特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

盛夏のバカ映画:映画『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』と映画『ハッパGoGo 大統領極秘指令 』

 愉しい夏休みが始まりました。暑さは厳しいけれど、精神的には何となく、ほっとします。深いため息が出る感じ。

 自由が丘の駅前では盆踊りをやってました。新盆でもないし、旧盆でもない、なんだかよくわからないですが、イベントをやりたいんでしょうね。まあ、ボクはこういう人だかりはとにかく嫌い。こういうものを素直に楽しめれば得だなあ、と思うんですが、自分の限界です(泣)。
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 土曜日のNHKスペシャル#あちこちのすずさん』、戦争中の市井の人々のエピソードを集めた番組ですが、やはり実際の体験というのは力があると思いました。
 特に戦時中はパーマをかけている人は外を歩くなという布告を出した町会もある一方、パーマやお洒落を楽しんだ女性も大勢いたという話はとても面白かった。今で言えば、名古屋市長の河村や大阪市長の松井のようなファシストもいる反面、抵抗する庶民もいた。
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www6.nhk.or.jp

 番組で取り上げられていたシベリア抑留の話も面白かったです。
 ボクも子供のころ シベリア帰りの近所の床屋の爺さんから散髪をしてもらいながら、散々話を聞きました。勿論 抑留は大変だったそうですが、彼にとっては民主主義に触れた始めての機会でもあったらしく、晩年までロシア語の雑誌を購読していました。そんな彼は職人ばかりだった町内唯一のインテリとして尊敬されていました(笑)。元来はそういう世の中だったんですよ。

 勿論 番組にはもの足りない部分もありました。ヨモギを食べることも知らない出演者のアホなジャニーズの小僧もどうなってるんだと思いましたが、只 殆ど全ての終戦特集と同じように、被害者としての日本人しか描かれないのはやはり嘘くさく感じます。映画『この世界の片隅に』でも加害者としての日本人が言及されているんですけどね。
*香山氏のこのtweetは、漫画エヴァンゲリオンのキャラをデザインした貞本という有名漫画家?のバカtweet(↓)についてのものです。おなじ漫画家でも『すずさん』とは大違い。


 戦争責任者、天皇とまでは言わないけれど、せめて そのお先棒を担いで無謀&無能な命令を出した指揮官とか首長、それに好戦意識を煽ったマスコミの責任は問われるべきだと思います。戦争を経験した人がどんどん減っている今が最後のチャンスのはずです。
 ドイツやイタリア、それにフィンランドの例を見ても、日本人は加害者の面も含めて総括しなければ戦後はいつまで経っても終わらない、と思うんですけどね。

同じく土曜の深夜ETVに放送された映画『ひろしま』の特集、原爆投下後10年も経たないうちに製作され、数万人の被爆者がエキストラとして参加したというのも度肝を抜かれました。
さらに製作したのが日教組という事で、被爆者を政治利用したという側面もあったという視点を入れたところが素晴らしかった。
こちらは来週 ETVで放送される映画本編も見てから触れたいと思います。


と、いうことで 夏休みらしく、バカ映画の感想を2つ。バカといっても良い方のバカ、尊称としてのバカの方です。それも中々見られないフィンランドとウルグァイの映画です。どうだ、参ったか(笑)。

 日比谷で映画『アイアン・スカイ第三帝国の逆襲

ironsky-gyakushu.jp

30年前 人類は月面ナチスの地球侵略を阻止したものの、核戦争が起きて地上は壊滅。生き残った僅かな人類は月面ナチスが遺した月面基地に逃れたが、エネルギーが枯渇して絶滅の危機に瀕していた。エンジニアのオビは荒廃した地球の深部の空洞にエネルギー源があることを知り、それを手に入れようと地球へ旅立った。そこにはヒトラーなどナチスの残党が待ち構えていた。


