特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

『おねだりマスカット』と『三重スパイ』

 景気が多少は持ち直す兆しが見えてきたからなのか、桜が咲きだしたせいなのか、少しは街の雰囲気も明るくなってきたような気がするだけど、まだ寒い。
早く定年にならないかなあ。
 最近 面白いTV番組といえば月曜深夜に放送されている『おねだりマスカット』。うるさいだけで予定調和でしかない昨今のTV番組とは異なり、『やりたい放題自由にやって、結果は外角低めぎりぎりボールのこの番組は貴重だ。前身の『おねがいマスカット』からの出演者の多くはAV女優さんだそうだが、番組で見せる、脱力感あふれる一生懸命さ?は、健気ですらある。『かわいい甲子園』のコーナーなんか本当に可愛らしくて大好きだ。今晩の放送でいったん終了してマイナーチェンジするらしいが、今後も頑張って欲しい。

 ユーロスペースエリック・ロメールの追悼特集。今まで見逃していた『三重スパイ三重スパイ
 時代は第2次世界大戦直前のパリ。パリに亡命してきたロシア帝国軍人とその妻の物語だ。夫は亡命ロシア人協会で政治活動を行っている。しかし彼にはベルリン出張など妻にも伝えていなかった謎の行動があったことが露見し、次第に彼女(カテリーナ・ディダスカル)は疑惑を持ち始める。果たして彼はナチのスパイなのか、ソ連共産党のスパイなのか。そんな話だ。画面に出てきたコメントだと実話が元になっているそうだ。
前作の『グレースと公爵』と同様、女性を主人公にした時代劇。そして女性が愛に殉じるのも同様だ。ロメールのドラマらしく、疑惑と誤解のなかで愛が描かれる。彼女が夫を愛する仕草は優美で、表情はいじらしい。そこにもまた(笑)、健気さすら感じてしまう。そうか、『おねマス』はロメールだったのか(笑)。
 ところどころに挿入される当時のニュースフィルムが面白い。初めて自分の眼で見るスペイン内戦、ピカソの『ゲルニカ』が始めて公開された万国博覧会の様子はリアルで、社共が手を結んだ人民戦線の時代に次第に戦火が近づいてくる雰囲気まで伝わってくる。
当時は今と異なり、多くの人々が政治信条、イデオロギーを本気で信じていた時代だ。主人公たちの唐突であっさりとした死は、今の時代にあってもそういうものなのだろうか、ロメールお爺ちゃん?
 それにしてもエリック・ロメールは2000年以降亡くなるまでの3作、作風を変えて時代劇を作っていたわけだが、その心境はどういうものだったんだろうか。
 主人公の階上に住む、気のいい共産主義者夫婦の妻役として『海辺のポーリーヌ』のアマンダ・ラングレが出演。水着が良く似合う健康的で美しい少女が、20年後 インテリの高校教師を演じているのが何となく本人像とも重なり、感慨深かった。