特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『柿の糠漬けと白トリュフのパスタ』と映画『DUNE/デューン 砂の惑星』

 いよいよ、秋も深まってきました。夏の間はあんなに疎ましかった陽の光が今はなんとなく愛おしいです。
 そうやって今年もあっという間に過ぎてしまうのでしょう。ストレスだらけの定年までの時間は早く過ぎて欲しいけど、そのあとはくれぐれもゆっくり、でお願いします(笑)。

 
 近所のイタリアンへ行ったら、突き出しに柿の糠漬けが出てきました。お店の女性のおばあ様が使っていたという70年物の糠床で漬けた柿と生ハムの組み合わせ、日伊の発酵食の組み合わせです。

 

 そして秋のメインイベンター、白トリュフ。やっぱり、この香りを味合わないと秋が来た感じがしません。

 白トリュフにはネッビオーロのワインが良く合います。ボクはお酒は弱いし、こだわりもありませんが、同じ土地の土から産まれたネッビオーロと白トリュフの組み合わせ、この誘惑にはかないません。
 この日 ソムリエ氏がグラスで出してくれたワイン、なんと54年ものですが、まだまだブドウにパワーが漲ってました。年月を経ても全然枯れてないのは驚きでした。ブドウも人間みたい、色々あります。

 こういうワインを飲んだ時は単細胞なボクは『人生は素晴らしい』と、まさに『無敵な気持ち』になるんですが(笑)、直ぐ酔っぱらってしまうから良い気分もほんと、一瞬だけです。
 良いことは長く続かない。悪いことも長く続かない。通り過ぎていくのを待つだけ、なんでしょうか。



 ということで、 日比谷で『DUNE/デューン 砂の惑星

 人類が地球以外の惑星に移り住み宇宙帝国を築いた遠い未来。皇帝の命により、宇宙飛行に欠かせない物質「メランジ」が生産される砂の惑星デューンを統治することになった貴族、レト・アトレイデス公爵(オスカー・アイザック)は、妻ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)、息子ポール(ティモシー・シャラメ)と共にデューンに乗り込む。しかし、それまえデュ―ンを治めていた貴族、ハルコンネン家と皇帝の陰謀でアトレイデス公爵は殺害されてしまう。逃げ延びたポールとジェシカは原住民フレメンの中に身を隠し、帝国に対して革命を起こそうとするが


 『スター・ウォーズ』から『風の谷のナウシカ』まで数多くのSF作品に影響を与えたフランク・ハーバートの古典的SF小説を、『メッセージ』のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が映画化したもの。何度も映画化・TV化されていますが、あまりにも話がでかい&長いので失敗作になったり途中放棄したり、映画化は困難を極めるという曰くつきの作品です。

 当初はスルー予定でしたが、アメリカ、イギリス、フランスなどで公開後 興収1位を記録するなど圧倒的に評判が良いので見に行ってきました。ちなみに日本だけは興収1位はプリキュアだそうです(笑)。だ~めだ、こりゃ。

 お話自体は特に興味ないです(笑)。原作が’’アラビアのロレンス’’がモチーフになっているのはその通りだなーと思いながら見ていました。延々と砂漠が広がる地に資源につられて帝国が植民地支配をする。そこに流れてきた主人公が圧政に耐えかねた原住民たちを味方につけて、反乱を起こす。
 今回はその役をティモシー・シャラメ君が務めています。

 製作費は100億円以上かかっているそうです。殆どCGを使ってないそうですから、そらあ、いくらお金があっても足りない(笑)。圧倒的な映像美です。広大な砂漠、超巨大セット、計算されつくした画面の構図、俳優さんたちのアクション、宇宙空間、どれも映像が非常に美しく、迫力がある。

 更にその映像美の中でフィーチャーされるティモシー・シャラメ君が実に絵になっています。彼は美形であるだけでなく演技力もありますけど、彼を見ているだけでも全然退屈しないです。

 ヴィルヌーヴ監督だから哲学的な話になっているのかと思いましたが、古典的なSFとして勝負しています。プロットはちゃんとしてますけど、大した内容はありません(笑)。
 お話というより圧倒的な映像美とシャラメ君で3時間弱、押しまくる。きめ細かな、そして大迫力の映像がスタイリッシュに提示されます。砂漠の映像が雄大なのは勿論ですが、異星の空や自然、部屋の場面のレイアウトなども含めて画面がいちいち、美しい。ハンス・ジマーの音楽も含めて、映画体験としては大成功していると思います。
●主人公の父親である公爵(オスカー・アイザック 写真右)は帝国の陰謀であることを知りながら、惑星デューンへの赴任を受け入れます。

 ボクの嫌いなグロテスクな描写も少なく、アクションは小気味良い。安心してみていられます。シャラメ君が演技出来るのは判ってましたが、今回は彼の女性的な風貌が古典的なヒーロー像に陥るのを防ぎ、新たなヒーロー像を提示できている。また人種的な気配りも細やかで、2020年代に見る映画としてはふさわしい。

●仇敵のハルコンネン家

●父や部下たちを殺された主人公は母(レベッカ・ファーガソン)と砂漠の旅に出ます。

 ただ映像美が特徴なので、この映画、あまり感想を述べるところがない(笑)。大画面を見て、味わい、楽しむ。そういう映画です。
●砂漠には『ナウシカ』の王蟲を連想させるような巨大生物が住んでいます。

 3時間弱という大作ですが、今作はあくまでもPART1,お話は完結しません。それくらい話が長い。だけど全然退屈しません。それが映像の力です。
●主人公たちは当初敵意を持たれていた原住民たちと仲間になります。

 これは配信でみるような映画じゃないです。大画面、大音響がふさわしい。豪華エンターテイメントですが、先週取り上げた007みたいにバカみたいな感じでもなく(あれはあれでいいのですが)、内容はないけど説得力のある話をまじめに展開した上での、肩が凝らない歴史大河ドラマ?です。これだけ映像にお金がかかっていて、なおかつ端正かつスタイリッシュに提示されていれば全然OK。かなり楽しいです。スターウォーズなんかより遥かに高品質だし、面白いと思います。
 日本以外での世界的大ヒットで続編の製作が決定、公開は2年後だそうです。お話は忘れても大丈夫かな(笑)。

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