 2012年の『アイアン・スカイ』の続編です。前作に引き続いてティモ・ヴオレンソラというフィンランドの人が監督・脚本を手掛けています。やっぱりフィンランド恐るべし(笑)。

 第2次大戦で滅んだかに見えたナチスはひそかに月に逃れており、月面総統として君臨していたヒトラーの弟が新たに地球侵略を始める、と言う前作は世界中でヒット。前作同様、世界中のバカSFファンのクラウド・ファウンディングで資金を集めて、今回の続編が作られました。
●前作。このスチールだけで内容は8割がた判ります(笑)。


『アイアン・スカイ』特別コメント入り予告編

 
 今作ももちろん、良い意味でくだらないです(笑)。まず『月面ナチスって、言葉の響きがバカっぽくて良いと思いませんか?映画の中でも''Moon Nazi''って言ってましたけど、英語で言ってもバカにしか聞こえない(笑)。お話しも、そのまんまです。

 ナチスの真の正体は実は恐竜の時代に地球にやってきた宇宙人たちでした。宇宙人たちは地球環境を汚す人類を滅ぼそうと、チンギス・ハン、十字軍、ヒトラー金正日スターリン毛沢東サッチャービン・ラディン、スティーヴ・ジョブス、マーク・ザッカーバーグなどの姿で人類に災厄をもたらしていました。
●地球を滅ぼそうとする13人の宇宙人たち。

 しかし、その中の一人、大統領になっていたサラ・ペイリンがうっかり核戦争を始めてしまい地上は壊滅(笑)。宇宙人たちも地球内部の空洞に逃れていたのです。

●主人公の地球人たちですが、全然印象に残らない。

 今回 ヒトラーはペットのティラノザウルス、ブロンディ(ヒトラーの愛犬の名前です)に乗って、サッチャーは『この共産主義者め』と言って、人間を襲ってくる。それにサラ・ペイリン大統領が核戦争を起こすっていかにもありそうな話じゃないですか。
●実は宇宙人だったヒトラーとスティーヴ・ジョブス

 空飛ぶ円盤、恐竜、ナチ、地球空洞説、バカSFファンが喜びそうな要素がてんこ盛りです。ボクとしては13人の宇宙人の中に東條英機昭和天皇ヒロヒトでも入っていれば、更に面白かった(笑)。

サッチャーは『この共産主義者め』とわめきながら襲ってきます。

ビン・ラディンローマ法王が仲良く?恐竜戦車にのって追いかけてきます。

●前作のSM金髪美女(上の写真)もこの姿で続投。変なところは律儀な続編です。

 ハリウッド版ゴジラにしろ、パシフィック・リムにしろ、バカSFが続編になるとパワーダウンすることは良くあるものですが、今作は続編の方が面白かった。それ以上の感想はないんですけど(笑)、バカで面白かった。

 一応 最後に次作の伏線が敷かれていて、今度は火星の裏側に滅びたはずのソ連共産主義者が潜んでいるというお話しのようです(笑)。他にも中国を舞台にこの映画の第3弾を作るというニュースもあるし、排外主義や山本太郎マンセーの悪い意味でのバカだけでなく、良い意味でのバカもやっぱり伝染するようです(笑)。


映画『アイアン・スカイ/第三帝国の逆襲』7月12日(金)公開


もう一本は、新宿で映画『ハッパGoGo 大統領極秘指令
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www.8855movie.com

2013年南米ウルグアイホセ・ムヒカ大統領は世界で初めてマリファナを合法化した。しかし、合法化したものの国内には十分なマリファナがなかった(笑)。国民の不満を抑えるためムヒカ大統領は、薬局を営むアルフレドと化学者の母、タルマにマリファナを調達する秘密指令を下した

