多いような気がする。原発事故にしろ環境破壊にしろ、現実に起きていることがそういう方向だから当然なんだけど、昔見たワクワクするようなSF作品というものは最近は縁遠い。
●お話はトウモロコシ畑の中の一軒家から始まり、また、そこへ戻ってくる。

                                                     
この作品は久しぶりのSFらしいSFという感じだった。勿論 技術が人間を幸せにすると言った単純なお話ではない。お話は地球での父と娘の愛情物語から、徐々に宇宙冒険に変わっていく。能天気な映画でもないし、特撮は流石にすごいし、宇宙の景色は美しいし、3時間弱の上映時間は全然長く感じなかった。
●父(マシュー・マコノヒー)とファザコンの娘。再び宇宙へ飛び出すことを夢見る父を娘は懸命に引き止める

マシュー・マコノヒーアン・ハサウェイマイケル・ケインジョン・リスゴー(彼も『ガープ』の出演者だ!)と出演者は好きな人ばかりだし、フル出演しない長じた娘役のジェシカ・チャスティンの起用もややもったいなかったけど、とにかく豪華な映画だ。
●人類移住可能な星を探す計画を立てた博士の娘アン・ハサウェイは宇宙飛行士

●地球に残された息子と娘(ジェシカ・チャスティン)には人類滅亡の危機が迫る


人類が移住可能な星を探すという壮大な計画の謎が解き明かされていくにつれて二転三転していくお話や未知の宇宙空間やブラックホール、文字通り小山のような波が襲ってくるCGは見ていて楽しい。静かな音楽も美しかった。最後のネタ明かしの5次元の話は今いち、ボクには良くわからなかったが(話が長すぎて、前半の伏線を拾い上げたというより無理やり思い出させたという感じ)、違和感を感じるほどでもなかった。大予算の映画らしい映画を久しぶりにみたなあという感じ。フツーに面白かった。特に主人公の相棒ロボットはサイコーでした。




もう一つ、こっちがメインです!青山で映画パンク・シンドローム
『インターステラ―』とは何もかも対照的な、このフィンランドの手作りドキュメンタリーは『インターステラ―』の予算の100分の1もかかってないんじゃないのか(笑)。

フィンランドの知的障碍者のパンクバンド『ペルッティ・クリカン』を描いたドキュメンタリー
バンドのメンバーは男性4人、ギター、ベース、ドラム、ボーカルの4人編成。服の縫い目が気になるギターのペルッティ、自宅から出たくないドラムのトニ、足の爪を自分で切りたいヴォーカルのカリ、美人国会議員が大好きなベースのサミ。
●向かって左からボーカルのカリ、ギターのペルッティ、ベースのサミ、ドラムスのトニ

                                                     
知的障害を抱える彼らはグループホームや自宅で暮らしながらバンド活動を行っている。正直言って演奏技術は中学生なみだが、彼らの演奏はなぜか心に響く。彼らの『少しばかりの敬意と平等が欲しい〜』、『グループホームの食事はブタの餌〜』、『政治家は嘘つきだ。俺たちを施設に閉じこめる』という歌詞には文字通りウソがないからだろう。彼らの演奏で観客のモヒカンの兄ちゃんとかが本気でノッているのにはびっくりした。パンクと言っても、どこか牧歌的な景色なのはフィンランドだからだろうか(笑)。
                          
画面で見ると彼らの暮らすグループホームは明るい個室だし、図書室やバンドの練習用の部屋もあるなど実に文化的で、多分日本の施設とは雲泥の気がするが、健常者と同じように暮らしたい彼らにとっては不満があるのだろう。
●ギターのペルッティ。

●彼は洋服を見ると、その縫い目が気になって仕方がない(笑)。相手の迷惑を顧みず、服をいじり続ける。

                                      
映画はただ、そんなバンドメンバーの日常生活を描いていく。彼らは言葉が不自由だったり、感情が不安定だったり、ハンディはあるけれど、ほぼ自立して暮らしている。失恋もするし、結婚もする。おもらしもするし、グループホームの運動会でパンツがずり落ちてお尻が丸見えになったりもする。超くだらないことでバンドメンバー同士 深刻な喧嘩もする。
●ボーカルのカリと彼女。施設で暮らしながら彼らは結婚する。

そんな彼らは各地のロックフェスで演奏したり、ドイツツアーやラジオ出演、レコードデビューまで果たし、ギターのペルッティは大統領のレセプションに招待されるまでになる。

淡々とした描写だから最初は退屈するかなあと思っていたが、彼らのユーモラスな生活と演奏を見ているうちに、だんだん面白くなってきた。客席からも次第に笑いが起こる。生活態度も性格も問題あるし、けど、真剣な彼らが愛すべき存在に見えてくるのだ。
●くだらないことで大ゲンカをしていた二人の仲直り

                                     
この映画を見ていると、個性あふれる彼らと障碍者や老人をおおらかに受け入れる(実際は差別や障害はあるだろうが、日本と比べてマシ、ということ)フィンランドの社会が実に羨ましかった。昨年見た『365日のシンプルライフ』もそうだったけど映画『クイーン・オブ・ベルサイユ 大富豪の華麗なる転落』と映画『365日のシンプルライフ』 - 特別な1日(Una Giornata Particolare)フィンランドは日本より遥かに豊かな社会に見えた。日本のように新しい商業施設もないし、人々の娯楽は自転車でのハイキングだったりするけれど、人々が自分の意志で時間の使い方を決めているように見えるのだ。人々は老人や身体障碍者も平等に扱い、周りも極力 彼らの意志を尊重するのが根付いているように見える。そういう社会って、何か問題が生じると考えることを直ぐ放棄してやたらと自粛してしまう、今の日本の社会とはずいぶん違うように見える。
この映画は地味だけどドキュメンタリーとしては傑作かもしれない。ユーモラスな場面が多くて客席からは笑い声が途切れることがない。けれど色々考えさせるし、実に面白い作品だった。