特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

オリンピックの災厄と映画『最愛の大地』

くっそ〜。
ジブリの呪い』は通じなかったか(笑)。開催する大義もなければ、汚染水は溢れる、東京オリンピック招致なんか失敗すればいいと思ってたのに。生活者にして見ればオリンピックなんて迷惑極まりないし、押しつけの娯楽も渋滞ばかりを作り出す公共工事もうんざりです。そんなカネがあったら福島へ回せって〜の。
所詮ショービジネス、金儲けと利権の塊のくせに、やたらとスポーツを美化している連中が大騒ぎしているのは実に気持ち悪いです。まして、オリンピックで夢がどうのこうの言ってるような連中には呆れるしかありません。自分がオリンピックに出場するわけでもなくTVの前で座っているだけなのに(笑)、そんなくだらないことが自分の夢なんでしょうか。少しはプライドないのか、ボケ。まあ、他人のことはどうでも良いから、こちらは黙ってTVを消してますけどね。
                           

強いてオリンピックの良い点を挙げれば、外国の目が日本に集まることで、原発事故の処理にしろ、憲法改悪にしろ、あまり変なことができないような空気が多少は醸成される可能性があることでしょう。原発の事故処理にしても、周辺国との関係にしても、ただでさえ、最近の日本は一人よがりな、排外的な雰囲気が広がっているなかで、少しは外国、他者の目を意識することは悪いことではない。というか、それしか救いはないかも。

                             
土曜のTBS『報道国家』で福島の避難民の人が今回のバカ招致騒ぎを『別の国の話のように思える』と言っていました。オリンピックで東京に一極集中のバブル投資が進んでいくと、そう感じる人は地方を中心に全国にどんどん増えていくでしょう。あとは個人個人が『こんなの、いち抜けた』と言えるようになれるかにかかっています。

                                             
ちなみにオリンピックでバブルが起きるとたいていの場合 反動で不況になります。ギリシアしかり、スペインしかり、だ。前回の東京オリンピック後も『証券不況』、『山一不況』と呼ばれる大不況が起きている。サンウェーヴや山陽特殊鋼(ドラマ『華麗なる一族』の舞台となった会社)と言った大会社が倒産し、赤字になった山一證券では取り付け騒ぎがおきました。金融緩和も効果がなく、政府が戦後初の赤字国債を発行することでなんとか立ち直ったが、今度は同じ手は使えない。それだけははっきりしています。




元来だったら、もっともオリンピック開催がふさわしいイスタンブールが落選したのは隣国のシリアの内戦が続いているのも大きな理由でしょう。もちろん ボクはシリアへの軍事介入は反対。そんなことをする暇があったら200万人にも上るという避難民に手を差し伸べるほうが先だと考えるからです。


アンジェリーナ・ジョリーが初監督した『最愛の大地』(The Land of Honey And Blood)を見てきた。戦場での女性への犯罪を告発するとともに、それに対する国際社会の軍事介入を訴える作品です。最愛の大地

約20年前 死者20万、避難民200万人を出し泥沼化したボスニア・ヘルツェゴビナ紛争。その紛争の際 セルビア人がモスレム人に加えた、いわゆる民族浄化エスニック・クレンジング)とそれに抵抗するモスレム人の女性を中心に描いたもの。

紛争が始まる前はお互いほのかな恋心を抱いていたセルビア人男性と画家のモスレム女性。ところが紛争が始まるとセルビア人男性はセルビア民兵の部隊長になり、モスレムの住むアパートを襲う。セルビア民兵は男は皆殺しにし、若い女性たちは自分たちの基地へ連行する。基地では兵隊たちは女性たちをこき使うだけでなく暴力や性暴力をふるう。そんななか、部隊長の男は彼女だけは懸命に匿まおうとするのだが---
そういうお話。



(ボクは関心ないが)アンジェリーナ・ジョリーの初監督作という話題と、ぬるい(笑)邦題に釣られてきたであろうカップル客で一杯の客席は、ぽかんと見ていた感じでした(笑)。エスニック・クレンジング(民族浄化)はそのセンセーショナルなネーミングも相まって、欧米では非常な非難を巻き起こしました。今ではそれはクロアチアが雇った広告代理店が作ったネーミングだったこともわかっているけれど、滅茶苦茶な犯罪行為が起きたことは間違いありません。この映画は正視できないようなシーンは避けているものの、何が起きたかを真正面から描いています。惨劇が行われた街に翻っているサラエボ・オリンピックの旗が実に虚しい。
●戦争で儲けた広告代理店の内幕

                                   
劇中 セルビアの兵士が女性をレイプしてきた兵士に話しかけた台詞はほんと、衝撃的だった。『HOW IS CLEANSING?』(浄化はどうだった?)っていうのだ。こいつ、マジでぶっ殺せと思いました(怒)。映画の中でそいつは直ぐ殺されましたが(笑)。
だがセルビアだけが極悪人の集団と言うわけではありません。クロアチア側もモスレム側も暴虐行為はやってたし、そもそもセルビア側にしてみればモスレム側に100年前に同じようなことをされた復讐だとというのです。お話のなかでのモスレム側の報復手段も限りなく非情です。映画ではそういうことも、ちゃんと触れられています。

●主人公の女性とセルビア人部隊長

セルビア人部隊長は女性を自分の専属画家とすることで救おうとするが

                                          
丁寧に描かれた映画で、力作なのはよく判ります。だけど、あまりに『正しく』描こうとしているところが息が詰まりそうで、ドキュメンタリーならともかく、劇映画としてはいまいち。日経の映画評で星4つだったのは過大評価。同じボスニア紛争を描いた『ウェルカム トゥ サラエボ』みたいな傑作は既にあるし。

                                                      
だが、この映画の監督のアンジェリーナ・ジョリーが国連総会で戦争での性犯罪を告発したことからもわかるとおり、そういうことを第3者はどう考えるか、つまり慰安婦の強制連行があろうがなかろうが、それを助長するようなことが許しがたい犯罪行為だと考えているのがよく判る作品 ではあります。やっぱりこの目で見たら絶対に許せない。まして、そういうことをやったのは日本だけじゃないなんて言い訳はお笑い草です。この映画を見た大多数の人は慰安所みたいなものに関わった時点で旧日本軍は人間失格だし、それを弁護するような奴も同類と思うでしょう。あたりまえだろ!そういう点では独りよがりの屁理屈に染まっている日本人に冷や水をかける効果はあるかも。


普段だったら、あまり取り上げないような題材の映画の感想を書いたのはやはり、シリアの問題があるからです。でっちあげだったイラク戦争は論外ですが、少なくともボスニア・ヘルツェゴビナ紛争ではNATOの介入によって、セルビアの暴虐行為を抑えることができました。正直 空爆がなければ、目を覆うような民族浄化は止まらなかったでしょう。それはこの映画が訴える通りで、残念だけど確かに、そう思います。
米議会でイラク戦争に徹頭徹尾反対し、ネオコンや保守派の憎悪の的になっていたバーバラ・ボクサー議員のような人も上院外交委員会で今回のシリアへの軍事介入に賛成したみたいだから、もしかしたら ちゃんとした理由はあるのかもしれません。そこはボクにはわかりません。かといって、はっきり事情がわからないうちから、安倍のようにホイホイ、尻尾を振るのは愚の骨頂です。 (ホント、とことんプライドがない奴です)
大事なのは人々の犠牲を減らせるか、だと思います。シリアの場合 ミサイルを撃ち込むことが犠牲を減らすことにつながるとはボクにはとても思えないんですが。