特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『2回目のワクチン接種』と映画『プロミシング・ヤング・ウーマン』

 連休明けの月曜日、どうしたってブルーな気持ちですが、4連休は楽しかったです。
 4連休でこれだけ楽しいのだから、定年で毎日が連休になったらどれだけ楽しいんでしょうか(笑)。

 今回の連休は夜は9時に寝て早起きする普段通りの生活でした。会社に行く代わりに、朝の間に家の周りを散歩したり、撮りためたビデオを消化したり、料理を作っているだけで、充分に充実していたし、楽しい。久しぶりに本も読めました。

●『本当に君は総理大臣になれないのか』は政策オタクと自称する小川淳也氏は政策より人柄の方が印象的だったのと『真説 日本左翼史』が面白かったのは意外でした。『コロナ禍後は一層格差が広まるので左翼思想が優勢になる。だからこそ、かってのスターリニズムの過ちを繰り返してはいけない』というのです。ちなみに佐藤優は元社青同社会党の青年組織)だそうです。


 世間ではオリンピックが始まったようですが、そんな人命軽視イベント、ボクにはぜーんぜん関係ない。
元々関心ないけど、オリンピックを報じるTVも新聞も一切見ない。TVは論外ですが、一気に応援モードに変わった朝日新聞も流石というか、いつも通りサイテーです。だからダメなんだよ。



東京五輪開会式の米国での視聴者数、ソウル五輪以降で最低とNBCが公表:東京新聞 TOKYO Web

 だいたい、オリンピック開催に反対していてTVを見ていたら、それこそおかしいでしょ(笑)。却って静かでいいですよ。

 当然のこととは言え、今のところ 内閣支持率は順調に低下しつつあります。


www.nikkei.com


 

 外出を避けていた週末ではありましたけど、2回目のワクチン接種には行ってきました。河野太郎のバカが自治体へのワクチン供給を減らすと宣言したせいで、世田谷区では人口の約3割弱で予約がストップしています。
●世田谷区のホームページ(7/25)

  職域接種のボクも2回目が接種できるのか心配だったのですが、打つことが出来て少しホッとしました。
 副反応は巷間で言われている通り、翌日になって腕が痛くなったのと今回は軽く熱が出ました。でも幸い、熱さましを飲んだら直ぐ熱は引いた。ちょっとダルかったけど、それは元からか(笑)。1回目より2回目の方がボクは遥かに楽でした。とにかく抗体ができるまで2週間、大人しくしています。

 そんなことより、これはショックです。浅草の揚げ饅頭屋、金龍山の閉店です。



shinise.tv

 ずいぶん長い間行ってないけど、子供の時から揚げ饅頭と言えば浅草の金龍山、に決まっています。熱々のものはダイエットなんか忘れてしまうほど、圧倒的に美味しい。ここのは衣が薄くて軽いんです。
 神田の竹むらみたいに揚げ饅頭を出す店は他にもあるけれど、あそこの売り物はあわ善哉です。金龍山のような創業300年以上の店は代替がありません。どうするんだよ
 今 仲見世通りが土地代で揉めていることも影響しているのかもしれませんが、コロナ禍と政府の無策のせいで長く続いた文化がどんどん消えていく。これから先、ボクはどうしたらいいんでしょうか(泣)。


 と、いうことで、新宿で映画『プロミシング・ヤング・ウーマン
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pyw-movie.com
 数年前までは医学部に通う“有望な若い女性(プロミシング・ヤング・ウーマン)”だったキャシー・トーマス(キャリー・マリガン)。しかしある事件をきっかけに医学部を中退した彼女は、夜な夜なクラブに出かけ、酔った女性を介抱するフリをして酩酊状態の女性をベッドに連れ込もうとする男たちに制裁を下している。そんなある日、医学部時代の同級生にばったり出会ったのだが- - -

 これが初長編作品のエメラルド・フェネル監督・脚本のダークコメディ・スリラーです。今年のアカデミー賞では作品賞、監督賞、最優秀主演女優賞など5部門にノミネート、脚本賞を受賞という非常に評価が高い作品。
 主演のキャリー・マリガンも大好きなので、見るのを楽しみにしていました。