 世界で最も貧しい大統領として有名な、ウルグアイホセ・ムヒカ元大統領自らが出演したコメディです。
 映画ではまず、ウルグアイマリファナを世界で初めて国家として合法化したことが描かれます。第一の目的はマフィアの資金源を断つこと。これは史実です。

www.nikkei.com

 ここからはフィクションです。
 マリファナを解禁したもののウルグアイ国内には十分な量のマリファナはありませんでした。ウルグアイの周りでは山ほどマフィアがマリファナを売っていますが、国家としてはマフィアから調達するわけにはいきません。
 ムヒカ大統領は軍にマリファナ栽培の命令を下しましたが(笑)!、育つまでには時間がかかります。国民の不安は高まるばかり。このままでは政権の維持も危うくなります。

 そこでマフィアから調達したマリファナ入りブラウニーを販売して捕まっていた薬局店主アルフレドと化学者の母、タルマに極秘にマリファナを調達するよう大統領の密命が下ります。
●主人公のアルフレド(左)と化学者の母

親子は、マリファナがいち早く解禁されていたアメリカのコロラド州へ向かいます。
●大統領は親子を自分の農園に呼んで、国民に供給できる量のマリファナを大量に調達するよう、密命を下します。

 薬物が南から入っていると非難している米国から、逆に大麻ラテンアメリカに輸入したい、といったらどうなるか?という強烈な皮肉を込めたコメディです。コメディと言っても、ムヒカ大統領はバンバン出てくるし、オバマ大統領もでてきます。ムヒカ大統領の家やボロい車まで出てくる。本物そっくりに作られているためドキュメンタリーにしか見えません。まさにフェイク・ドキュメンタリーです。

 2人が潜入するコロラドマリファナ・フェアも実際のお祭りの光景ですから、まるっきりホントにしか見えない。ゲラゲラ笑いながらも、あまりにもリアルすぎて訳が分からなくなります。
●実際にコロラドで行われているマリファナ祭り。


 ちなみにマリファナを解禁したコロラド州マリファナ解禁で大成功した事例として知られています

globe.asahi.com

●アルフレドはマリファナ先進国の代表としてスピーチを求められます。

 コロラド州大麻由来の税収は5年で1000億以上、1100以上の小売店が生まれ、観光客も増え、雇用や経済面で大きな効果が生まれています。そのお金を使って奨学金にしている例もあるそうですhttps://www.businessinsider.jp/post-1089

 デンバー市だけでも税収は50億円増、雇用へのプラス効果も生まれていると、市長は正式に表明しています
forbesjapan.com

 この成功例を見て 今やカリフォルニア州など全米の半分以上の州がマリファナ解禁に踏み切っています。大手スーパーでもマリファナ関連製品の販売を始め、色々な企業も新たな成長分野として参入を検討してるそうです。blogos.com

 以前 日経ビジネスを見てたらサントリーに買収されたウイスキーメーカー、ビーム社も参入すべきかどうか今 困ってるらしいですよ(笑)。ビーム社としてはやりたいけど、親会社のサントリーにどう言い訳するかが問題らしい(笑)。そんなことを考えながら、アホな映画をゲラゲラ笑いながら見てました。
●母子は大量のマリファナを入手するために、アメリカ中を駆け回ります。

 映画のお話し自体は説明するほどのものではありません(笑)。ただ、面白い。ただの農家に住んでいるムヒカ元大統領の普段の暮らしぶりも非常に興味深い。元大統領がアメリカに出かけるシーンで使われるのは一般の飛行機、他の乗客と一緒です。大統領専用機じゃないんです。ウルグアイだったらそれが当たり前なんでしょうが、権力と国民の距離の近さには思わずはっとしました。

 終盤 ムヒカ大統領が『こうやって権力者を笑いものにするのがいいんだよ』と画面の中で述懐します。文字通りフェイクなドキュメンタリーなこの映画で、ここだけは本音だったに違いありません。

マリファナ解禁しました!! 世界で初めて大麻を合法化したウルグアイ産映画『ハッパGoGo』(サイゾー) - グノシー