特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

もっと遠くへ:Perfume『BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!』

 言うまでもなく昨年11月に行われた武道館公演を収めたもの

Perfume 『BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!』

Perfume 『BUDOUKaaaaaaaaaaN!!!!!』

 もう10回くらい見た(笑)が、全然飽きない。
 オープニングの『コンピューター・シティ』の『絶対、故障だ〜』はやはり目茶苦茶 格好いい。Perfumeの『尖がったアイドル』らしさ、が良く出ている。
それでも前半は緊張からか、3人の表情が硬い。いつもは天真爛漫な笑顔が何となく、こわばっているような気がする。だが、それもショーが進むに連れて気にならなくなる。
 中盤の『マカロニ』での盛り上がりはどうだろうか。赤いライトに照らされながらサークルを組んで歌う3人。熱狂というのとはまた違う、ゆっくりと心が温まってくるような、文字通り『やわらかい』盛り上がりだ。名曲としか言い様がない。
そして後半にかけてポリリズムなどで一気呵成に畳み込んでいき、最後はエフェクトをかけない肉声の『Perfume』⇒『Wonder2』で締める流れは、相変わらず感動的。
 今回はダンスも歌も全体の構成もずいぶん洗練されたのではないだろうか。特に収録された歌の殆どが生歌だったのには驚く。彼女たちの場合 生歌かどうかはショーの完成度とは関係ないと思う。しかしライブの臨場感という意味では生歌のアドヴァンスは大きい。今回は特にのっちの表情が生き生きとしていて印象的だ。
選曲も当日の演奏は殆ど全曲入っているのだろうか、テクノ・ガムランみたいな『Puppy Love』など、前回のDVD、『First Tour GAME』 で聞けなかった曲が入っているのもうれしい。
 ただ、PerfumeのDVDにはいつも、カメラに注文をつけたくなる。1作目の『FAN SERVICE〜BITTER〜』はショットの切り替えが煩雑すぎて、ダンスの全体像がつかみにくかった。逆に2作目の『First Tour GAME』ではカメラが引きすぎて3人の表情がわかりにくい面があった。今回はさらにカメラが引きすぎて、却って全体像がつかみにくい。画面に映っている空白のスペースが目立ってしまい、武道館のステージの広さをもてあましているかの印象さえ受ける。パフォーマンスが素晴らしいだけに、カメラワークはいい加減、要改善だろう。
あと今回は衣替えの際のインターバルがカットされていたが、これは前作『First Tour Game』の時のように収録して欲しかった。これがあると見ている側にとって流れがスムーズだから、お茶の間の(笑)臨場感が増すのだ。
 まあ、このような注文がうるさく出てくるのもPerfumeに対する期待度が極端に高いからだ。いつもいつも書いていることだが、日本の、少なくともメジャーな文化面での希望なんて今やPerfumeしかないのではないか。
曲、サウンド、ダンスの質、それと対照的なトークでの、あ〜ちゃん、のっち、かしゆかの三人三様のぐたぐたぶり(笑)。それに、画面からも伝わってくる3人の性格の良さ。近田春夫(ジェニーはご機嫌な斜め)は3人を『デジタル・キャンディーズ』と評していたが、それは過小評価に過ぎるだろう。現在の日本で、政治にしても芸術にしてもPRやキャンペーンなど商業主義のまやかしに頼らず、作品の質とコンセプト、さらにイノセンスまで加えて勝負できているものが他にどれだけあるだろうか。企業どころか、今や内閣だって政策ではなく、キャッチフレーズとやらせで飾り立てた支持率頼みの時代なのだ。
 この武道館ライブは3人の今までの集大成であり、一つの締めくくりなのだろう。だが、それだけではない。これからの3人の可能性、未来がすこしずつ見えてきているようだ。
本編最後の『Puppy Love』で館内の照明がついたまま、3人が歌っているシーンがある。3人ともこのショーで一番いい顔をしている。どこか吹っ切れた、開放されたような顔だ。
 画面にはニ十歳そこそこの娘っこたちが1万人を相手にしている、ちっぽけな後姿が映っている。それは、等身大の人間にどこまでのことが出来るか、ということを示しているかのようにさえおもえる。アンコールで演じられた、まるで彼女たちを象徴しているかのような『Dream Fighter』の歌詞のように。
遠い遠い、遥かこの先まで。