特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

悲喜劇二題:『ウディ・アレンの夢と犯罪』とロートル新党

恵比寿でウディ・アレンの新作『ウディ・アレンの夢と犯罪』。
http://yume-hanzai-movie.com/pc/
今回も舞台はイギリス。借金で行き詰ったワーキング・クラスの兄弟が金持ちの叔父からの援助と引き換えに殺人を犯す、そんなお話です。
原題『Casandra's Dream』は映画の冒頭 兄弟が購入する小帆船の名前。これはオデュッセイアに出てくる、悲劇の予言者から取られているんでしょう。主人公たちは必ず失敗することが予め 約束されている。その暗喩の通り、この映画はまるでギリシア悲劇のようです。
 といっても想像されるような、救いのない陰鬱な悲劇ではありません。良い意味で定型的な、うまく組み立てられたドラマです。
抑制された演出が良い。殺人と言っても残酷なシーンはないし、主人公の兄弟の心理的な葛藤が淡々と描かれていく。ウディ・アレンの映画ではいつもどおりといえばそうですが、今回はいつもにも増して効果的な演出です。 悲劇が静かに、まるで階段を登るように、徐々に盛り上がっていく。そして品の良い緊迫感溢れる画面にフィリップ・グラスの切れ上がった音楽はぴったり。
役者さんも皆 熱演。特にユアン・マクレガーの表情の繊細さ。彼があんなに細かい演技をするとは知りませんでした。彼が魅力的な悪女(ヘイリー・アトウェル)に惹かれて正気をなくしていく様はお見事です。それにしても前作までのスカーレット・ヨハンソンペネロペ・クルスもそうでしたがウディ・アレンは歳をとるに連れて、女性を見る目がエロくなってる(笑)。
ヨーロッパを舞台にしたウディ・アレンの作品は他国人から見た観光案内のような面もあり、今回もそうです。日本人のボクにはそれも楽しいです。例えば金持ちの叔父が兄弟の一家を高級ホテルのランチに招くシーン。いくらおごりとは言え、ワーキング・クラスの家族がクラリッジClaridge's: 5-Star Luxury in the Heart of Mayfairのダイニングに招かれ、リラックスして楽しんでいる、なんてシーンは現実離れしていて違和感があります。だけど画面を見ていて、自分がお上りさんでクラリッジに泊まったときの事を思い出しましたし、それは抜きにしてもクラシックな内装や雰囲気は楽しかったです。まあ、ゴードン・ラムゼイの創作もどき料理はそれほど美味しいとは思わないけれど。

 冒頭から失敗が約束されている悲劇という点では、最近発足した平沼と与謝野の新党も同様です。与謝野馨という人はその財政再建論には賛成できないが、ある程度はまともな人だと思っていました。それが定年間際の議員と手を組んで、挙句の果てには石原慎太郎とか田母神とかまでしゃしゃり出てくる新党じゃあ、脳味噌まで疑いたくなります。アレンの映画のようにカネや女に対するものにしろ、今回のように権勢に対するものにしろ、欲望は人を狂わせてしまうものなんでしょうか。
大体 石原が『国を憂う』なんてどの面 下げて言うんですかね(笑)。自分が散々税金を無駄遣いした外形標準課税も新銀行東京もオリンピック招致も少しくらいは責任を感じないのだろうか。
党名が『立ち上がれ日本』というだけでジ・エ〜ンド。立ち上がったからって何なんだよ(笑)。杖が必要な爺さんの集まりだから、そういう党名にしたんでしょ(笑)。もちろん年寄りだからどうのこうの、ということではありません。老醜をさらしているのがみっともない、ということです。欲ボケしたロートル老人が集まって時代錯誤の怪気炎を上げている姿は悲劇ですらなく、単なる場末のコントみたいなもんです。