特別な1日  

-Una Giornata Particolare,Parte2-

スラムドッグと金持ちのドラ息子

 有楽町で『スラムドッグ・ミリオネア』。 http://slumdog.gyao.jp/
ムンバイのスラム育ちの子供がTVのクイズ番組に出演する。彼は正解を続けて億万長者になれるか、そんな話だ。
 アカデミー8冠だそうだが、なんと言っても素材の勝利だ。素材とは子供を含めた出演者の存在感、そしてなんと言ってもムンバイのスラムの凄まじさ、だ。川沿いの露天便所であったり、人身売買であったり、スラムであったり、ヒンズー教徒によるイスラム教徒のリンチであったり、フィルムで見ると想像を絶するものがある。そういえば先日、この主人公とヒロインの子供時代を演じていた子供たちが本当にホームレスになったという映像がニュースで流れていた。なんでも彼らが住んでいたスラム街が無理矢理 区画整理されてしまったそうだ。ヒロイン役の子なんかカメラの前で泣いていた。
この映画では登場人物は女の子はめちゃくちゃ美形だし、悪人は死ぬほど極悪だし、とにかく目が極端に輝いているか死んでいるかのどっちかだ(笑)。本物の存在感という奴か。
 残念ながら先進国の資本で発展途上国を写すと、往々にして後味の悪さを感じることが多いものだ。たとえ動機が善であれ、『上から目線』をどこか感じてしまう。ところが、この映画はそれを感じないのは製作側のスラムの人々に対するリスペクトがあるからだと思う。
 ダニー・ボイル監督の作品を見るのはトレインスポッティング以来だが、スピーディなテンポに音楽をスタイリッシュに絡ませていく演出の冴えは同様だった。トレインスポッティングスラムドッグ$ミリオネアも冒頭に印象深い便所のシーンがある。この人、便所が好きなんだろうか(笑)。

 翌日も有楽町で『ブッシュ』(原題’’W’’)。セフレと出会いセックスするには?エロいセフレとやれる方法!
今や史上最低の大統領という評価が確立しつつあるブッシュ前大統領の生い立ちをオリバー・ストーン監督が描いたもの。要は名門ブッシュ家に生まれた出来の悪いボンボンがコンプレックスの反動で宗教にのめりこんで変な使命感を持っちゃうとどうなるか、『○チガイに刃物』、そんな話だ。主人公がスラムから成り上がるスラムドッグ・ミリオネアとはある意味 対極的。
 主演のジョシュ・ブローリンは好演。文字通り 世間知らずのアホにしか見えなかった(笑)。ブッシュに、ハーヴェイ・ミルク暗殺犯のダン・ホワイトと、極悪人2連発を演じるのはある意味度胸があるし、役者冥利に尽きるだろう。
 ブッシュの時代は戦争にしろ、財政崩壊にしろ、エンロンに始まり、リーマンショックで終わった経済にしろ、突っ込みどころ満載だが、今回 オリバー・ストーンが描くのはイラク戦争の話が中心。
 ブッシュやラムズフェルドなど米政府上層部の『フセイン大量破壊兵器を持っている』という決め付けで戦争を始めたわけだが、その遠因はパパ・ブッシュが選挙で負けた原因がフセインに止めを刺さなかったからとボクちゃん大統領が信じ込んだから。優秀な軍人であるパウエルや情報機関が止めても、州兵脱走という経歴のボクちゃん大統領は聴く耳を持たない。勿論パパ・ブッシュイラク統治の困難を理解していたから、敢えて止めを刺さなかったわけだが、アホ息子にはそこまで理解できる知力はない。
 挿入されていたブッシュの開戦演説の実際のフィルムがとても印象的だ。民主党ヒラリー・クリントンもケリーもペロシもブッシュのインチキ演説に拍手してやんの(投票も賛成)。クリントンなんかそれだけでも大統領に立候補する資格はない。判断力が欠如しているのだから。勿論 小泉を始めとする日本の政治家も同罪。
 金持ちのバカ息子というとどう考えても日本にもいるブッシュの同類を想像してしまう。小泉、安倍ちゃんや、麻生なんかどんぴしゃだろう。最近話題になっている政治家の世襲を制限しろっていうのは当然の話だ。地盤を受け継いだおかげでクリーンかもしれない世襲のバカ政治家と、ダーティーかもしれないけど優秀な成り上がりの政治家とどっちが公共の利益に資するだろうか。答えは明快すぎるくらい明快だ。所詮 マスコミも投票する国民もバカなんだから、予め 弊害を防ぐシステムを作っておくのは大人の知恵と言うものだ。
 そもそも安倍ちゃんも福田くんも中川も竹下の孫のように『ウイッシュ』とかやってるだけだったら、誰にも迷惑がかからなかったのだ。世襲は芸能界だけで充分。僕はTV見ないから。
日本でも政治家の三世、金持ちのドラ息子、他人の言うこと聴かない、とブッシュと一緒の資質が3拍子揃った小泉を主人公に『ブッシュ』とまったく同じ話を作れるのではないか。だが一つだけ違うのはアメリカはイラク開戦に反対したオバマを選ぶだけの自浄能力があったが、日本人は反省がないこと。アホな戦争に賛成した判断ミスを議論すらしない。ついでに小泉後の日本の総理大臣 福田、安倍、麻生、ついでに鳩山も小沢もみん〜な2世、3世議員だ。
こんな暢気な日本のGDPが、2020年ころまでには中国に、2040年ころまでにはインドにも抜かれるという各種シンクタンクの予測は当然だろう。
もちろんGDPの大小はもはやボクラの幸福とは関係がないことだけれども。