特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

夢見る頃は過ぎても:パティ・スミス ジャパンツアー

ボクは名前しか知らないが沖縄のロックバンド、モンゴル800が先週のテレビ朝日の番組『ミュージックステーション』で『No Nukes! No Ospley!』と書かれたTシャツを着てプレイしたらしい。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130126-00000003-okinawat-oki
ボクなんかは『ロックンローラーなら当たり前だろう』と思うのだが、こんな当たり前のことがニュースになるというのは世の中歪んでいるとしか、言いようがない。
奇しくも昨日は沖縄の首長らが上京してオスプレイ配備への抗議集会が東京で行われたそうだ。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130127-00000023-okinawat-oki ボクにはオスプレイが日本の防衛にとって何の役に立つのかさっぱりわからない海兵隊が海外へ展開するときに役立つのは判る 。理由もハッキリしないまま負担を押し付けられた沖縄の人たちが最近 日本から独立するぞって言い出したのは当然、だと思う。太田元知事のような人だけでなく、今や自民党沖縄県連の元トップまで『沖縄は日本から独立してもやっていける』と言い出している。沖縄の人が望むなら、さっさと日本なんか見捨てて、独立したほうが良いかもしれない。
                                                                                                  

さて、たまには本の感想を少し。上野千鶴子湯山玲子の対談『快楽上等
正月休み、読み出したら止まらなくて1日で読んでしまった上野千鶴子の新刊。政治、老い、性、婚姻など様々なテーマを湯山と一緒に縦横無尽に語っている。

快楽上等! 3.11以降を生きる

快楽上等! 3.11以降を生きる

湯山玲子と言う人は全然知らなかったが、ぴあなどで働いてコラムニスト?に転じた人だそうだ。女性が少ない高級寿司屋(要するにオヤジ天国)へ敢て一人で行った体験談を綴った『おんな一人寿司』などの著作がある。この対談の中で湯山は『私は女装をしているんだ』と言っていたのは慧眼だと思った。湯山は学生時代、男が好みそうなハマトラ(笑)ファッションに変えたとたん、もて始め、楽しかったそうだ(笑)。そうやって世の中に受け入れられたが、それはあくまでも女装、自分はかりそめの姿である、という視点は良いなあと思った。この本の中で上野はもちろん、今まで遊び歩いていた湯山も3.11以降は政治にコミットしてこなければ生きていけなくなった、と述懐している。

ただ、老後をコミュニケーション、人との繋がりで生きていこうという二人の提唱はリア充(笑)を振りかざしているようで、ボクには『強者の論理』に見える。人付き合い、社交大きらいな、コミュニケーション弱者(笑)のボクとしては、それこそ介護保険ベーシック・インカムのように、システムとして弱者を補完することを考えるべきだと思うからだ。ボクは上野千鶴子の書いた本にずいぶん影響を受けたけど、根本的にこの人は包摂という概念が薄いと思う。

湯山も上野も、こんな日本だったらアメリカに入れてもらったほうが良いかも、まで言っている。おお、同志よ(笑)。彼女らはそんな日本のシステムをぶっ壊す方法として、体制にガン細胞のように取り付いて異化していくことを言っている。レベルは低いが一応 ボクも同じことをやっているつもり(笑)。だけど、このやり方はミイラ取りがミイラになるパターンがあまりにも多い。体制の力は甘くない。だから、ボクには映画や音楽が必要なのだ。
                                                                                                                           

だから(笑)、渋谷でパティ・スミス&ハーバンド ジャパンツアー2013

パティ・スミスは70年代末期 ニューヨーク・パンクの女王(笑)と呼ばれていたロック歌手。ピューリツァー賞の候補になった詩人でもあり、写真家のロバート・メイプルソープと同棲していた頃のことを綴った自伝『Just Kids』は全米図書賞を獲っている。

ジャスト・キッズ

ジャスト・キッズ

自立した存在としての女性ロッカーの草分けって言ったらよいだろうか。67歳の今はパンクのゴッド・マザー(笑)。

ブッシュのバカがインチキな理由でイラクを侵略した時、この人がいち早く反戦運動に立ち上がり、ホワイトハウス前でメガホンに向かって『People Have The Power』(人々には力がある) をがなるように唄ってたのはボクは忘れられない。
●そのときの彼女

ニュースで流れた、この彼女の姿に勇気付けられて、ボクも日本のイラク反戦デモへ行きました。ブッシュの嘘に便乗して自衛艦をインド洋へ送るなんて、ボクは納税者として我慢が出来なかったから。今の反原発デモに比べれば参加者の人数は全然少なかったけど、東京タワーの脇の教会から神父さんがわざわざ出てきて手を振ってくれたのが凄く嬉しかったのを今でも良く覚えている。

                                                                                                          
前回見たのはちょうど10年前の赤坂だった。そのときはステージで暴れ、ギターをぶっ壊す、怒れるロック詩人だったんだけど、この日の彼女はにっこり微笑みながら、ステージに現れた。この人、笑うんだ(笑)。ジーンズにTシャツ、チョッキ、上着をまとういつものスタイルは変わらないけど、頭に巻いたスカーフからは白い三つ編みの髪の毛がこぼれるように下がっている。
綺麗になったと思った(笑)。良い齢の取りかたをしているんだろうなあ。ロックコンサートにしては女性ファンが多い。ある年代の女性ロックファンは、女性性を売り物にしないロッカーというアイコンを確立したこの人に影響を受けている人は多いと思う。ボクの隣の席の人もそうだったが、この日も『パティ』という女性の熱狂的な歓声がなんども上がっていた。
●丁度今から7年前、60歳頃のお姿

                                                                                                
ステージは昨年出した新作『BANGA』の曲が中心。とにかく伸びやかに声が出ている。被災地へ言ってきたこと、津波のこと、原発のこと、をアドリブで歌に入れていく彼女。ナツメロでもなんでもなく、現役のロックシンガーそのものだ。

バンガ

バンガ

バンドはドラムスがいまいちだったが、30年以上パティ・スミスのバックを支えるギタリストのレニー・ケイが締めるところは締めるって言う感じ。レニー・ケイというギタリストは兼業で音楽評論家もやっている。演奏は上手くもなんともないんだけど、ジャジャーンとかき鳴らすサイドギターの間が絶妙で格好良くてボクは大好き。それにギタリスト兼音楽評論家という、この人の知性と肉体性を両立させるような生き方はボクのロールモデルなんですよ(笑)。

本編の最後はやっぱり『People Have The Power』。その最後のヴァース。
The power to dream / to rule
To wrestle the world from fools
It’s decreed the people rule
It’s decreed the people rule
LISTEN
I believe everything we dream
Can come to pass through our union
We can turn the world around
We can turn the earth’s revolution
We have the power
People have the power ...

                                                         
そのあとのアンコール。再び舞台に登場した彼女が『ファ●クなミサイルなんか要らない、ファ●クな原発なんか要らない、政府にわからせてやろう、私たちは自由だってことを!』と激しく叫んで、『ロックンロール・ニガー〜グローリア』へ。『私たちはみんなニガーだ。』と連呼する彼女、そしてボクたち。

                                                       
ステージが終わってロビーに出ると、被災地への募金箱が置かれている。
若い頃のような興奮や熱狂はもうない。けれど、精神は今も変わらない。いや、より深く考えられるようになった。そういう成熟を感じさせる1時間半のロックンロール・ショーだった。
●ロビーにて