 成績優秀で将来を嘱望されていた医大生だったキャシーは大学を中退後、コーヒーショップでバイトをしながら、親の元で暮らしています。心を閉ざして、親とも殆ど口を利かない。友達もほとんどいない。

 しかし夜になるとキャシーは一人、どこかへ出かけていきます。派手なメイクと際どい服を着てクラブに出かけた彼女はいつも泥酔したふりをする。そこで酔った女性を介抱するふりをしてベッドに連れ込もうとする男共に制裁を加えているのです。

 これはコメディなのでしょうか、スリラーなのでしょうか。

 最低最悪の男連中を嘲笑うところはコメディだし、今作でも圧倒的な演技力を見せるキャリー・マリガンの表情を見ているとスリラーです。

 そしてゴミ男どもだけでなく、女性が『隙を見せた女性が悪い』と足を引っ張るところを執拗に描いているところはポリティカルな映画でもあります。
 女性をモノのように扱う男社会は女性の共犯者によっても成立していることも見逃さない、

 この映画のプロデュ―サーには主演のキャリー・マリガンだけでなく、有名女優のマーゴット・ロビーも加わっています。彼女も出演していたフォックスTVのセクハラをテーマにした映画『スキャンダル』シャーリーズ・セロンがプロデュースをしてましたが、あちらの女優さんは自分の政治的スタンスを明確にすることを恐れません。


 とにかくキャリー・マリガンは素晴らしいです。どちらかというと童顔の彼女がこういう女性を演じるという意外性も含めて、主人公のキャラのぶっちぎり具合が素晴らしい。彼女の表情を見ているだけでも映画として十分です。

 アカデミー主演女優賞はノマドランドのフランシス・マクド―マンドに回りましたが、演技はこの映画のキャリー・マリガンの方が遥かに素晴らしいと思います。

 一方アカデミー賞を取った脚本、もちろん客観的に見て非常に良くできた脚本ですが、個人的には先が読めてしまったので、もう一捻りあっても良かったと、ボクは思いました。
 40年くらい前に流行ったジュース・ニュートンの『夜明けの天使』をうまく使った痛快なエンディングは良くできているし面白いけど、それでも『テルマ&ルイーズ』みたいで、ちょっと古さも感じた。

 これは映画のインスタです。この映画の中に出てくるセリフ=カス共の言い訳が引用されています。

 『悪気はなかった』、『(犯人の男は)前途を嘱望される人だから』など様々な言い訳で女性が性暴力にさらされても、不問に記されてしまうことがまだまだある。あまつさえ『泥酔するなど隙を作った女性も悪い』とか『女性は嘘をつく』などと口にするバカさえいる。男だけじゃなく、杉田水脈曽野綾子などの女性がそうです。むしろ、こちらの方が男よりタチが悪い

 この映画はそうやって共犯の女性たちに対しても容赦なく視線を向けているところが素晴らしいです。自分や自分の家族がそういう目に遭ったらどうするんだ。連中にとっては所詮は他人事です。で、自分は男社会に媚びを売って商売をしたり、自分の承認欲求を満たしている。キャシーはその偽善性を暴いていく。
 これは女性監督じゃなきゃ描けない。

 描写はどぎついところは一切なく、非常に抑制されています。とても品が良い。そして偉そうにしているくせに徹頭徹尾情けない男どもと共犯者のバカ女を笑い飛ばす視線は容赦がありません。ブラックコメディですが、これを笑える男がどれだけいるのでしょうか。

 その反面 音楽の使い方や色彩、映像のセンスはとてもお洒落でポップです。外観上は見事なエンターテイメントになっています。

 明確なメッセージを掲げつつも多くの人が受け入れられるよう、徹底的に押しつけがましさを排している。ここは日本の凡百の映画とは全く違うところです。

 脚本はもうちょっと頑張って欲しいとは思ったけど、恐ろしく完成度が高い、まさにAクラスの映画。満足度は高いです。
 ポップでエンターテイメントでありつつ、激烈なメッセージを持つポリティカルな作品を作ってしまうところはハリウッドって凄いと思います。なによりも主演のキャリー・マリガンの素晴らしい演技。もともと圧倒的な演技派として有名な彼女でしたが、その代表作になるかもしれません。

www.youtube.com